過剰設置で蓄電池は削減
この同じシナリオ下で、太陽光発電を「オプティマル(最上・最適)」レベルで「設置し過ぎる」ことでコストを低減できるだろうか? 前のシナリオで導入した66GWの2.6倍となる174GWを過剰に設置し、大規模な出力抑制をかけると、電力貯蔵の必要容量が大幅に減少できる。実際、蓄電池の容量は4時間分(容量719GWh)まで小さくなっている。
このシナリオのLCOEは「26.9セント/kWh」と、大幅に発電コストが下がっている。つまり、全ての太陽光発電を電力貯蔵に充放電するより、太陽光発電を過剰に設置し、出力抑制をオプティマルレベルで実施するほうが、 もっともコスト的に効率がよいという結果になる。ちなみに、総発電量に対する出力抑制率は約60%にもなる(図5)。
次は、前回のシナリオ(太陽光のみで過剰・2025年テクノロジー低い)で、テクノロジー発展度を、「2050年に高い」に変えてみると、LCOEが70%削減され、「7.9セント/kWh」になる。
今度は、このシナリオ(太陽光のみで過剰・2050年テクノロジー高い)のうち、発電設備を「太陽光」から「風力」に変えたケースを見てみよう。分析データによると風力発電は太陽光と全く反対の季節性を示していて、冬季には発電量が「過剰」となるが、夏季には大きな不足が生じる。
風力に変えたシナリオ(風力のみで過剰・2050年テクノロジー高い)だと、風力の過剰設置によって夏季の長期供給不足を回避できる。このシナリオで導入する風力発電は73GWで、大容量蓄電池によって出力抑制をなくした「風力のみ」ケース(図2の表になし)に比べて2.7倍の設置量となる。過剰設置に出力抑制を付け加えることで、LCOEは、太陽光発電の設置過剰シナリオに比べ86%低い「6.2セント/kWh」になる。このシナリオで必要な電力貯蔵は3時間(容量239GWh)となっている。