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無人・自動で日常的に直流回路を点検、太陽光のスマート保安技術

アイテスが開発、屋根上向けで東北電力と実証

2021/05/27 06:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 太陽光発電所における理想的な点検とは、どのような姿だろうか。発電所を構成するすべての施設や設備の状態が、日常的に自動で点検されていて、その状態を遠隔で監視でき、異常があれば通知されるような仕組みはどうだろう。点検担当者が現地に出向いて作業する回数や手間は最小化できるはずだ。

 設備によっては、すでに部分的に実現できている。例えば、パワーコンディショナー(PCS)の稼働状況は遠隔で確認できる。停止すれば通知されるのが当たり前になっている。このほか、発電量を遠隔監視するシステムも一般的だ。

 加えて、とくに点検という観点では、例えば、太陽光パネルの異常、電線の異常などが、自動で点検できれば望ましい。

 こうした直流回路内の異常は、現在では、接続箱の入力端子を通じて、ストリング(太陽光パネルを接続している単位)ごとの状態を調べて、異常箇所を含むストリングをみつけ、その後、そのストリングを構成している太陽光パネルと電線をしらみつぶしに調べ、異常箇所を特定する手法がとられている。手間とノウハウが必要で、誰でも効率的にできる点検からはほど遠い。

 ドローン(無人小型飛行体)で空撮した太陽光パネルの熱分布画像から、異常のあるパネルを見つける手法は、この点検の効率化に大きく寄与している。しかし、季節や気象条件などによって一時的に異常を示すような状態まで把握できない。

 米国では、太陽光パネル単位、または2枚ごとに専用の端子を取り付け、パネルや電線の状態が正常でない限り、送電を止めるシステムが普及している。火災防止という安全面を主眼にした仕組みということもあり、異常の把握という面では十分ではない。

 もし、接続箱の入力端子を通じて、ストリングごとに太陽光パネルや電線の状態を日常的に自動で点検できれば、点検作業の人手や負担を軽減できる。ノウハウを多く持たない担当者でも、点検に従事しやすくなる利点もある。異常のあるストリングの送電を止める機能も付加できれば、より安全性を高めた発電設備になる。

 こうした直流回路の点検の無人化・自動化に向けた開発や実証実験に、太陽光パネルなどの点検装置で知られるアイテス(滋賀県野洲市)が取り組んでいる(図1)。実証実験は東北電力と共同で実施している。経済産業省が進めている「スマート保安」を具体化する取り組みの1つといえる。

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図1●日常的に無人・自動で点検する
図1●日常的に無人・自動で点検する
(出所:アイテス)
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 アイテスでは、最初のターゲットを屋根上太陽光としている。野立て太陽光に比べて、立地制約もあって適切に点検されていないことが多い。

 太陽光パネルが屋根材の直上に固定され、その下に電線が敷設されているために、パネルの裏面や電線の状態を簡単に確認できないことも大きい。そもそも、住宅太陽光では、所有者に点検の意識が薄い。その分、自動点検システムを普及させる意義が大きい。

 すでに住宅太陽光については、消費者庁が2019年1月、火災などに関する報告書を公開し、経済産業大臣と消費者庁長官に対する「意見」も公表している(関連コラム1:「住宅太陽光の火災事故はパネルの不良にも起因」、同コラム2:不良パネルは、こうして発火・延焼した!)。

 関連製品や施工に関する内容とともに、「バイパス回路の常時通電や断線といった異常な状態を検知して使用者に警告する機能を付加すること」「安全性の向上と点検コストの低減に寄与する遠隔監視システムを開発すること」という、遠隔による点検の必要性を指摘する内容が含まれている。

