太陽光発電所における理想的な点検とは、どのような姿だろうか。発電所を構成するすべての施設や設備の状態が、日常的に自動で点検されていて、その状態を遠隔で監視でき、異常があれば通知されるような仕組みはどうだろう。点検担当者が現地に出向いて作業する回数や手間は最小化できるはずだ。
設備によっては、すでに部分的に実現できている。例えば、パワーコンディショナー(PCS)の稼働状況は遠隔で確認できる。停止すれば通知されるのが当たり前になっている。このほか、発電量を遠隔監視するシステムも一般的だ。
加えて、とくに点検という観点では、例えば、太陽光パネルの異常、電線の異常などが、自動で点検できれば望ましい。
こうした直流回路内の異常は、現在では、接続箱の入力端子を通じて、ストリング(太陽光パネルを接続している単位)ごとの状態を調べて、異常箇所を含むストリングをみつけ、その後、そのストリングを構成している太陽光パネルと電線をしらみつぶしに調べ、異常箇所を特定する手法がとられている。手間とノウハウが必要で、誰でも効率的にできる点検からはほど遠い。
ドローン(無人小型飛行体)で空撮した太陽光パネルの熱分布画像から、異常のあるパネルを見つける手法は、この点検の効率化に大きく寄与している。しかし、季節や気象条件などによって一時的に異常を示すような状態まで把握できない。
米国では、太陽光パネル単位、または2枚ごとに専用の端子を取り付け、パネルや電線の状態が正常でない限り、送電を止めるシステムが普及している。火災防止という安全面を主眼にした仕組みということもあり、異常の把握という面では十分ではない。
もし、接続箱の入力端子を通じて、ストリングごとに太陽光パネルや電線の状態を日常的に自動で点検できれば、点検作業の人手や負担を軽減できる。ノウハウを多く持たない担当者でも、点検に従事しやすくなる利点もある。異常のあるストリングの送電を止める機能も付加できれば、より安全性を高めた発電設備になる。
こうした直流回路の点検の無人化・自動化に向けた開発や実証実験に、太陽光パネルなどの点検装置で知られるアイテス(滋賀県野洲市)が取り組んでいる(図1)。実証実験は東北電力と共同で実施している。経済産業省が進めている「スマート保安」を具体化する取り組みの1つといえる。