メガソーラーの番人、先進的O&Mの現場

発光でカラスに対抗、「包括委託」の草刈りが奏功、岡山の山あいの太陽光

牛舎に集まるカラスが26枚のパネルを割る

2019/06/21 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 岡山県久米郡美咲町の山あいに、太陽光パネルの出力が約2.37MW、連系出力が1.98MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「PVNext EBH 美咲町発電所」がある(図1)。

図1●中央の区画の上側に見える白い屋根が牛舎
(出所:エンバイオ・ホールディングス)
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 事業主体は、特定目的会社(SPC)のヴェガ・ソーラー合同会社で、エンバイオ・ホールディングスが全株を所有している。

 ネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ケ根市)と共同で開発し、同社もSPCに出資していた。固定価格買取制度(FIT)による売電単価は40円/kWh(税抜き)で、2015年9月に売電を開始した後、2018年3月に、エンバイオがネクストエナジーの持ち分を買い取った。

 その後、2019年に入り、敷地内の空き地に、太陽光パネル出力が97kW、PCS出力が49.5kWの低圧配電線に連系する発電所も設置した(図2)。この低圧太陽光発電所の売電単価は18円/kWhとなっている。

図2●売電単価が18円/kWhでも、事業が十分に成立する場所はあるという
(出所:日経BP)
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 このメガソーラーでは、売電を開始してから、太陽光パネルのカバーガラスが度々割れることに悩まされてきた。これまでに累計で26枚の太陽光パネルが割れ、交換してきた。

 太陽光パネルのカバーガラスが頻繁に割れる原因は、はっきりしていた。カラスが石をくわえて飛来し、太陽光パネル上空から石を落とすことだった。

 この発電所に、カラスが多く飛んでくる理由は、北隣りに牛舎が立地していることが大きい。国内各地の多くの牛舎では、カラスによる被害が深刻になっている。

 カラスは、牛のエサを目当てに、牛舎に集まってくる。エサを食べるだけでなく、エサの中にフンを落としていくため、牛が病気にかかる原因ともなっている。そればかりでなく、牛の血管をつついて出血死に至ったり、牛の背中をクチバシでつついて穴を開け、生きている牛の肉を食べたりする被害も報告されている。

 今回のメガソーラーでも、牛舎に近い北側の区画に、カラスが止まっていることが多かった。連系点との間を結ぶ高圧配電線は、北端に架設されており、この電線もカラスの格好の休み場となっていた。

 北側、南西側、東側という三つの区画のうち、太陽光パネルのカバーガラスが割れた枚数が多いのも、北側の区画だった(図3)。

図3●太陽光パネルの割れの発生履歴
(出所:エンバイオ・ホールディングス)
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 累計26枚のうち、半分の13枚が北側の区画のパネルだった。東側で割れた7枚も、すべて北寄りの場所となっている。南西側は4枚にとどまっている。

 牛舎が試してきたカラス対策には、限界があった。スピーカーを使って、カラスが嫌がる音を鳴らすという手法だった。

 カラスが一時的に飛び去っても、その効果を継続させることが難しかった。しばらくすると、スピーカーが発する音の種類やタイミング、パターンなどにカラスが慣れてしまい、舞い戻ってくる。音やタイミング、パターンなどを変えても、いずれ慣れるため、限界があった。

 そこで、メガソーラー側で、新たなカラス対策を試した。導入したのは、東神電気(大阪市淀川区)製の「ビー・ビー・フラッシュ」である(関連コラム)。

試用期間を終えたら、また割れる

 「ビー・ビー・フラッシュ」は、架台の隅、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の高所部に取り付ける。上空に向けて光を発するLEDライトを備えている。元々、電柱での活用を想定して開発された、カラスの営巣防止装置である。

 日中、定期的にさまざまなパターンのフラッシュ光を、カラスが嫌がるようにアレイ上空に向けて、ランダムに発する(図4)。この機器は、太陽電池を備えており、専用の外部電源は要らない。小型・軽量で、比較的容易に取り付けられる。

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図4●架台の隅に取り付け、さまざまなパターンで上空に発光
(出所:日経BP)

