「ラピュタの城」のような太陽光・続々編、対策を重ね、6回目の盗難は未遂に

エネテク 第84回

2022/01/20 20:42
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当してきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている。

 今回は、深い森のように雑草が覆い、まるでアニメ映画「天空の城ラピュタ」のような様相となっていた太陽光発電所のその後について取り上げる。

 この発電所は関東地方にある。低圧配電線に連系し、数区画の太陽光発電所が隣接している。売電を開始してから約5年間、一度も点検やメンテナンスを実施したことがなかった。ツル性植物が伸び放題となっており、ツルやそれに付いた葉が幾重にも分厚く覆っていた(図1)。

図1●除草する前の様子
図1●除草する前の様子
(出所:エネテク)

 この低圧事業用発電所の開発にかかわった企業が、稼働して5年経ったのを機に、発電所の状態を把握したいと考え、エネテクに点検を依頼した。そこで、エネテクが事前調査のために現地に向かい、こうした状況を把握した。

 雑草のほかにはまったく何も見えず、そこに太陽光発電所があることを知らなければ、気づかないだろうというほどだった。

 エネテクでは、依頼主に対して、この状態では敷地内に入ること自体が容易ではなく、除草してからでなければ、点検を引き受けられないことを伝えた。依頼主は、エネテクの要望に応えて、除草してエネテクに点検を依頼することを決めた。

 このコラムの第40回で、除草して点検できる環境が整ってから発電設備を調べたところ、集電箱内に水がたまり、筐体内の金属製の固定具が真っ白に腐食していたことを記述した。

 白サビは長期間、放置していると、集電箱の電気的な機能そのものに悪影響を及ぼす恐れや、腐食した部分が発熱、発火する恐れもある。すでに絶縁抵抗値が著しく悪い状態だった。

 第46回では、除草したことで手入れが行き届き、敷地の内外を不自由なく通行できるようになったことで、電線が切断されて盗まれてしまったことを取り上げた(図2)。

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図2●電線を盗まれた1回目の後の様子
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図2●電線を盗まれた1回目の後の様子
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図2●電線を盗まれた1回目の後の様子
(出所:日経BP)

 電線の盗難は、国内各地の太陽光発電所で多く起きている。主にパワーコンディショナー(PCS)以降の送電を担う、交流変換後の出力側の電線が盗まれることが多い。

 盗難の被害に関してだけをみれば、しっかりと除草したことが仇になったかもしれないが、以前のように適切に管理していない状態に戻したり、除草を怠るべきではない。

 雑草に覆われ、何らかの理由で発電設備からの火花(アーク)や過熱をきっかけに雑草が燃え、火災を引き起こす恐れもある。また、集電箱に漏電が生じ、もう少しで安全機能が働いて漏電遮断器が動作する可能性が高い状態で、売電が止まる一歩手前だったとも推察された。

 この後も、雑草は適切に刈る状態を維持したが、盗難が続いてしまった。これまで5回、電線が切られて盗まれた。

 エネテクの助言で、段階的に盗難対策も加えてきた。まず、警備会社と契約して警備サービスを導入した。次に、外周の柵を補強した。さらに、警備サービスの内容を強化した。

 それでも今回、6回目の被害に遭った。しかし、電線の盗難としては、未遂に終わった。ただし、発電所側には、電線が切断され、売電が一部とまる被害は生じている。

 こうした盗難は、電気設備と盗難の両方を熟知した経験者、いわゆるプロの集団が犯行に関わっていることが多いとされる。このため、新たに講じられた対策にも、容易に対応されてしまうことがある。

 この低圧事業用サイトでも、5回目の盗難後に加えた「警備サービスの内容強化」に、犯行グループが対応して6回目の盗難を試みた。

 加えたサービスは、敷地内の電気に関する異変が生じた時に、警報が通知されて駆け付けてもらえることである。このサービスに関する設備を見抜いて、その場所を除いて切断すれば、新たなサービスを機能させずに盗難できる。

 この対策について、犯行グループはある程度、見抜いていたようである。しかし、見落としていた部分もあった。

 警備会社は、電線の切断を察知し、すぐに対応した。

 これによって、犯行グループは、電線を切断した後、トラックに積む前に現場を放棄して逃げざるを得なかったようだ(図3)。

図3●盗難者が残したものと、警察による調査の様子
図3●盗難者が残したものと、警察による調査の様子
(出所:エネテク)

 現地には、犯人の痕跡が数多く残されていた。

 電線を切断した後に一服していたのであろうか、お茶のペットボトルがあった。梱包用のビニールテープも大量に残っていた。これは、持ち運ぶ予定だった電線を束ねる目的と思われる。あるホームセンターで買ったことがわかるものだった。

 すぐに警察も到着し、現場を調べた。盗難者の持ち物と思われる残置物には、鑑識官がDNA鑑定用に採取するといった調査も行われた。

 銅線の価格が高騰している時期には、こうした盗難が増える傾向にある。

 エネテクがO&Mサービスで関わっている太陽光発電所でも、2021年11月だけで、6件の盗難の被害があり、その被害額として1億円以上に達している。

 今回の低圧事業用サイトでは、6回目の未遂の後、さらに新たな対策を追加することを決めた。


【エネテクによるトラブル・シューティング】