国内の特定メーカーのパワコンに、遠隔制御との相性の悪さ

エネテク 第82回

2021/12/16 15:39
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げている。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く手掛けてきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている。

 出力制御(出力抑制)のためにパワーコンディショナー(PCS)を遠隔制御するシステムを追加する例が増えている中、この遠隔制御に関連するトラブルが目立ってきた。

 今回、取り上げるのは、国内のある大手重電メーカーによる集中型の大容量PCSに遠隔制御システムを後付けすると起きるトラブルである()。今回の例の場合の遠隔制御とは、九州電力送配電によるオンライン制御ではなく、発電事業者が手動で行う停止・再稼働を遠隔から可能にしたものだ。

図●九州の今回の例とは異なる太陽光発電所に設置された比較的古い機種のPCSの例
図●九州の今回の例とは異なる太陽光発電所に設置された比較的古い機種のPCSの例
(出所:日経BP)

 固定価格買取制度(FIT)のスタート初期に認定され、30日ルールが適用されている太陽光発電所では、九州電力送配電の出力制御指令を前日にメールなどで通知され、自分で現地に出向いてPCSを手動で午前9時に停止し、午後4時に再稼働するのが基本となっている。

 しかし、これは大変な手間なので、多くの発電事業者は、これを機に遠隔操作でPCSをオン・オフできるシステムを後付けで導入し、この作業を軽減させた。

 この際に採用される遠隔制御システムは、ほぼ2社のシステムのどちらかに限られているという。

 このうち1社の遠隔制御システムを、ある国内大手重電メーカー製PCSの初期モデルに後付けした場合に、トラブルが生じるケースが目立っている。

 ちなみにこの大手重電メーカーの機種とは、大容量PCSで国内シェアトップの東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製ではないので、それほど広範に不具合が起きているわけではない。

 まず、送付された遠隔制御システムを接続するだけでは、正常に稼働しない場合がある。

 調達したEPC(設計・調達・施工)サービス企業が、遠隔制御システムを正しく作動させるための設定などまで終えてから引き渡すべきだが、パソコンや通信機器のような作業には慣れていない。単に接続しただけで引き渡す場合がある。

 この状況で遠隔制御システムが正しく機能しないことがわかった場合、原因を調べて解決できるケースもあるが、解決できずに諦め、もう1社の遠隔制御システムに切り替えるという対応も出てきている。

 また、保安の業務を担当している企業の中には、独自に遠隔制御装置を開発して、PCSの外部接点でのオン・オフを制御している場合もある。

 この後付け装置を実際に使う場合、ほとんどの太陽光発電所では、電気主任技術者が操作を担当し、九州電力送配電による出力抑制の指示に従って制御している。

 しかし、中には、電気主任技術者が、この業務を断る場合がある。

 こうした太陽光発電所では、誰かがこの業務を担う必要がある。総務の部署に、この遠隔制御の操作を担当させた企業があった。

 総務部門の仕事は、どの分野でも平日が中心になることが多い。担当者は土日祝日は休暇になることがほとんどだ。

 一方、太陽光発電所の出力抑制は、土日祝日を中心に課される。企業の電力需要が少なく、系統全体で供給過剰になりやすいからである。2021年春のゴールデンウィークにも出力抑制の指令が出された。

 総務の部署が遠隔制御の操作を担当している企業の中に、この連休中に、出力抑制のための操作のうち、PCSのオン操作を忘れて、再稼働が翌日の夕方に遅れてしまった例がある。このため、本来はフルに売電できる日に丸一日、PCSが止まったままだった。

 FITに基づく売電単価は40円/kWhで、この日の売電損失は30万円を超えていたと予想される。

 操作の担当者は、事情が発覚してから、こっぴどく叱られたという。

 こうした事例を見ると、30日ルール適用の発電所でも、九州電力送配電によるオンライン制御に切り替える方が、現場作業者の手間の軽減に加え、操作ミスによる売電量の損失も防げるため、利点が多いと判断する発電事業者も出てきている。


【エネテクによるトラブル・シューティング】