現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

米の電源構成、「2030年まで太陽光2割」を目標に!

累積導入容量は500GW超!

2019/10/07 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

国内外から1万9000人

 北米最大の太陽光発電関連の国際展示会「ソーラー・パワー・インターナショナル(Solar Power International=SPI) 2019」(2019年9月23~26日)がユタ州ソルトレイク市で開催された。このトレードショーは、北米最大のエネルギー関連イベントで、スマート電力アライアンス(SEPA)と米国太陽エネルギー産業協会(SEIA)による共催となる。

 このイベントは、2004年から続いており、ユタ州での開催は、今回が初めて。今年は700を超える出展者と国内外から1万9千人以上が来場した。

 今回のSPIでは、SEIAが2030年に向けたエネルギー転換を目指す「ソーラープラス10年間」というロードマップを発表した。このロードマップは、太陽光発電が米国の総発電量に占める割合を現在の2.4%から2030年までに20%に引き上げようという戦略的ビジョンである(図1)。

図1●ユタ州ソルトレイク市で開催されたSPIで2030年のビジョンを発表するSEIAのCEO
(出所:SEIA)
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「2030年までに20%」がもたらすもの

 2010年代、米太陽光発電産業は年間平均50%で成長を遂げ、累積導入容量は69GWを超えた。現在同産業は 年間170億ドルの収益を生み出し、24万2000人が従事している。

 SEIAによると、「2030年までに20%」の目標が達成されると、太陽光を巡り、2030年までに以下のような設備状況になっていると予想している。

 それは、(1)累積500GW以上の太陽光発電が導入(これは、2030年の年間導入量の77GWを含む)、(2)今後10年間で3450億ドルが太陽光発電の開発・導入に投資、(3)太陽光発電の新規導入量が、今後10年間に年間約18%で成長、(4)太陽光発電設備が1400万以上の屋上に設置、そして(5)太陽光発電が150基の石炭火力を置き換えるのに十分な電力を供給するーーといったクリーンな成長をもたらすという(図2)。

図2●「2030年までに20%」を達成するための年間太陽光発電導入(MW)推移(青色:住宅用、黄色:商業用、水色:発電事業用)
(出所:SEIA)
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4つの課題を解決

 しかし、この野心的なビジョンを実現するためには、いくつかの課題を解決していかなくてはならないという。そこでSEIAは、(1)コラボレーション、(2)市場加速要因(アクセラレーター)、(3)市場手段と政策牽引、そして(4)成長の管理――という4つの柱をビジョン達成の必要条件に加えた。

 「コラボレーション」について言えば、太陽光発電産業内、そして、風力、エネルギー貯蔵など他のクリーンエネルギー産業、電力会社、既存のエネルギー産業など太陽光発電産業以外の事業者との包括的なパートナーシップはビジョン達成の鍵となる。

 そして、こうした幅広い分野での連携は、グリッド・インフラ(電力系統)のさらなる進展と、将来的にどのように電気を生み出し、送り、そして消費するのかを模索し、伝統的な仕組みを変えていくために不可欠である。

 「市場アクセラレーター」では、エネルギー貯蔵、カーボン(炭素)削減目標、さらなる電化など、経済的、政治的な流れは独自の勢いがあり、太陽光産業はこの波に乗り続ける必要がある。

 また、「市場手段と政策牽引」の根幹である「2030年までに20%」を達成するためには、コスト削減の新たな機会を見つけ、成長を牽引する政策を促せるのか、など産業の能力に依存する。 産業は、コストを削減するために許可過程の課題を合理化し、新興市場(州)でのネットメータリングおよび州レベルの政策を引き続き推進し、成長を継続するために連邦政策である投資税額控除(ITC)の延長を議会に押し続けなければならない。

 最後に「成長の管理」が重要になる。太陽光発電は当初、経済性でディスラプション(破壊)を起こしたが、発電部門においてより大きな役割を果たすためには、グリッドの近代化、送電網、製造、消費者保護、人材開発と多様化、土地使用などの挑戦的な取り組みによって、成長を促す一方、長期的な成功を阻害する潜在的な壁を取り除かなくてはならない。

産業横断的コラボが重要に

 SEIAの社長兼CEO(最高経営責任者)であるアビゲイル・ホッパー(Abigail Ross Hopper)氏は、「『ソーラープラス10年間』ビジョンは、我々が米国のエネルギー消費を転換するにあたり、 チャンスとパラダイムシフトを表す。2030年までにこの目標を達成すると、(産業における)雇用が今の2倍以上になり、3450億ドルの民間投資が投入され、さらに電力部門の(カーボンの)排出を35%相殺できる。政策、精力的なコラボレーションと、産業の全てのメンバーの行動が、この目標を実現するために必須」と語った。

 SPIにおいて、このビジョンの発表の他にもう一つSEIAにとって重要な呼びかけは、投資税額控除(Investment Tax Credit : ITC)の延長を申請するための「ITCを守ろう!」であった。ITCは最も重要なクリーンエネルギー政策の一つとされるが、今年を境に、2006年から続いた30%の控除率が下がることになる。

 2005年に成立し、2度延長、さらに、2015年末オバマ政権下で、3度目の ITC延長法案が可決された。この法案で、ITCは5年間延長されたが、控除される比率が段階的に下がるようになった。具体的には、2017年から2019年の3年間は30%、2020年には26%、そして、2021年には22%と漸減する仕組みになっている。その後は、非住宅用に関しては2006年以降と同じ10%に戻り、住宅用に関しては税額控除の優遇措置は終わりを迎えることになる。

 SEIAによると、2006年の実施以来、ITCは20万人を超える米国人の雇用を創出し、1400億ドル以上の民間投資を集め、さらに、太陽光発電の導入を100倍に拡大したという。

 SEIAと英エネルギー調査・コンサルティング会社であるウッドマッケンジーによると、もしITCが延長されると、2030年までに、新たに82GWもの太陽光発電の新規設置をもたらすと予測している。さらに、ITC延長により、2020年から2030年の間、CO2排出量が3億6300万t削減されるとしている。

 ホッパー氏は、「ITCは、米国経済に数百億ドルもの成長を呼び込み、数千人の雇用を創り出す。低炭素化を目指す市、そして企業に対し、真の解決法をもたらす手段となった」と、ITC 延長を議会に申請するようイベント参加者に唱えた(図3)。

図3●ITCを延長による米国太陽光発電市場への影響(棒線:ベースライン、青面:ITC延長による増加分・MW)
(出所:Wood Mackenzie Power & Renewables and SEIA)
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