「影がない場所も過熱」、ハーフカットセルの太陽光パネルに特有の異常

エネテク 第90回

2022/04/14 20:20
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げている。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当してきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている。

 太陽光パネルは年々、進化している製品である。セル(発電素子)自体の発電効率の向上を生かすだけでなく、パネルの構造や製造プロセスの工夫によっても発電量が増えたり、コスト削減効果につながっている。

 構造を従来と大きく変えた新たなタイプのパネルもある。こうした先端的な製品では、これまでの太陽光パネルとは違った故障の傾向がみられる場合もある。

 今回、紹介するのは、ハーフカットセルと呼ばれるタイプの故障例である。

 この先端的な太陽光パネルは、従来のセルを半分に切断した、長方形のセルで構成したもので、内部抵抗が減ることなどで効率が高まる利点があるとされている。

 エネテクが点検を受託した太陽光発電所で、ドローン(無人小型飛行体)を使って赤外線カメラで空撮した太陽光パネルの熱分布の画像から、周辺よりも温度が過剰に高く過熱している場所が見つかった(図1)。

図1●雑草の影がない場所も過熱していた
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図1●雑草の影がない場所も過熱していた
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図1●雑草の影がない場所も過熱していた
(出所:エネテク)

 地上で確認すると、隣接している太陽光パネルの隙間から、雑草がパネルの上まで伸びていた。この雑草が影を落とし、過熱につながっていることがわかった。

 この雑草を取り除くと、過熱はなくなった。

 しかし、疑問が残った。影がないにもかかわらず、過熱している場所があったことだ。除草すると、この過熱もなくなった。

 この太陽光発電所が採用していたのは、ハーフカットセルの太陽光パネルだった。半分ずつに切断したセルを採用し、3直列・2並列の構成となっている(図2)。

図2●短辺方向に3直列・長辺方向に2並列で、6つのクラスタが構成されている
図2●短辺方向に3直列・長辺方向に2並列で、6つのクラスタが構成されている
(出所:エネテク)
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 エネテクの点検担当者は、「影がないのに過熱していた場所」が生じたのは、ハーフカットセルによるパネルの構造によるのではないかと考えた。

 ハーフカットセルで構成された太陽光パネルの場合、複数セルの直列回路であるクラスタは、通常のパネルの2倍の6つとなっている。そして、長辺方向にわかれた2つのクラスタが並列に接続されている。

 この構造から、雑草の影による発電の異常が、並列に接続されている長辺方向の逆側のクラスタにも影響を及ぼしたのではないかと推測した。

 故障したクラスタと並列に接続されていることで、より多く電流が流れるためである。

 わかりやすくするために、太陽光パネルを部分的に遮光して検証したところ、推測の通りに過熱することがわかった。

 まず、左上の3分の1を構成しているクラスタの上部を遮光した(図3)。すると、遮光された場所が過熱するとともに、並列に接続された反対側のクラスタの一部も、遮光されていないのに過熱した。

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図3●左のクラスタ上部を遮光すると、左下のクラスタの一部も過熱した
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図3●左のクラスタ上部を遮光すると、左下のクラスタの一部も過熱した
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図3●左のクラスタ上部を遮光すると、左下のクラスタの一部も過熱した
下の画像は、影がないのに過熱している場所のアップ画像(出所:エネテク)

 次に、中央上の3分の1を構成しているクラスタの下部を遮光した(図4)。やはり、遮光された場所が過熱するとともに、並列に接続された反対側のクラスタの一部も、遮光されていないのに過熱した。

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図4●中央のクラスタ下部を遮光すると、中央下のクラスタの一部も過熱した
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図4●中央のクラスタ下部を遮光すると、中央下のクラスタの一部も過熱した
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図4●中央のクラスタ下部を遮光すると、中央下のクラスタの一部も過熱した
下の画像は、影がないのに過熱している場所のアップ画像(出所:エネテク)

 太陽光パネルメーカーの努力によって、近年は、これまでの結晶シリコン型のパネルとは異なる構造の製品が販売されており、ハーフカットセルのパネルはその代表例といえる。

 こうした新たな構造の太陽光パネルについて、回路の構造や過熱の原理を理解することが、今後のドローン点検の活用では重要になってくると、エネテクでは強調している。


【エネテクによるトラブル・シューティング】