現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

メガソーラーの設置費用、追尾式でも「ワット1ドル」

追尾式の設備利用率は、固定式より5ポイント増に

2021/10/18 22:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

発電事業用は65%増で過去最高

 米国における発電事業用太陽光市場に関する最新の分析レポートを米ローレンス・バークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory:LBNL)が発表した。

 米国太陽エネルギー産業協会(SEIA)とコンサルティング会社である英ウッドマッケンジー社によると、米国の2020年における発電事業用太陽光発電の年間導入量は14GW-DC(直流・太陽光パネルベース)で、これは全太陽光発電導入容量の73%に相当する。2020年における発電事業用の導入量は過去最大で、前年比で65%の拡大を示した。

 LBNLのデータ分析は、「発電事業用太陽光発電」における、5MW-AC(交流・連系出力ベース)以上の地上設置型に焦点を絞っており、その定義をもとにすると、2020年に総設置容量は12.8GW-DC(9.6GW-AC)の大規模地上設置型プロジェクトが稼働した。この導入量は前年比2倍(110%)の成長となる。レポートの筆者であるマーク・ボリンガー氏によると、この導入量は「記録的」という。2020年末の地上設置型メガソーラー(大規模太陽光発電所)の累積設置容量は38.7GW-ACを超えたという。

結晶シリコン系が主流、韓国ハンファがトップ

 「太陽電池タイプ」別の分析を見てみよう。

 太陽電池タイプでは、2014年の1年を除いて、結晶シリコン系のシェアが大きく、市場で主流となっている。2020年もその動向は続き、結晶シリコン系がシェア71%で、薄膜系(化合物型)を大きく上回った(図1)。

図1●米国における地上設置型の太陽光発電設備のモジュールタイプ別・年間導入容量推移
図1●米国における地上設置型の太陽光発電設備のモジュールタイプ別・年間導入容量推移
(出所:Lawrence Berkeley National Laboratory)
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 ボリンガー氏によると、結晶シリコン系が米国市場を独占するものの、2018年以後薄膜系の人気が高まっているという。その理由は、2018年1月にトランプ政権が、国内の太陽光発電製造業を保護するため、輸入製品に対する関税を決定したが、関税対象は、結晶シリコン太陽電池 のみで、薄膜はこの関税に関係ないからである。

 結晶シリコン系のメーカー別シェアを見ると、韓国ハンファのシャアが最も高く、中国ジンコソーラーと中国トリナ・ソーラーが2位・3位と続いた。薄膜系では、CdTe(カドミウムテルル)型化合物系太陽光パネルの供給で世界トップの米ファースト・ソーラーが、100%のシェアを占めた。

追尾式のシェアは89%

 地上設置型太陽光発電設備を「架台(設置方式)」タイプのデータを見てみると、2015年以降、追尾式が固定・傾斜式設置に対し大きく伸長し始めたことがわかる。2020年にはさらにシェアを高め、1軸追尾式は、2020年に導入されたプロジェクトの実に89%も占めて、独占的な地位になっている(図2)。

図2●米国における地上設置型の太陽光発電設備の架台タイプ別・年間導入容量推移
図2●米国における地上設置型の太陽光発電設備の架台タイプ別・年間導入容量推移
(出所:Lawrence Berkeley National Laboratory)
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 追尾式が拡大を続ける背景には、追尾式の初期投資額は年々低下している一方、固定式に比べ発電量が伸びるので、米国内の多くの地域で経済性が高まってることがある。

 2016年まで、追尾式は、平均して固定式よりもコスト高であったが、2017年には同水準になり、2019年には、追尾式のコスト(1.6ドル/W-AC、1.2ドル/W-DC)が、固定式(1.7ドル/W-AC、1.3ドル/W-DC)を下回った。この逆転は、固定式が直面する、強風荷重、施工に制約のあるブラウンフィールド(廃棄物処分場跡地などの汚染土壌)などの困難な建設環境も背景にあげられる。

追尾式は西海岸や南部でメリット

 しかし、2020年のデータによると、追尾式は1.4ドル/W-AC(1.1ドル/W-DC)で、固定式の1.2ドル/W-AC(0.9ドル /W-DC)を上回ることになった。 ボリンガー氏は、追尾式は、kW(設備出力)あたりのkWh(発電量)が優れているため、いくらか高い初期費用(プレミアム)を維持できる、と語った。

 それを証明するように、レポートの分析によると、追尾式の設備利用率は固定式に比べ平均5ポイントも高い。このため、追尾式は、西海岸や南部などの日射量の多い地域でより利点が大きくなり、それらの地域での追尾式の導入割合が高くなっているという。

 設置方式と太陽電池の組み合わせを見てみると、過去10年間(2011~20年)「結晶シリコン系+追尾式」が最も多く、2020年の導入量は5.96GW-ACで、全体の63%を占めた。次に、「薄膜系+追尾式」が2.55GW-ACと続き、「結晶シリコン系+固定式」が76MW-AC、そして「薄膜系+固定式」が24MW-ACとなっている(図3)。

図3●米国地上設置型太陽光発電設備の架台・モジュールタイプ別・年間導入容量推移
図3●米国地上設置型太陽光発電設備の架台・モジュールタイプ別・年間導入容量推移
(出所:Lawrence Berkeley National Laboratory)
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パネル出力ベースで「ワット1ドル」に

 さて、価格の動向を見てみよう。

 LBNLが収集したデータによると、地上設置型太陽光発電設備の導入コストは、年々低下しており、2020年の中央値は1.42ドル/W-AC(1.05ドル/W-DC)で、2010年から74%、または年間12%減少している。

 2020年に収集されたデータの中で最も低いコストは、0.9ドル/W-AC(0.7ドル/W-DC)で、W(ワット)当たり1ドルを下回っている。

 サイズ別の価格を見てみると、サイズが大きくなるにつれてコストが下がる「規模の経済」が見えてくる。

 サイズが100M〜500MWの大規模プロジェクトのワット当たりのコストは5M〜20MWの小規模プロジェクトよりも17%も低コストになっている(図4)。

図4●サイズのグループ別コスト(中央値)
図4●サイズのグループ別コスト(中央値)
(出所:Lawrence Berkeley National Laboratory)
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