現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

米で普及期待の両面受光型、「関税免除」撤回の影響は?

米国内太陽電池メーカー、発電事業用で優位も

2019/10/23 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

サンパワーのIBCとともに一旦は「免除」

 一度は関税を免れた「両面受光型太陽電池」が、また関税対象に戻ってしまった。

 2010年以降、米国では、中国などからの安価な太陽電池製品の大量流入により、国内で生産していた太陽電池メーカーは収益性が悪化し、次々と事業から撤退、または破綻に追い込まれた。国内製造業を保護するため、トランプ政権は昨年1月、結晶シリコン太陽電池 (CSPV)の輸入製品に対して4年間にわたり関税を課すことを決定した。

 まず、1年目の2018年にCSPVのセル(発電素子)とモジュール(太陽光パネル)の輸入価格に30%が課され、2年目の今年は5ポイント減の25%となっている。

 米通商代表部(USTR)に対しては、関税措置の開始当初から多くのメーカーから関税控除要求が寄せられた。まず、昨年9月に米メーカーであるサンパワーのバックコンタクト(IBC)方式の結晶シリコン太陽電池セル・モジュールは、「多数の米国メーカーを破綻に追いやった安価で、コモディティ化した輸入品とは違う」とされ、関税免除になった。

 そして、今年6月に両面受光(両面発電)型太陽電池も関税免除のリストに加えられた。この除外には米太陽光エネルギー協会(SEIA) の後押しがあった。SEIAは、その背景として、「米国へ輸出される両面受光型太陽電池の生産量が非常に限られており、製品が米国で生産されたCSPV製品と直接競合せず、除外が保護措置の目的を損なうことはない」との除外理由を公表していた(図1)。

図1●両面受光型太陽電池の設置例
(出所:SilFab Solar)
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4カ月前の決定を撤回

 しかし、10月にUSTRは4カ月前の決定を覆し、「両面受光型太陽電池の免税措置を撤回する」と発表した。これにより、輸入される両面受光型太陽電池は、10月28日から関税賦課の対象となる。

 USTRは、米商務省とエネルギー省と協議し、「新しい入手可能な情報を評価したところ、両面受光型太陽電池の生産は世界的に増加していて、(両面受光型太陽電池の関税への)除外は、海外からの両面受光型太陽電池輸入を大幅に増加させ、国内で生産される片面と両面CSPV製品と米国市場で競合する可能性が高い。除外を維持することは、保護措置の本来の目的を損なうと判断した」と、発表した。

 両面受光型太陽電池は、表面・裏面どちらでも発電が可能で、地面からの反射光が裏面に当たることによって発電量が上乗せされる。

 この裏面の発電により従来の片面パネルと比べて5~20%高い発電量が期待できると言われている。さらに、パネル当たりの発電量が多いことから、LCOE(均等化発電原価)を下げ、太陽光発電の経済性を大きく向上させると言われている。

両面受光型の市場規模は?

 とはいえ、現時点で両面受光型太陽電池の市場規模は世界の太陽光発電市場全体の1%にも満たなく、その存在感は薄い。だが、従来のモジュールよりも発電効率が高いと言うことで、米国を含む多くの市場で注目を集めている。

 英エネルギーリサーチ・コンサルティング会社であるウッドマッケンジーによると、全世界での両面受光型太陽電池の導入量は2016年の97MWから2018年には2.6GWを超えるまでに拡大したという。

 同社は2019年末までにその導入容量は倍の5.4GWに成長すると予測している。それは世界両面受光型太陽電池の累積導入量が8.2GWを超えることを意味する。さらに、同社はこの市場が2019年から2024年の間に10倍以上に成長すると予測している。

 同社は、両面受光型太陽電池の市場が成長している要因は地域によって異なるが、共通しているのは、両面受光型の「低価格化」としている。ちなみに、両面単結晶PERCパネルと片面単結晶PERCパネルの生産コストの違いは、すでに最少ケースで0.5セントに過ぎないという(図2)。

図2●全世界での両面受光型太陽電池の年間導入量の予測(MW)
(水色:アジア、青色:北米、灰色:中東、
緑色:南米、黄色:欧州、赤色:オセアニア、緑色:アフリカ)
(出所:Wood Mackenzie)
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米での普及にブレーキも

 地域的には、中国が新しい技術の導入を奨励する国のトップランナープログラムの後押しもあり、世界最大の両面受光型太陽電池市場となっている。

 次に、米国が今後大きく拡大すると予想されている。ちなみに、この予測は、米国での両面受光型太陽電池の免税措置撤回前の9月に発表されていて、関税免除による輸入品の価格優位性を考慮に入れている。

 片面太陽電池と比べて発電量が多いということで、米国では大規模な発電事業用太陽光発電により適している。ウッドマッケンジーは、米国内での両面受光型太陽電池の導入量は2019年の500MWから2020年には2GW、そして2024年には7GWを超えると予想している。

 ただ、今回の「免除撤回」で、高変換効率のシリコン結晶系太陽電池で世界をリードしてきた米メーカーのサンパワーと、テルル化カドミウム(CdTe)を使った化合物型太陽光パネルのトップメーカーであるファーストソーラーが恩恵を受ける一方、カナディアンソーラーやジンコソーラーといった両面受光型太陽電池メーカーには打撃になりそうだ。