福島県の山あいに、特別高圧送電線に連系しているメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある。2020年に売電を開始したばかりで、初めての冬を迎えた。
このメガソーラーでは、太陽光パネルに雪が降り積もると、すぐに雪を吹き飛ばしている(図1、動画1)。この作業によって、積雪地域の太陽光発電所で多く見られる、太陽光パネルの上が雪で覆われているような状況はあまり生じない。
このメガソーラーの発電事業者は、東北地方の南部とはいえ、積雪地に立地することから、太陽光パネルの設置角や設置の高さという設備上の対策だけでなく、日々の除雪による積雪対策が必要だと考えていた。
このように、運転開始前からO&M(運用・保守)の内容に除雪を組み込んでいるメガソーラーは珍しい。
一般的に、多くのメガソーラーでは、太陽光パネルの傾斜や架台の高さという設備設計で積雪対策を講じるものの、実際に積もった雪は自然にパネルから滑り落ちたり溶けたりするのに任せ、その間の発電量の減少は仕方がないという運用をしている。
このような発電所では、積雪による荷重によって、太陽光パネルや架台が損壊するという重大なトラブルが起き、その後、除雪に着手することも多い。
福島の山あいのメガソーラーにおける除雪の作業は、SGソリューション(東京都荒川区)が担当している。
同社は、北海道や北陸の豪雪地のメガソーラーにおける除雪の経験が豊富にあり(関連コラム)、太陽光パネルに積もった雪を当日から夜間に吹き飛ばすことによって、翌朝から日射をフルに生かした発電を可能にする管理を提唱している。福島のメガソーラーでも、この吹き飛ばす手法を採用している。
翌朝の日の出の時間から、太陽光パネルに雪が積もっていない状況を実現するために(図2)、主に夜のうちにパネルから雪を吹き飛ばしている。
「太陽光パネルに積もった雪を吹き飛ばす」という除雪手法は、朝からフルに発電できる、という売電ロスの最小化の点だけでなく、パネルや架台に過大な荷重がかかるのを防ぐという、設備の安全性や長期信頼性を損なう要素を減らす利点もある。いずれの利点も、「予防保全」の観点が強い。
同社では、除雪によって売電額が増えた分の中から、一定の比率を対価として受け取る仕組みを理想としている。これによって、発電事業者側は「実質的に新たな出費がゼロでありながら、売電額を増やせる」ことになる。
ただし、現状では、こうしたサービス対価の形態で除雪を受託した例はないという。しかし、O&Mに関して、こうした予防保全を重視して、本来の発電能力をフルに発揮させる手法を目指す動きがあることから、今後、同社の提案する料金形態でサービスを提供するメガソーラーも出てくると予想される。