現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

2020年の世界太陽電池市場、シェアトップ5社は?

「単結晶」が独占的に、シリコンセルの米国内生産「ゼロ」に

2021/05/24 23:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

シェア上位は中国企業が独占

 2020年の全世界における太陽電池出荷量は、結晶シリコン系と薄膜系を合せ、前年比7%増の131.7GWに拡大した。出荷量を国別に見ると中国が全出荷量の67%を占め、以前と同じように群を抜く1位だった。

 気になるのは、2020年のメーカー別市場シェアだが、太陽光発電市場に関するリサーチ・コンサルティング会社である米SPV マーケットリサーチ(SPV Market Research)の最新レポート「ソーラーフレア(Solar Flare)」によると、1位は、中国のLongi(隆基緑能科技)で、2位は農業や新エネルギーを主力事業とする中国の通威集団傘下のシリコン系太陽電池メーカーであるTongwei Solar(通威太陽能)だった。2019年はTongwei Solarが1位で、Longiが2位であったので、2020年には順位が入れ替わったことになる。3位は、中国JAソーラー(JA Solar)、4位は中国のアイコ・ソーラー・エナジー(Aiko Solar・愛旭太陽能科技)、そして5位はトリナ・ソーラー(Trina Solar)と、中国メーカーがトップ5を独占している。

 ちなみに、トップ5といっても、2桁のシェアを持つのは1位のLongiだけで、他の全てのメーカーのシェアは1 桁台に留まっている。いかに僅差で接戦が繰り広げられているかがわかる。レポートによると上位5社の合計でも総出荷量の43%で半分に満たない。

 中国メーカーに独占されている世界太陽電池ランキングにあって、一矢を報いたのが米ファースト・ソーラーだ。同社は、CdTe(カドテル)型化合物系太陽光パネルの供給では世界トップで、なんとか10位に食い込んだ(図1)。

図1●2020年における世界太陽電池出荷量のメーカー別シェアトップ5
図1●2020年における世界太陽電池出荷量のメーカー別シェアトップ5
(出所:SPV Market Research)
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単結晶が多結晶を大きく上回る

 出荷量をセル(発電素子)のテクノロジー別に見てみよう。2019年時点で「単結晶シリコン型」の太陽電池の出荷量が初めて「多結晶シリコン型」を抜き、単結晶のシェアが62%まで伸びたが、2020年はさらにそれを上回って88%に達し、単結晶の独占的な状況になってきた(図2)。

図2●2020年における世界太陽電池出荷量のテクノロジー別シェア
図2●2020年における世界太陽電池出荷量のテクノロジー別シェア
(出所:SPV Market Research)
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 SPVマーケットリサーチの創立者であるチーフ・マーケットリサーチ・アナリストであるポーラ・ミンツ氏は、「2020年は単結晶が、全てのセルテクノロジーの中で独占的な地位を占め、さらに単結晶の中ではP型の裏面不動態型セル(PERC: Passivated Emitter and Rear Cell)が全体の75%を占めました。驚いたことは、2020年の総出荷量において、N型単結晶が多結晶を上回ったことです。太陽電池メーカーは、変換効率、出力、そしてマージンを向上させるためにN型にシフトしており、なかでもHJT、TOPCon、およびN型PERCを増やしています」と語った。

 ミンツ氏によると、多くの太陽電池メーカーは、2015年から単結晶シリコンを使ったPERCの生産能力を増やし始め、さらに2018年には、従来の多結晶メーカーも単結晶P型PERCへの移行を開始し、2019年にはP型PERCの本格的な生産が拡大し、出荷量も大きく増加した。

 図3を見ると、多結晶シリコンの出荷量は、2018年まで単結晶シリコンを上回っているものの、2017年から減少し始め、2020年には2010年代初めのレベルまで縮小しているのが分かる。それに比べ、単結晶の出荷量は2018年から右肩上がりで飛躍的に伸びている。

 2010年から2020年における年平均成長率(CAGR)を見てみると、多結晶がわずか1%に留まるの対して、単結晶は33%と大きく伸びている(図3)。

図3●テクノロジー別の世界太陽電池・年間出荷量の推移(青線:単結晶シリコン、赤線:多結晶シリコン、灰色線:薄膜)
図3●テクノロジー別の世界太陽電池・年間出荷量の推移(青線:単結晶シリコン、赤線:多結晶シリコン、灰色線:薄膜)
(出所:SPV Market Research)
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 ちなみに、結晶シリコン以外のテクノロジーである薄膜タイプは、年平均成長率10%となっており、2018年からじわじわと出荷量が増加している。薄膜のシェアは、2020年には総出荷量の5%を占めたが、その90%は、化合物系のカドテル(CdTe)型が占めた。

サンパワーもセル工場を売却

 ファースト・ソーラーは、カドテル型により薄膜太陽電池では、世界的な存在になり、さらに米国のメーカーとして存在感を高めている。一方で、2020年の米国における結晶シリコン型太陽電池セルの生産は、ついに「ゼロ」に落ち込んでしまった。

 中国などからの安価な太陽電池製品の大量流入により、米国内で生産していた太陽電池メーカーは収益性が悪化し、次々と事業から撤退、または破綻に追い込まれた。国内製造業を保護するため、前トランプ政権は2018年1月、結晶シリコン太陽電池 (CSPV)の輸入製品に対して4 年間にわたり関税を課すことを決定し、実施した。

 関税の発表に伴い、複数の大手メーカーが米国内での生産拡大を表明した。関税によって促されたのは、主に、結晶シリコン太陽電池「モジュール(パネル)」の組み立てであった。唯一、結晶シリコン太陽電池「セル」の生産を発表したのは、米サンパワーだった。

 サンパワーは、独ソーラーワールドの子会社であるソーラーワールド・アメリカズを買収し、ソーラーワールド・アメリカズが持っている 西半球で当時最大規模の結晶シリコン太陽電池セルとパネル工場を運営し、米国で唯一の結晶シリコン型太陽電池セルの製造会社となるはずだった。しかし、生産まで至らず、サンパワーはこの工場を売却してしまった。

 「セルの生産にはコストがかかります。 米国は、セルメーカーを今後何年にもわたってサポートし、米国で製造されたセルを購入するインセンティブを提供する必要があります」。米国内でのセル生産が無くなってしまった以上、政府は関税ではなく、インセンティブを与えるべきというのがミンツ氏の主張だ。