現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

2019年版・米企業の太陽光発電導入ランキング

3位はウォルマート…、では、1位と2位は?

2020/10/14 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

企業の導入量は10年で15倍

 米国の大統領選挙まで、すでに1カ月を切った(投票日11月3日)。大統領選のテレビ討論会では環境問題に関する「グリーンディール」、「フラッキング」、そして「パリ協定」などが討論されている。

 ちなみに「グリーンディール」とは、気候変動対策をコロナ禍からの経済復興と位置付ける考え方、「フラッキング」とは、シェールオイルやシェールガスを水圧破砕による坑井掘削で生産する手法で、米国内で石油・天然ガス生産を飛躍的に伸ばした一方で、有害な化学薬剤を使うため地下水脈の汚染など環境問題が指摘されている。

 フラッキングの禁止か規制緩和か、パリ協定に復帰するのか否かなど、米国の環境政策が次の大統領で大きく変わると予想されている。

 2016年に発足した米トランプ政権が、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱すると発表した時、米国の再生可能エネルギー市場が大きく後退すると予測されたが、そんな懸念とは裏腹に、米国内では、企業による独自の気候変動対策に取り組む動きが加速した。

 つまり、米企業は、連邦政府の法令・規制、方針に頼らず、または、義務付け無しで、自主的にクリーンエネルギー への転換に向け舵をきっているのである。

 実際、米国太陽エネルギー産業協会 (SEIA)によると、現在米国企業によって設置された太陽光発電容量は、10年前の2009年と比べると15倍にもなるという。2009年には、当時州政府による助成制度が確立していたカリフォルニア 州と東海岸のニュージャージー州に太陽光発電の導入は偏っていたが、その後、太陽光発電のコスト低下に伴い州政府の助成制度がほとんどなくなったにもかかわらず、企業による太陽光の導入は他の州でも拡大した(図1)。

図1●米国内における企業による太陽光発電導入量推移(上:2009年、下:2019年)(円の大きさは導入容量に比例)
(出所:SEIA)
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再エネ導入で電力コスト削減

 企業による太陽光発電導入の理由は、単に温暖化問題への対応だけではなく、企業の持続可能性の向上も背景にある。というのは、再エネ電力の長期購入契約により電力コストが安定化し、化石燃料の高騰による経営への影響を回避しつつ、経費も削減できるからだ。つまり、太陽光発電とビジネスは親密な関係になっているのだ。

 SEIAは毎年、米国リーディング企業による太陽光発電の導入量を調査し、「ソーラーはビジネスを意味する」という報告書にまとめ、発表している。今年9月に発表された2019年版の報告書によると、2019年のランキング1位はアップルで、累積導入量398.3MW。2位は累積導入量369MWでアマゾン、ついで、世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマートが累積331MWで3位に入った(図2)。

図2●太陽光発電導入企業・トップ10(2019年版・累積導入量)
(出所:SEIA)
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 ちなみに、今回で8年目を迎えるレポートであるが、SEIA は、2019年末までに、米43州に渡り導入された計8300MW(8.3GW)、3万8000件を超える太陽光発電プロジェクトを追跡し、データを分析した。これは、米国に設置されている全商業用太陽光発電容量の70%以上に相当するという。

流通・不動産が「オンサイト」で先行

 1つ興味深いことは、企業による太陽光発電導入方法の変化とその変化によるランキングの移り変わりである。

 従来、企業は、電力需要のある事業所・工場の屋根上、または敷地内に「自産自消」用に太陽光発電を導入した。これは「オンサイト設置」と呼ばれる。ランキング3位の世界最大のスーパーマーケットチェーンであるウォルマートと4位のターゲットは、自社の店舗、倉庫、流通センターなどの比較的規模の大きな屋根、または駐車場を活用し、全米でオンサイト設置導入を展開してきた。

 ターゲットは、2017年に米国内での事業に使用される電力を2030年までに100%再エネに転換する目標を掲げた。そのなかには、「2020年までに同社の店舗500店に屋根置き太陽光発電を導入する」との項目が含まれていたが、 2019年末で太陽光発電の設置数は500を超え、同社はその目標を達成した。SEIAのデータによると同社は、オンサイト太陽光の累積設置において件数、出力容量ともに群を抜くナンバーワンである。

 ウォルマートとターゲットに加え、物流拠点の開発などを手掛けるプロロジス、健康保険、病院経営など米国最大の健康維持機構であるカイザーパーマネンテ、そして総ランキング1位のアップルも自社の建物・敷地内で比較的規模の大きいオンサイト設置を導入してきた。ちなみに、プロロジスはオンサイト方法のみによる太陽光発電導入である(図3)。

図3●カイザーパーマネントの医療施設建物と駐車場に導入された太陽光発電
(出所:J. Movellan)
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「オフサイト」が増える

 これらの企業は2000年代中旬頃からオンサイト設置で商業用太陽光発電市場をリードしてきた。しかし、企業によっては、自社施設での設置スペースに限界があり、再エネ100%などの目標を達成するために十分な電力量を確保できないこともある。

 その場合、企業の敷地外、または電力需要地から離れた比較的広い場所に太陽光発電を設置する手法が選択される。電力自由化の進んでいる州ならば、企業は直接、独立系発電事業者(IPP)から太陽光発電を調達でき、電力規制下の州では、電力会社と特別なパートナーシップを組むことにより太陽光の電力を購入できる。これらを「オフサイト」導入と呼ぶ。

 SEIAによると、2019年には1.28GWの太陽光発電が商業用に導入され、これは今までで2番目に多い年となった。太陽光発電のコスト削減が加速し、国内で太陽光の調達手段が増えたことにより、2015年以降、企業でのオフサイト導入が増え始めた。ちなみに、オフサイト導入は、2019年の総導入量の34%を占めた(図4)。

図4●米企業による太陽光発電の年間設置容量におけるオンサイトとオフサイト内訳(単位:MW)
(出所:SEIA)
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アップルのサプライヤーもランクイン

 ランキングトップ10に入ったアップル、アマゾン、グーグル、スイッチ、そしてフェイスブックは大規模なデータセンターを運営しており、メガソーラー(大規模太陽光発電所)をオフサイトに開発することにより、その膨大な電力消費量を再エネに転換している。

 ちなみに、アップルの2019年時点でのオフサイト設備の累積容量は313MWで、総導入容量の79%を占めた(図5)。

図5●アップルのデータセンター用に設置されたオフサイト・メガソーラー
(出所:Apple)
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 ランキング10位のソルベイ は、実は1位のアップルに関係している。同社は、アップルのサプライヤーの1社なのである。ソルベイは、ベルギーに本社を持つ化学会社ソルベイの米国法人で、同社のスペシャルティポリマーズ・グローバルビジネスユニットは、アップルのサプライヤーとして、すべてのアップル向け製品を100%再エネで賄うことを公約した。

 同社は、ルイジアナ州バトンルージュにある工場の電力需要を再エネに転換するため、サウスカロライナ州に建設された81.4MWの新規メガソーラーから環境価値を15年間購入するという契約を結んだ。同社はこの1つのオフサイトプロジェクトで2018年に初めてこのランキングに入った(図6)。

図6●アップルのサプライヤーであるソルベイ社用に開発されたメガソーラー
(出所:Solvay)
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 これからも政府方針に頼らない、企業による活発な再エネ導入が期待できそうだ。