現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

米ラスベガスのMGM、100MWのメガソーラーと「CPPA」

ホスピタリティ業界で最大規模の電力購入契約に

2021/07/13 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

州最大の電力需要家

 米国ではアマゾン、グーグルなどIT系のリーディング企業による再生可能エネルギーの調達が加速しているが、この動向はハイテク企業だけにとどまっていない。

 米西部の砂漠地帯に、オアシスのように突如として現れる巨大なホテルとネオンで眩いネバダ州ラスベガス。24時間、眠らないこの「不夜城」で、13ものカジノ・ホテルを運営・所有する米カジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナル(以降MGM)が、出力100MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)から電力を調達し始めた。この調達規模は、現在ホスピタリティ業界で最大の再エネ調達になる(図1)。

図1●MGMの運営する13のカジノ・ホテルに電力を供給するメガソーラー
(出所:MGM Resorts International)
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 米ネバダ州では、先月6月2日の時点で、COVID-19(新型コロナウイルス)感染者の減少とワクチン接種率の増加により、州および地方レベルですべての制限が解除された。世界最大の歓楽都市は、長期のロックダウンを経て、市内にあるほぼすべてのカジノ・ホテルが全施設による営業を再開した。

 MGMは、ラスベガスに本社を置く統合型リゾート運営会社で、ホスピタリティとエンターテインメント業界で世界を代表する企業である。同社はラスベガスには、「ベラージオ」「MGMグランド」「ニューヨークニューヨーク」「アリア」「パークMGM」「ミラージュ」「マンダレイベイ」「ルクソール」「エクスカリバー」などそのユニークな外観と内装で有名な、計13の系列ホテル・カジノを持っている。大規模なカジノ・ホテルを運営する同社は、ラスベガス市のみならず、ネバダ州で最大の電力需要家となっている(図2)。

図2●24時間眠ることのない「不夜城」では、大量の電力が消費される
(出所:Las Vegas Convention and Visitors Authority)
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2030年に米事業を再エネ100%に

 そんな電力多消費型の事業構造を持つMGMは、2006年には「コーポレート・サスティナビリティ事業部」を設けて気候変動対策に乗り出し、「環境持続可能性イニシアチブ」の一環とし、以下の目標を掲げた。

 スコープ1・2の範囲における温室効果ガス排出量を2030年までに2019年比で50%削減すること。そして2030年までに米国事業の100%、グローバルでの全事業の80%を、再エネで賄う、というものだ。スコープ1とは、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)、スコープ2とは他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接的な排出を意味する。

 ちなみに、同社の2020年におけるグローバルでの全事業で消費された電力量は、120万4660MWhに上っている。

 MGMは、ラスベガスでCOVID-19対策による制限が解除された後、その再開を祝うかのように「メガソーラーアレイ」と呼ばれる出力100MWに達する巨大プロジェクトの稼働を発表した。このプロジェクトでは、ドライレイク・バレーと呼ばれる、乾燥して湖底が露出した平らな砂漠地帯の640エーカーに32万3000枚もの太陽光パネルを敷き詰めた。

 ドライレイク・バレーは、ホテル・カジノが集まる歓楽街、ラスベガス・ストリップから30マイル北の砂漠に位置するが、連系する送電線は、ラスベガス市街とつながっており、物理的にも電力を送れる。このプロジェクトにより生み出される発電量は、2万7000世帯の米国の平均的家庭が年間消費する電力に相当する(図3)。

図3●MGMの運営する13のカジノ・ホテルに電力を供給する、100MWのメガソーラー
(出所:MGM Resorts International)
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屋根上にも8MWの太陽光

 「地球環境を保護することはMGMにとってビジネス上の必須事項であり、クリーンエネルギーでホテルに電力を供給する革新的な方法を見つけることは、私たちの責任である」とMGMリゾーツ・インターナショナルの会長兼最高経営責任者(CEO)であるジム・マレン氏は、このプロジェクトの開発が発表された2018年に述べた。

 さらに、同氏は「MGMのポートフォリオに再エネを組み込むことで、MGMのカーボンフットプリントを根本的に削減できる」と言う。MGMは、米インベナジーとパートナーシップを組むことで、再エネ開発を進めてきた。米インベナジーは、太陽光発電を含む再エネプロジェクトの開発、建設、そして運営を手がけるリーディング・プロジェクト・デベロッパーである。

 「メガソーラーアレイ」プロジェクトは、春または夏の暑い日に、MGMのラスベガスにおける13の全カジノ・ホテルの日中における電力需要の最大90%を賄うことができる。ちなみに、13の施設には、計3万6000を超える客室がある。

 年間を通すとこのプロジェクトは、MGMの年間電力使用量の約35%である約30万MWhを発電すると予想されている。MGMは、インベナジーとの20年間に渡る長期で再エネ電力の購入契約(PPA)を通じて「メガソーラーアレイ」から発電された全電力を独占的に購入する。このように需要家企業が、発電事業者などと直接、電力購入契約を結ぶことをコーポレートPPA(CPPA)と呼ぶ。

 2021年、インベナジーは、「メガソーラーアレイ」の過半数の持分を、電力会社を傘下に保有する米国の持株会社であるアメリカン・エレクトリック・パワー(AEP)の子会社であるAEPリニューアブルズに売却した。これによりAEPリニューアブルズがプロジェクトの75%の持分を所有し、インベナジーが少数株主として、運用および保守サービスを実行する。

 MGMは、2014年には、同社運営のマンダレイベイ・ホテル&カジノのコンベンションセンター屋上に太陽光パネルの出力で6.4MWのメガソーラーを設置した。当時このサイズは世界で最大規模の屋根置き(ルーフトップ)システムとして注目を集めた。その後、さらに約2MWを増設し、合計出力8.3MWとなり、マンダレイベイ・ホテル&カジノの電力需要の25%を供給している(図4)。

図4●「マンダレイベイ・ホテル&カジノ」の屋根上に設置されたメガソーラー
(出所:MGM Resorts International)
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 再エネ100%を目指す企業の中には、自社の拠点から遠い地域ですでに稼働する再エネの環境価値を安く購入する企業も見られる。この手法は、再エネ利用の「近道」ではあるが、再エネを新たに増やすことに貢献する「追加性」に乏しい。

 MGMは自社の建物に太陽光発電設備を導入する「自産自消」的な方法と、自社の消費する電力が運ばれてくる送電網に新規のメガソーラーを接続する「地産地消」的な手法を採用している。こうした取り組みは手間がかかり「近道」ではないが、自らの関与で着実に再エネを増やしていくという意味で意義深いものになる。