現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

企業だけではない、州政府でも加速する「RE100」

石炭・原子力からクリーンエネ転換を目指す動きに

2019/07/29 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

RPS目標を次々と引上げ

 1900年代終わりから、補助金支給など政府による普及政策で徐々に立ち上がり始めた世界の太陽光発電市場。当時、「コストが高い」との課題が付いて回っていたが、市場が拡大するにつれて、そのコストも劇的に下がり、従来の火力発電に匹敵、または下回るまでになった。

 太陽光発電の経済性が改善される一方、気温変動問題がより深刻化するなか、事業運営を100%再生可能エネルギーで賄う「再エネ100%(RE100)」を目標に掲げる企業が増加した。これらの企業は自主的に気温変動対策に取り組んでいる。米企業が世界のRE100動向をリードしているが、企業だけではなく、州政府での「再エネ100%」も一気に加速し始めた。

 米国の州レベルで今まで太陽光発電の導入に大きく貢献し、最も重要な政策は、「再生可能エネルギー・ポートフォリオ基準(Renewable Portfolio Standard:RPS)」である。

 RPS法は州が全ての電気事業者または電力小売事業者に対して、電力販売量の一定割合を再エネ電源から供給することを義務付ける法律だ。この仕組みは最近、始まったわけではない。最初の導入例はアイオア州で1983年に立法化し、その後1900年代終わりから2000年代初めにカリフォルニア州を含む多くの州が気候変動対策の一環で次々とRPS法を成立させた。

 しかし、RPS法が最初に導入された当時、目標値は20〜30%に留まっていた。それが、ここ数年、目標値を大きく引き上げる州が続々と増えている(図1)。

図1●各州の再エネ目標は改正ごとに引き上げられている—RPS法成立年(州名:黒色)とRPS法改正年(州名:赤色)
(出所:Lawrence Berkeley National Laboratory)
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ハワイ州が先鞭をつける

 まず、輸入化石燃料への依存度が最も米国で高いハワイ州が2015年にRPSの「再エネ100%」を法制化した。次いで、環境政策で米国をリードするカリフォルニア州は、連邦政府のパリ協定からの離脱決定後の2018年に、「クリーンエネルギー100%転換」を実現するために、同州の電気事業者に、「2030年までに電力販売量の50%を再エネから調達すること」、さらに「2045年までに電力販売量の100%をカーボンフリー電源で調達すること」を新たに義務付けた(図2)。

図2●米国でクリーンエネルギー100%を法制化した州
(出所:筆者作成)
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 昨年11月の中間選挙で民主党が知事選に勝利したニューメキシコ州は、今年に入り「エネルギー転換」法案を可決した。これは、「2045年までに同州の電力供給源を100%カーボンフリー(二酸化炭素を出さない)電源にすること」を義務付けるものだ。この法案には、中間目標も含まれていて、「2030年までに再エネ50%」「2040年までに再エネ80%」となっている。

 ついで、ニューメキシコ州に隣接するネバタ州も、よりクリーンで、グリーンなエネルギー主体の将来を目指し、「2030年までに同州の電力源の50%を再エネ」、そして「2050年までに100%をカーボンフリー で賄うこと」を法制化した。

ワシントン州も「クリーンエネ100%」

 5月に入り米国で最も水力発電の資源に恵まれるワシントン州も「2045年まで石炭からクリーンエネルギー100%に転換すること」を法制化した。

 具体的には3つの計画からなり、まず、「2025年12月31日までに石炭火力の段階的な廃止」、「2030年1月1日までに同州の小売電力事業者は顧客に提供する全電力を温室効果ガス(GHG)ニュートラルにする義務」、そして、「2045年1月1日までに同州の小売電力事業者が顧客に提供する全電力をカーボンフリー電源と再生可能エネルギーにする義務」、となっている(図3)。

図3●ジェイ・インスリーワシントン州知事が「クリーンエネルギー100%」を法制化
(出所:ワシントン州知事事務局)
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 先月6月には、東海岸のメイン州が、「2030年までに同州の電力源の80%を再エネ」、そして「2050年までに100%を再エネで賄うこと」を法制化し、現在米国では6州が再エネ、またはクリーンエネルギー100%を法制化している。

 さらに、州ではなく、米国議会直属の特別区であるワシントンDCは「2032年までに100%」、米国自治連邦区であるプエルトリコも今年3月に「2050年までに再エネ100%」を法制化している。

カーボンフリーの原子力は?

 厳密に言うと、「再エネ」「クリーンエネルギー」「カーボンフリー」「カーボンニュートラル」など、目標の電源の「定義」が州によって違っている。再エネとカーボンフリー、カーボンニュートラルとの違いは、まずカーボンフリー、カーボンニュートラルの電源には既存の大規模水力発電が含まれることだ。

 カリフォルニア州でRPSを管轄するカリフォルニア・エネルギー委員会によると、同州の「2030年まで60%」というRPS目標の対象となる再エネには、太陽光、風力、地熱、バイオマス、小規模水力、波力発電などが含まれている。そして「2045年までカーボンフリー」目標の対象には、既存の大規模水力と他のカーボンを排出しない資源が含まれている。

 ちなみに、同州で現在稼働している原子力発電所は1基のみで、この発電所は2025年までに廃炉になるので、カリフォルニア州の「クリーンエネルギー100%転換」には原子力は含まれないことになる。

 ワシントン州の石炭火力の廃止、カリフォルニア州の原子力の廃炉など、真の「クリーンエネルギー100%」を目指した州の参加がこれからも拡大すると予想されている。