 このメガソーラーでは、2017年5月から10月にかけて、メーカーから機器を無償で借りる機会があり、まず効果を試めすために、5台を設置した。

 機器を取り付けた後、石落としで割れる枚数は、若干、減った印象を受けたが、その時点では、購入を決めるほどの明らかな予防効果は実感できなかったという。結局、無償の試用期間を終えた後、機器を架台から取り外して返却した。

 すると、太陽光パネルが割れることが、再び増えてきた。ここに至り、機器の効果をようやく実感することになり、購入を決めた。

 試用期間中の5台の2倍となる、10台を購入した。2018年6月に設置すると、太陽光パネルが割れるペースが、年に1枚程度に下がった。

 「ビー・ビー・フラッシュ」によるフラッシュ光は、カラスにとって、スズメバチのように見えるように工夫したものとなっている。カラスが、強い瞬発性の光や、スズメバチの動きのようにランダムに変化する光を苦手とする性質を利用する。

 タイミングや強弱を変えながら光を発することで、カラスが警戒し続け、慣れないように工夫している。日射量によっても、発光が変わる。付属の太陽電池の出力変化によってキャパシタ内の蓄電量が変わることで、光量が変化する。

 ランダムな発光を支えるLEDは、第1世代品の1個から、第2世代品では2個、第3世代品では4個に増やし、カラスがより慣れにくく、効果の高い発光になった。このメガソーラーで試用したのは第2世代品、その後、購入したのは第3世代品である。

草刈りは「回数」ではなく「包括」で委託

 雑草の伸びも、予想を大きく超えていた。雑草が「伸びる」というよりも、「生い茂る」といった方がふさわしいほどという。

 エンバイオにとって初めて稼働した太陽光発電所で、雑草対策も手探りだった。発電所運用の実際を知るため、まず自分たちで体験し、適切な対応策を模索していく方針で、最初は園芸用のハサミで切ることからはじめたという。草刈りのために2泊したこともあった。

 当然ながら、広い敷地内をこうした手法だけで対処することは難しい。2年目以降は外部の企業に委託することにした。そこでも、試行錯誤があった。

 現在は、包括契約を結んで委託している。刈る時期や回数などは決めず、適切に刈って雑草を一定以下の状態に管理することだけを求め、一定額を支払う(図5)。委託先のユナイテッド・ソリューション(広島市)には、3年間は継続して委託する意向を伝えている。

図5●取材時にも草刈りをしていた
(出所:日経BP)
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 エンバイオによると、長期的な契約を前提にすることで、委託先が独自に工夫するなど、お互いにとって包括契約の利点を生かせるという。

 例えば、敷地内には、クローバーが根付き、高さ20cm程度に伸びている場所がある(図6)。ユナイテッド・ソリューションが自発的に植えたもので、クローバーの効果で雑草が減れば、その分、同社の作業が減ることになる。

図6●根付いたクローバー
(出所:日経BP)
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 エンバイオが求めているのは、除草回数ではないため、カバープランツ(被覆植物)の植栽などの工夫で草刈り作業を減らせれば、自社の利益が増加する。メガソーラー運用にとっても、草刈り回数の減少は理想的としている。

 この発電所の草刈り作業で留意しなければならないのは、電線の損傷である。電線を地中に埋設せず、地上などを這わせる設計としたからだ。雑草が生い茂げると電線が隠れて見えにくくなる。このような場所で、刈り払い機を使い、電線を切断してしまう事故は、各地の太陽光発電所で起きている。

 そこで、電線の損傷に留意すべき場所では、旗などの目印を立てている。

 雨水の流れ道ができやすい場所があることも課題となっている(図7)。地面を削るだけでなく、土が流れ出ることで、基礎を支える地耐力が下がるリスクもある。現在は、部分的に、板などで柵を設けたり、土嚢を敷き詰めたりすることで防止している。今後、樹脂製シートを使った新たな排水対策の採用も検討している。

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図7●柵と土嚢で雨水の通り道ができるのを防いでいる
(出所:日経BP)
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