現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

「自動切り替え」「非営利」を背景にコミュニティに再投資

カリフォルニア州「地域新電力」成功の秘密(前半)

2022/05/02 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

 日本では、2016年4月に住宅や商店など「低圧」区分まで広がった電力システム改革により、電力需要家は電力会社(小売電気事業者)の選択が可能になった。長年地域独占してきた垂直統合型の大手電力会社に対抗して新規参入したのが「新電力」会社。2020年頃までは順調にシェアを伸ばしてきたものの、2021年秋以降、卸電力市場の高騰に伴い、電気の仕入れ値が上がっていることなどにより多くの新電力の経営が困難になり、撤退も相次いでいる。

 そんな傍ら、米国カリフォルニア州では、地域密着型の地域新電力は着々と規模を拡大している。その成功の背景は何なのか?

米国版「地域新電力」

 日本では小売電気事業が全国レベルで全面自由化されたが、米国では電力自由化は各州の判断で、州別に実施される。気候変動対策と環境保護に積極的で、太陽光発電導入量で全米をリードするカリフォルニア州は、電力小売りを全面自由化しておらず、株式を上場している、3つの大手電力会社(IOU)が電力の送配電と供給を地域独占している。

 そんななか、同州は、2002年に市や町などの地方自治体が直接、コミュニティに電力供給の「チョイス(選択)」を提供できる法律を設定した。その仕組みは、「コミュニティ・チョイス・アグリゲーション (CCA)」と呼ばれる。

 この法律により、CCAは、地域独占電力会社に比べ、「グリーンでお手頃価格の電力」というチョイスをコミュニティに提供する。その結果、再生可能エネルギーの地産地消を促し、環境負荷を抑制した持続可能な社会を築けるわけだ。

 CCAは日本の「地域新電力」に似ていて、市や郡などの地方自治体が非営利組織(NPO)であるCCAを設立し、自ら発電所を開発、または発電事業者から電力購入契約(PPA)を通して電力を調達し、既存の大手電力会社が所有する送配電網を利用し需要家に電力を供給する。既存の大手電力会社は、送配電網の管理・保守や電気代の請求書発行・回収、その他の顧客サービスなども継続して担う(図1)。

図1●CCAのビジネスモデル。「電力」はCCAがクリーンエネルギーを調達、「配電」では地域独占のIOUが配電し、送配電網のメインテナンスを担う。「顧客」は、地域でコントロールされた、よりクリーンで手頃な価格の電気を受け取る
図1●CCAのビジネスモデル。「電力」はCCAがクリーンエネルギーを調達、「配電」では地域独占のIOUが配電し、送配電網のメインテナンスを担う。「顧客」は、地域でコントロールされた、よりクリーンで手頃な価格の電気を受け取る
(出所:CALCCA)
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CCAへ「自動切り替え」

 カリフォルニア州でCCAの設立・運営の支援とCCAを促進する法律・規制改善に取り組むカリフォルニアCCA協会(CALCCA)によると、2010年に同州で最初のCCAが事業を開始して以来、現在、州内で24のCCAが運営されており、200以上の市と郡で、同州の人口の27%に当たる1100万人以上の需要家に電力を提供している。株式上場している3つの大手電力会社から、27%もの顧客を獲得したのは大きな成果であろう。ちなみに、カリフォルニア州の大手電力会社は米国内でも最大規模である。

 そんな巨大電力会社から、いかにして地方自治体主導のCCAがシェアを獲得したのだろうか?(図2

図2●現在、カリフォルニア州で活動する24のCCA
図2●現在、カリフォルニア州で活動する24のCCA
(出所:CALCCA)
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 その理由の1つが「オプト・アウト」と呼ばれるCCAのメカニズムである。これは、地方自治体の CCA運営が決まると、その地域の全ての電力需要家(家庭、ビジネス、公共用)が、今まで電力を購入してきた地域独占の電力会社からCCAに自動的に切り替わる仕組みだ。

 つまり、電力需要家にとってCCAが、電力供給者としてデフォルト(初期設定)になる。そのままCCAとの契約を続けず、電力需要家が元の大手電力会社に戻ることを「オプト・アウト」と呼ぶ。

平均保有率は「93%」

 カリフォルニア州北部に位置するマリーン郡は、州で最初にCCA制度を導入した地方自治体である。マリーン・クリーン・エネルギー(Marin Clean Energy:MCE)というNPO法人が2008年に設立され、2010年からコミュニティの電力需要をまとめ、電力を調達し始めた。

 MCEでパブリック・アフェアーのディレクターを務めるジェーミー・タッキー氏は、「MCEは、カリフォルニア州で最初のCCAプログラムです。2010年から顧客にサービスを提供しており、現在はサンフランシスコのベイエリアで37のコミュニティにサービスを提供しています。 カリフォルニア州法により、CCAはオプト・アウトされています。つまり、顧客は自動的にMCEに乗り換えになり、(地域の大手電力会社である)PG&Eに戻るためには、その手続きを取る必要があります。私たちは、平均86%の顧客を維持することに成功しています」と、維持・保有率の高さを強調した。

 86%でもかなり高いが、CALCCAの加盟CCAの平均保有率は、実に93%に達している。つまり、200以上の市と郡の電力需要家の中で、長期間電力を購入してきた地域独占・大手電力会社に戻ったのは、わずか7%に過ぎなかった(図3)。

図3●現在カリフォルニア州で活動する24のCCAの顧客契約口数と顧客保有率
図3●現在カリフォルニア州で活動する24のCCAの顧客契約口数と顧客保有率
(出所:CALCCA)
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 タッキー氏は、MCEの大手電力会社との違いに対して以下のように語った。「MCEは非営利の公的機関であり、PG&Eは営利の投資家所有の公益事業です。私たちはコミュニティに非常に近く、コミュニティに最大の利点をもたらすプログラムとサービスの提供に焦点を合わせているという点で(PG&Eと)異なります。 私たちは(株式上場しているPG&Eと違って)株主に対して説明責任を負わないため、利益の追求ではなく、顧客に利点をもたらすプログラムに投資できます。さらに、私たちは(機関としてのスケールが)より小さく、より機敏であるため、プログラムを迅速に調整でき、コミュニティに最大の価値を提供できます」。

 さらに、「日頃から地域のメンバー(電力需要家)やコミュニティの組織に対しフィードバックを促し、提供するプログラムやサービスを改善します。コミュニティからの意見を聞き、取り入れることで、最も価値のあるプログラムを作れるのです。また、多くの場合、PG&Eと比較して2倍の量の再エネを、同程度またはより低いコストで提供します」と語った。

 次回は、カリフォルニア州で展開するCCAの再エネ調達方法に焦点を当て、CCAの成功の背景を分析する。