現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

米では大規模エネルギー貯蔵設備が「新たな電源」に

2023年に累積「3GW」まで急拡大へ

2019/08/26 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

今年1月には1GWまで普及

 米国では大規模なエネルギー貯蔵設備が新しい「電力源」になりつつある。ここ数年、発電事業用の大規模エネルギー貯蔵の導入が急速に進んでいる。

 米エネルギー省(DOE) ・エネルギー情報局(EIA)によると、現在稼働中のエネルギー貯蔵に、2019年5月時点で明らかになっている計画中のエネルギー貯蔵設備が加わると、 2023年までに約3GWの大規模エネルギー貯蔵が米国の電力源として運用されるという。ちなみにEIAの「大規模」の定義は出力1MW以上となっている(図1)。

図1●米国における大規模エネルギー貯蔵設備の累積導入容量(MW)(注:2019年5月末時点。2019年以降は計画導入容量)
(出所:米国DOE EIA) 
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 2011年には100MWに満たなかった大規模エネルギー貯蔵設備の累積導入量は、すでに2019年5月には10倍の約1GWまで拡大している。

「蓄電池+太陽光発電」を推進

 この急拡大の背景には、州レベルの積極的な普及政策と、連邦政府の大規模エネルギー貯蔵導入に向けた規制的手法がある。米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)は昨年2月に、系統運用機関にエネルギー貯蔵の容量市場、エネルギー市場、及びアンシラリーサービス市場の参加を阻む障壁の取り除くことを義務付ける画期的な「オーダー841」を発行した。

 「オーダー841」の目的は、すべての卸電力市場で適用されるエネルギー貯蔵の明確な法的枠組みを作成し、電力システムのニーズを満たすために競合できるソリューションの範囲を拡大することを意図している。

 さらに、太陽光発電などの変動性再生可能エネルギーの導入拡大、そして導入価格の低下に伴い、より多くの電力会社が「蓄電池+太陽光発電」のペア(併設)を資源総合計画(Integrated Resource Plan =IRP)に含めるようになった。

 これまで電力会社のIRPには従来型の資源である石油、石炭、天然ガス、水力などが含まれていたが、ここ数年は、「蓄電池+太陽光発電」のペア、さらには、エネルギー貯蔵が「資源」として含まれるようになった。

 州別に導入量を見てみると、カリフォルニア州が全体の27%を占め、群を抜くナンバーワンである。2位はイリノイ州、3位はテキサス州となっている。トップ3を合わせると全体の半分となる(図2)。

図2●米国の大規模エネルギー貯蔵設備の導入容量の州別TOP10(2019年5月末時点)
(出所:EIA)
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最大規模は「40MW」

 2019年5月時点で、最も大規模な稼働中のエネルギー貯蔵はアラスカ州とカリフォルニア州に導入された40MWの設備だ。1万3760個のニッケルカドミウム電池セル(素子)で構成されるエネルギー貯蔵設備を、2003年に設置を完了した。

 電力システムとオートメーション技術を持つABBと、電池メーカー仏Saftが、アラスカ州フェアバンクス一帯に電力を供給する協同組合ゴールデンバレーエネルギー協会(GVEA)向けに開発して納入した。

 40MW(14MWh)のこのシステムは、非常時、25MWの電力を15分間供給できる。これは、ほぼ1万世帯分の電力使用量に匹敵する。さらに、短時間であれば、最大46MWの電力を供給することも可能で、停電事故などが発生した場合、バックアップの発電機が稼働するまでの間、安定した電力を供給できるという。

 もう一つの40MWのエネルギー貯蔵は、カリフォルニア州サンディエゴの南部に位置するビスタに昨年末から稼働を開始した。開発、所有、運営するのは、米LS Powerで、カリフォルニア州で送電系統の運用を担う独立した非営利組織であるカリフォルニア州独立系統運用機関(CAISO)の系統に接続し、卸電力市場で、電力、容量、そして周波数調整などのアンシラリーサービスを提供する。

 2019年に入り、5月時点では既に86MWの発電事業用エネルギー貯蔵施設が稼働を開始し、2019年末までに、さらに、約120MWが稼働を開始する予定である。

 ちなみに、今年中に導入されるエネルギー貯蔵で最大規模になるのは、30MWの「トップガン・エネルギー貯蔵システム」だ。このシステムはカリフォルニア州サンディエゴをサービス管轄に持つ大手電力会社サンディエゴガス&エレクトリック(SDG&E)が、運用する。日中、需要を上回った太陽光の電気をエネルギー貯蔵設備に蓄え、夕方以降の需要ピーク時に放電し、電力の安定供給を目指す。SDG&Eは2016年に既に30MWのエネルギー貯蔵設備をサンディエゴの北部に導入済みで、計83.5MWの導入を計画している(図3)。

図3●カリフォルニア州大手電力会社SDG&Eによって2016年に導入された30MWのエネルギー貯蔵システム
(出所:SDG&E)
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太陽光併設で「409MW」も

 2023年までに稼働予定の設備で最大規模になるエネルギー貯蔵施設は、フロリダ州の大手電力会社フロリダパワー&ライト(FPL)が開発する409MWの「マナティー・エネルギー貯蔵センター」である。

 このエネルギー貯蔵設備は現在、稼働中の同社の太陽光発電に併設される予定である。FPLによると、エネルギー貯蔵のサイズは130のオリンピック用のプールに匹敵し、900MWhの電力を供給できる。それは、3万2900軒の家庭に2時間、供給する電力に相当するという。2021年後期に稼働する予定だ。

 他にもニューヨーク州で318MWのエネルギー貯蔵が、2021年に稼働する計画という。