現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

自治体のコロナ対策でリスク回避、米の太陽光建設業

「非接触申請許可」と「遠隔立ち合い検査」を導入

2020/04/15 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

建設業は「必要不可欠」

 米カリフォルニア州では新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止に向け実質的な外出禁止令が3月中旬に発令され、それに伴い非必須(ノンエッセンシャル)事業の停止と従業員の在宅勤務が義務付けとなった。一方、必要不可欠(エッセンシャル)とみなされた社会生活インフラである商業や事業は営業の継続が認められている。連邦政府、さらに多くの州政府は、「建築」をエッセンシャルとみなした。

 建築物の施工や完工には、公的な許認可や検査が必要なものが多く、地方自治体レベルで運営される建設局・建設課が、こうした業務を立ち合いで行ってきた。新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される状況のもと、建築業が円滑に継続されるため、こうした手続きをどのように行い、建築事業者をサポートするかが大きな課題となった。

 これには大きな困難も予想されたが、幸いなことに、課の職員の感染リスクを抑制しながら、設備の安全な設置を保証できる選択肢があるのだ。それは、「非接触(非対面)申請許可」とリアルタイムで行われる「リモート(遠隔)・バーチャル立ち合い検査」である(図1)。

図1●遠隔ビデオによる検査
図1●遠隔ビデオによる検査
(出所:NFPA)
クリックすると拡大した画像が開きます

太陽光の建設には許可と点検

 4月6日、「COVID-19の中、どのように安全な許可・検査を継続するか」と題するセミナーが、サステイナブル・エネルギー・アクション・コミッティ(SEAC)とインタースタイト・リニューアブル・エネルギー・カウンセル(IREC) の共催で行われた。SEACは、ネット・ ゼロエネルギー・コミュニティへの移行を安全かつ効率的にサポートするための情報を提供し、IRECはクリーンエネルギーの普及・推進を目的として1982年に設立された非営利組織である。

 セミナーには主にカリフォルニア州の市役所の建設課で太陽光発電の許可と検査に従事する職員が各局でのCOVID-19前と後の対応方法の違いを語った。

 太陽光発電システムを設置するには電気と建設工事が必要になり、この種の作業には安全性の懸念が伴うため、地方自治体は各太陽光発電が稼働を開始する前に、設置が電気及び建築基準に適応していることを確認する必要がある。

 設置許可申請と点検は官僚的ではあるが、必須なプロセスであり、主に施工業者がサービスの一環として、このプロセスを処理する。

 まず、太陽光発電を設置する前、地方自治体から電気、建物、または太陽光発電に特有の許可を得なくてはならない。

 設備設置後、そして設備稼働前に、地方自治体の建築部門の検査官が最終検査を行う。検査官は、設備が建築基準法と安全規制を満たしていることを確認する。ほとんどの電力会社は 設備が電力連系に接続される前に地方自治体による検査をクリアした書類を要求する。さらに、系統連系の最後のステップとして、電力会社が設備の検査を行うケースもある。

「遠隔画像点検」を積極的に活用

 緊急事態宣言が発令された後も、市役所は運営を継続しているが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、市役所の職員や施工者への感染リスクを削減するため、窓口での交付や現場での立ち合い検査をやめた市役所が今回のセミナーに参加し、実例を共有した。

 まず、建築許可の申請をオンライン化した。建設業許可の窓口には多くの人が許可申請や書類提出などに訪れるため、不特定多数の人と接触することになる。それを最小限に抑えるため、電子メールまたはウェブのポータルを利用して申請書を受け付けることにより、「非接触許可」を促進することができる。グーグルドライブやドロップボックスなどのオンラインファイル共有アプリで、管轄当局と施工者間で大規模なファイルを共有できる。

 カリフォルニア州のロサンゼルス郡の建設課では、太陽光発電を含む14種の設備設置への「バーチャル点検」を行っている。バーチャル検査は、スマートフォンやタブレットで、ズーム(ZOOM)、ファイスタイム(FaceTime)などのアプリを使い動画をライブ配信して行われる。

 SEAC秘書を務め、今回のセミナーの議長を務めたジェフ・スピース氏は、遠隔検査を行うに当たり以下の重要点を挙げた。

  • (1)検査官はまず検査のタイプが遠隔から可能であるか、確認する必要がある
  • (2)申請者(施工者)が有効な許可書を持っている
  • (3)検査官が遠隔点検の十分なトレーニングを受けていて、使用するツールにも周知している
  • (4)設備点検を行う現場が、許可を申請した住所と同じであることを施工者が点検の際、証明しなければならない

 さらに、スピース氏は、遠隔検査に必須なツールとして、カメラ付きのスマートフォン、タブレット、またはラップトップ、懐中電灯、水準器、巻尺、ドライバー、レンチ、マルチメーター、はしごなどを機材としてあげ、さらに、検査官と現場の担当者にとって音声のみならず画像、動画が転送できる十分なインターネットの帯域幅と、高画質な動画を送れるかを確認することが重要と述べた(図2)。

図2●遠隔検査に必須なツール
図2●遠隔検査に必須なツール
(出所:SEAC)
クリックすると拡大した画像が開きます

オンライン化の利点と欠点

 ロサンゼルス郡建設局で電気工事検査主任を務めるマスタファ・カシェ氏は、同局でのCOVID-19前後における違いについて語った。

 ロサンゼルス郡建築課では、COVID-19自宅待避命令の発令前は、太陽光設置においては、設置計画のチェックは窓口を通してのハードコピー(プリントアウト)書類提出が主流であったが、発令後は、全てオンラインでのチェックに転換。許可申請に関しては、発令前にオンラインで許可申請が承認されたことはないが、発令後はオンラインを通して許可を出している。検査においては、発令前は現場点検と遠隔点検の両方を行なっていたが、発令後は遠隔点検を強化したと語った(図3)。

図3●ロサンゼルス郡の建築(電気)用オンライン許可申請と遠隔検査のウェブページ
図3●ロサンゼルス郡の建築(電気)用オンライン許可申請と遠隔検査のウェブページ
(出所:County of Los Angeles)
クリックすると拡大した画像が開きます

 さらに、オンラインによるメリットとデメリットを語った。

 メリットには、「より良いカスタマーサービス」「事前予約などの計画が立てやすい」「検査で何らかの不備・欠陥が発見された場合、その場で対処が可能で、再検査を同日に行える」「(検査官が)現地に向かうための時間とお金がかからない」「検査官の安全が確保できる」「検査が行われる正確な時間を提供できる」、「COVID-19だろうが、いつでも検査の予約を入れることができる」をあげた。

 デメリットには、「テクニカルな問題が発生しやすい」「施工業者、または検査官がテクノロジーに慣れていない」「検査箇所ではなかった部分に危険な電気サービスがあった場合など、全体像を見落とす可能性がある」「細かい点を読み取ることができない」「全ての施工者が鮮明な動画を送れるとは限らない」「オンラインで修正や解決策を説明することが難しい場合がある」「検査中に検査に慣れた施工者がいない場合がある」「現地検査よりも時間がかかる場合がある」をあげた。

 カリフォルニア州アーバイン市の建設局電気工事士シニア検査官のダロルド・ウイレイ氏は、「許可認定と検査をオンラインに移行することにより、建築プロジェクトの前進をサポートでき、それにより建築業の雇用が維持され、給料を支払い続けられる」とし、その経済効果を大きなプラスとした。