現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

米ファースト・ソーラーが「選択と集中」、モノづくり回帰へ

O&Mとデベロッパー事業を売却、米国内のパネル年産能力6GWに拡大

2021/06/16 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

中国内を除いて最大規模

 今月6日、米太陽光パネルメーカー大手の米ファースト・ソーラーが、6億8000万ドルを投資して、米中西部オハイオ州に3番目の太陽光パネル工場を建設すると発表した。この工場が建設されると、同社の米国内における工場は、垂直統合型太陽電池生産メーカーとして中国内の生産拠点を除いて最大規模となる(図1)。

図1●米オハイオ州にあるファースト・ソーラーのパネル工場
(出所:First Solar)
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 ファースト・ソーラーといえば、カドミウムテルル(CdTe) 型化合物系太陽電池を生産し、薄膜パネルの製造・販売で世界トップのメーカーであり、EPC(設計・調達・施工)サービス事業者としても世界首位に立っている。さらに、大規模システム向けのO&M(運営・保守)サービスや、使用済みの自社パネルの回収・リサイクルも手掛けている。

 同社のパネル販売は累計で25GWを超え、さらに今までに4.7GWを超えるメガソーラーを世界各国でプロジェクトデベロッパーとして開発してきた。

 このようにファースト・ソーラーは、太陽光パネルの開発・生産という川上分野から、発電所システムのデザイン・建設などを含む川下まで統合されたビジネスで、世界の発電事業用メガソーラー(大規模太陽光発電)市場をリードしてきた。その同社がここにきて、「コア」に戻ろうとしている。

メガソーラー開発事業でも急成長

 1999年に創立されたファースト・ソーラーは、当時太陽光発電市場で主流だったもののコストの高かった結晶シリコン型に対抗して、カドミウムテルルを使った低コストの太陽光パネルを市場に投入した。当初、薄膜型パネルの技術は、結晶シリコン型より変換効率が低く、同じ出力を得る場合、薄膜型は結晶シリコン型よりも大きな設置面積が必要になった。このため、薄膜型は設置面積に限りのある住宅用を含む分散型発電には不向きだった。

 同社にチャンスとなったのは、小売電気事業者に再生可能エネルギーの導入を義務付ける「RPS:Renewable Energy Portfolio(再エネ・ポートフォリオ基準)」を規定する法律が成立したことであった(図2)。

図2●ファースト・ソーラーが開発したメガソーラー
(出所:First Solar)
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 この法律の導入で、小売電気事業者は大規模な再エネ発電所から長期間の電力購入契約(PPA)を結び電力を調達することになり、広大な土地と日射量に恵まれたカリフォルニア州を含む米南西部で、メガソーラーの需要が拡大した。

 低コストを武器に、ファースト・ソーラーは、2010年に電力事業用部門を創設し、RPS法を遵守するためのメガソーラー建設の市場で大きく成長していった。実際、当時同社のEPC事業の売り上げは、パネルの売上高を超えていた。

 米国研究所の 米ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)の分析によると、RPS制度は、2014年のおける米国の太陽光発電導入量の86%分を牽引したという。その比率は、2019年には32%と徐々に下がってきているが、企業、地方自治体、そして州政府の気候変動対策の1つである「脱カーボン」イニシアティブで、メガソーラーの需要は今後も根強いと言えるだろう。

コア以外は売却

 発電事業用のメガソーラー分野で頭角を現したファースト・ソーラーだが、2020年に「戦略的見直し」を発表した。「見直し」により、昨年6月に同社の世界最大規模である北米O&Mサービス事業をカナダのノバソース・パワーサービスに売却する最終合意に署名した。

 さらに、今年1月に入り、連系出力10GWのプロジェクトを含む米国における発電所プロジェクト開発事業を米デベロッパーであるリーワードに売却する正式契約を締結した。今年3月に北米O&Mサービス事業、そして4月に米国プロジェクト開発事業の売却が完了したばかりである。

 「私たちのコアは、テクノロジーとパネルの製造です」と強調する同社は、米国内での大規模な生産拡大に踏み入った。

 米アリゾナ州に本社を構える同社は、米オハイオ州、マレーシアのクリム、そしてベトナムのホーチミン市で工場を稼働させている。2020年時点での同社の全世界における年間生産能力は6.3GWだった。

 同社はオハイオ州のペリスバーグとレイク・タウンシップで2つの工場を運営しており、今回の投資はオハイオ州で3番目の工場となる。現在、州、地方のさまざまな許可および承認待ちとなっているが、2023年前半に稼働すると、新工場の生産能力は、年間3.3G Wと全米最大のパネル工場となる。オハイオ州の既存の2つの工場と合わせると、同社の米国内における生産能力は6GWまで拡大するという。

 パネルの変換効率を改善しつつ、生産性を高めてコストを削減する一方、パネルの経年劣化率の改善や生産時のカーボンフットプリント抑制(CO2排出削減)など、メーカーに求められる技術革新を徹底する。一時「コモディティー化」してしまった太陽電池開発の原点に戻り、モノづくり企業として新たな一歩を踏み出したように見える(図3)。

図3●ファースト・ソーラーが開発・販売するカドテルを使った太陽光パネル
(出所:First Solar)
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