 アイテスの開発は、この要求に応えるシステムでもある。

 もう1つ、屋根上太陽光の点検で喫緊の課題となっているのが、いわゆる「第三者所有モデル」の設備という。

 建物や住宅の所有者が屋根上を貸し、そこに第三者が太陽光を設置し、電力供給契約(PPA)に基づいて、発電電力を住人に提供する仕組みである。

 この場合、発電事業者は、他者の建物のために立ち入りに制約がある。安全上の懸念や、近隣との関係、さらに建物内外に関する情報漏洩のリスクが関係することもある。これが、屋根上の太陽光発電設備の点検を、さらに難しくしている。

 自動点検システムが実現できれば、こうした屋根上太陽光の課題の多くは解決される。安全面の向上はもちろん、発電ロスの削減、点検コストや手間も大幅に削減できる。アイテスでは、このシステムによって「予知保全」が可能になると強調する。

 異常の兆候から、早期に適切な対策を講じることで、突発的な発電停止や復旧対応が少なくなる一方、過剰な点検や点検担当者の人件費も抑えられるとみている。

発電を止めず、夜間に点検

 アイテスが開発している自動点検システムは、無人・自動で人手を要さないだけでなく、発電を止めずに点検する。この利点も大きい。

 既存の手法では、接続箱のスイッチを使って、点検するストリングの発電を止める必要がある。アイテスの自動点検システムでは、発電を止める必要のない夜間に点検する。発電ロスがない上、スイッチ開閉に必要なシステムが不要で、故障も減るだろう。

 発見できる異常として、まず施工不良や、人手による点検後の復旧作業の不良がある。「接続箱の端子へのPN極の接続が逆」「スイッチを開いて送電を復旧することを忘れた」「太陽光パネルの直列接続の枚数を間違える」といった異常である(図2)。

図2●点検できる項目
図2●点検できる項目
(出所:アイテス)
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 ストリング内での断線や、何らかの異常で過熱しているトラブルも発見できる。

 太陽光パネルの異常も発見できる。セル(発電素子)同士を結ぶ回路の異常のほか、ジャンクションボックス内のバイパス回路の開放状態や短絡、断線などを発見できる。これらは、消費者庁が重視し、経産省に指摘した内容に含まれている。これを無人・自動で日常的に点検できる意義は大きい。

 さらに、ストリングごとの絶縁抵抗も自動点検で測定できないか、模索している。定期点検に含まれている項目でもあり、もし実現してその結果を判断基準に採用できれば、波及効果がさらに大きくなる。

 アイテスによると、同社が開発している自動点検システムでは、接続箱を介する場合は絶縁抵抗を測定できる。しかし、接続箱を介さない、小型のパワーコンディショナー(PCS)を採用している場合、一部の機種では、現状では測定が難しいという。

 毎晩、自動で計測したデータは、クラウドコンピューティング上に送信する。このデータをアイテスの診断アルゴリズムで解析して太陽光の健全性を診断し、異常の兆候を早期に発見し、管理担当者に通知する。

 東北電力と共同で実証しているのは、東日本大震災の被災経験で切実さが他の地域と異なる事情もあり、開発の方向性も一致していたためとしている。

 試作機は、接続箱内に組み込んでいる(図3)。気温、積雪、降雨などの気象データは外部から購入し、これにストリング内の日々の点検のデータを組み合わせて診断している。

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図3●実証の様子
図3●実証の様子
下の2枚は、頻繁にバイパス回路が作動しているパネルが焦げていた例(出所:アイテス)
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 例えば、バイパス回路の作動状況の把握がある。ほとんど作動しない正常な太陽光パネル(図3の「サイトB」のB-1)もあれば、時々作動するパネル(同、B-2)、頻繁に作動しているパネルがあった(同、B-3)。

 バイパス回路が頻繁に作動するパネルは、焦げていた。時々作動するパネルは、特定の条件下だけ異常が起きる。その時以外は正常に発電している。これは異常が生じる兆候といえる。

 こうした状況は、日常的に点検しないと把握できないという。例えば、ドローンを使った点検では、その日時の状況次第で結果が変わる。

 アイテスでは、こうしたデータの活用として、O&Mサービス会社への情報提供や、詳細な点検手法を助言するといったサービスも展開できるとしている。