現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

ハワイ大手電力、住宅蓄電池の放電時間を指定、火力廃止へ

「バッテリー・ボーナス」制度で太陽光併設型を推進

2021/08/16 18:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

屋根上太陽光の普及で米トップ

 再生可能エネルギー、特に分散型電源の推進制度でリーダー的な存在である米ハワイ州。そんなハワイ州の大手電力会社が、既存または新設する太陽光発電に蓄電池を併設した顧客に、補助金を支給する。2021年7月に発表した。

 日本で蓄電池というと、依然として非常時への備えというイメージが強い。だが、このプログラムの目的は、「災害時に活用可能な家庭用蓄電システムの導入促進」ではなく、夕方の特定の時間に蓄電池から電力網に放電し、逼迫するピーク時の電力供給を補うためなのである(図1)。

図1●ハワイ州大手電力会社による太陽光発電に蓄電池併設を促す補助金プログラム「バッテリー・ボーナス」
図1●ハワイ州大手電力会社による太陽光発電に蓄電池併設を促す補助金プログラム「バッテリー・ボーナス」
(出所:Hawaiian Electric Co.)
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 大小の島々で構成されるハワイ州の電力網は、米大陸本土と連系していない独立系統で、島と島同士も結ばれていない。このため同州は、米国の中で最も輸入石油への依存度が高く、早くから、石油への依存から脱却するために再エネを推進してきた。実際、「再エネ100%」目標を法律に明記した米国で最初の州でもある

 その「再エネ100%」目標を2045年までに達成するため、分散型電源の盟主でもある屋根上太陽光のさらなる導入拡大に向け、これまでにも推進制度をいくつか打ち出してきた。その結果、ハワイ州は、屋根上太陽光の普及率で米国トップとなっている。

 ただ、ハワイ州で太陽光発電の導入が進んだのは、制度だけではなく、米国で一番高い電気料金も背景にある。ずば抜けて高い電気料金単価によって、同州では他州以上に太陽光に対する投資回収が容易になったのだ。

新規太陽光の8割に蓄電池

 しかし、ハワイ州では、2010年以降、分散型太陽光発電システムの導入量が急速に増加したことで、電力系統への悪影響が懸念されるようになった。分散型太陽光の接続保留、出力抑制、さらにネットメータリング制度の廃止へとつながった。それにより分散型太陽光発電市場が一時冷え込んでしまった。

 とはいえ、ハワイ州エネルギー省のデータによると、2020年末時点で同州の住宅では実に31%には太陽光発電システムが搭載されている。さらに、新規導入された太陽光発電に蓄電池が併設されている比率は78%に達し、これも他州に比べ高い。

 ハワイ州が2020年に供給した全電力量の35%は再エネ電源からで、その約半分は分散型太陽光発電システムからの電気になっている。ちなみに、2020年末ハワイ州における分散型太陽光発電システムの累積導入量は968MWで、システム数は8万7848に達している(図2)。

図2●ハワイ州における屋根置き型太陽光発電累積設置量(MW)
図2●ハワイ州における屋根置き型太陽光発電累積設置量(MW)
(出所:Hawaiian Electric Co.)
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火力廃止で再エネを蓄電池から放電

 今回「バッテリー・ボーナス」と呼ばれる太陽光発電に併設した蓄電池に補助金が支給されるプログラムは、ハワイ州オアフ島をサービス管轄とする米大手電力会社ハワイ・エレクトリック(Hawaiian Electric Co.、以後HECO)が提供する。オアフ島は特に家庭用を含む屋根置き分散型太陽光発電システムの導入量が多く、その量は513MWで、州全体の53%を占める。

 今年6月末時点の最新のデータによると、累積導入量は745MWまで伸びている(図3)。

図3●HECO管轄内での分散型太陽光発電システム累積導入量と数(2021年6月末時点)
図3●HECO管轄内での分散型太陽光発電システム累積導入量と数(2021年6月末時点)
(出所:Hawaiian Electric Co.)
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 このプログラムの目的は、同州の2045年までに「クリーンエネルギ−100%」目標に近づくため、そして、オアフ島にある石炭火力発電所が2022年9月に廃止された時、短期的にピーク時の電力需要を再エネで賄うことを目指している。ちなみに、この石炭火力は、「AESハワイ発電所」と呼ばれ、オアフ島の南西隅にある。出力は、180MWで、同島の電力の15%を供給している。

真昼の太陽光を夕方に使う

 HECOが「バッテリー・ボーナス」に当てる予算は3400万ドルで、ハワイ州公益事業委員会(PUC:Public Utilities Commissions)で認定された合計50MW分の蓄電池に補助金が支払われる。申請は2023年6月20日まで、または50MWの上限に達するまで受け付けられる。

 早期購入・導入を促すため、最初の15MWに達するまで、補助金はkW当たり850米ドルで、次の15MW分には750ドル、そして最後の20MW分には500ドルが支給される(図4)。

図4●「バッテリー・ボーナス」の補助金額
図4●「バッテリー・ボーナス」の補助金額
(出所:筆者作成)
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 例えば、最初の15MW分が埋まる前に5kWを申請した場合、合計4250ドル(5kW x 850ドル)が支払われる。

 このプログラムで補助金が支給されるにあたって重要な条件は、毎日契約で決められた2時間、日中に太陽光発電で蓄電池に充電した電気のうち、決められた量を電力網に放電しなくてはならない、という点だ。その契約期間は10年。上記の例の5kWを申請した場合、1日2時間、10kWhを放電することになる。

 「私たち(オアフ島)のピーク需要は、全員が帰宅し、ワイキキが点灯し、すべての電化製品が稼働し、店舗が操業している午後5~9時までです。真昼の太陽光をいかにこのピーク時間帯にシフトできるかが課題です。 蓄電池などエネルギー貯蔵がそれを可能にします」とHECOのシニアスポークスマンであるピーター・ロゼッグは言う。

 HECOの電力需要ピークは夕方であることから、午後6~8時半の間の2時間を補助金申請者に指示できる。例えば、午後6時15分~8時15分の2時間を指定されたら、この申請者はこの2時間にこれから10年間蓄電池から電力を放電することになる。

 メガソーラー(大規模太陽光発電所)と大規模エネルギー貯蔵を活用することで再エネに転換しつつある米本土のカリフォルニア州とは違い、石炭火力の閉鎖を含む化石燃料依存からの脱退を、分散型の再エネと蓄電池を効果的に使うことで達成しようとするハワイ州の試みは、世界的にもユニークな取り組みといえそうだ。