現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

中国企業の太陽光パネル・米工場、わずか3年で破綻

日本メーカー3社はすでに撤退、厳しい米での生産事業

2021/12/06 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

米市場の開拓を狙う

 2021年12月1日、米国カリフォルニア州サクラメントで太陽光パネル組立工場の生産設備がオークションに出された。この太陽光パネル組立工場を運営していたのは、サンナジーカリフォルニア(Sunergy California LLC)で、中国南京を拠点とする中電電気太陽光発電会社(CSUN)の子会社である(図1)。

図1●カリフォルニア州でオークションに出された太陽光パネル組立工場
図1●カリフォルニア州でオークションに出された太陽光パネル組立工場
(出所:Rabin)
クリックすると拡大した画像が開きます

 米国は太陽光発電設備の市場規模で世界2位に位置する。中国CSUNは、この巨大市場での売り上げを拡大するため、2014年、同社の多結晶太陽電池セル(発電素子)を使用した太陽光パネル(太陽電池モジュール)の米国での生産を決断した。サクラメントにある物件と賃貸借契約を締結し、製造設備を設置した。入居したのは、マクレランビジネスパーク内にある14万平方フィートの建屋だ。

アンチダンピング措置を回避

 CSUNは以前、中国と台湾製の太陽電池セルと太陽光パネルに対する米国のアンチダンピング(AD)措置を回避するために、中国を拠点とする工場から生産設備を移転し、韓国とベトナムに太陽電池セルの生産工場とOEM(相手先ブランド名での受託製造)による太陽光パネルの組立事業を設立した。米現地子会社のサンナジーカリフォルニアによるパネル組み立てには、韓国、そしてベトナムからの太陽電池セルが使用されていたと言われている。

 2017年、CSUNは年産規模400MWの太陽光パネル工場をサクラメントに新設した。しかし、生産開始は1年遅れて、徐々に新工場で生産されるパネルの注文受付を開始した。当時、サンナジーカリフォルニアの運営する、この新工場では200人の雇用が創出されることになっていた。ちなみに、サクラメントはカリフォルニア州の首都であり、サンフランシスコの北東約136kmに位置している。

 生産開始後、一時は、サクラメント工場の年産規模を600MWにまで増産するとの噂が出たが、サンナジーカリフォルニアは、2021年1月に自主的な破産再編を申請した。

 カリフォルニア東部地区の米国破産裁判所に提出された破綻申請書によると、サンナジーカリフォルニアの推定資産は、1000万米ドル、負債は、1720万米ドルを上回っていた。さらに、資産の中には、240万ドルの原材料と240万ドルの完成品と仕掛品が含まれていた。

 具体的に、オークションに出された完成品である太陽光パネルは合計5000枚。内訳は、390W品が3200枚、375W品が400枚、365W品が300枚、そして330W品が640枚となっている。さらに、21万枚以上の単・多結晶を合わせたセルも入っていた(図2)。

図2●オークションに出されたパレットに積まれた太陽光パネル・約5000枚
図2●オークションに出されたパレットに積まれた太陽光パネル・約5000枚
(出所:Rabin)
クリックすると拡大した画像が開きます

税制優遇を受けていたが…

 ちなみに、サンナジーカリフォルニアは、工場新設に伴って、カリフォルニア州から課税免除など優遇措置を受けていた。

 その背景には、同州が工場から得られる地域への経済メリットに期待したことがある。サンナジーカリフォルニアの工場設立により、雇用の創出、太陽光パネルから得られる環境上の利益、従業員が支払う個人所得税、同社の利益に対する確定税、固定資産税、およびその他の間接的に生じるだろう利益に基づいて、この工場が同州に590万ドルの公益をもたらすと推定していた。

 カリフォルニア州の期待と裏腹に、この工場は実際には3年も稼働せずに閉鎖してしまった。

 業界に詳しい専門家は、「真偽のほどは確認できませんが、正直に言って、あの工場で(サンナジーカリフォルニアが)実際に(パネルの)組み立てを行ったのかどうか疑っています。 親会社であるCSUNは、慢性的な財務悪化を抱えている少し問題のある会社です。 実行されなかった契約も多く、出荷の失敗や(パネルの)質の悪さなどの噂も聞かれました」と、匿名希望で語った(図3)。

図3●カリフォルニア州でオークションに出された太陽光パネル組立装置
図3●カリフォルニア州でオークションに出された太陽光パネル組立装置
(出所:Rabin)
クリックすると拡大した画像が開きます

日本メーカーも「全滅」

 会社自体の内部的な問題はどうあれ、歴史を振り返ると、日本の太陽電池メーカーも米国の生産では苦戦を強いられた。

 京セラはカリフォルニア州、シャープはテネシー州、そして旧三洋電機(現パナソニック)はオレゴン州を拠点に、2010年前後に米国内で生産事業に乗り出したものの、いずれも最終的に撤退を余儀なくされた。当時、中国などからの安価な太陽電池製品の大量流入により、米国内で生産事業の収益性が悪化し、次々と生産から撤退、または生産会社が破綻に追い込まれた。

 パナソニックも、サンナジーカリフォルニアと同様、2018年に米国にあった、太陽電池セル用インゴットとウエハ工場の生産設備がオークションに出された。同社子会社のエコソリューション・ソーラーアメリカがオレゴン州で運営していた設備だ。

 米国でのパネル組立事業は、日本メーカーのみならず、中国メーカーですら撤退に追い込まれるほど、厳しい競争環境にあるといえそうだ。太陽光発電市場に関するリサーチ・コンサルティング会社である米SPV マーケットリサーチ(SPV Market Research)の最新レポート「ソーラーフレア(Solar Flare)」によると、2021年10月時点で、世界における太陽光パネルの組立・生産能力の実に61%を中国が占め、まさに独り勝ちの状況だ。ただ、順位だけで見ると、米国は3%と、韓国と同位で、世界で5位に入っている。