メガソーラーの番人、先進的O&Mの現場

自動分析で「季節性のトラブル」も発見、対策の費用対効果まで提示

オリックスの予防保全型O&Mサービスを支える

2021/06/11 18:08
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 オリックスグループで太陽光発電所のアセットマネジメント(AM)やO&M(運用・保守)関連サービスを手掛ける、オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント(OREM:東京都江東区)は、グループ外の企業による太陽光発電所にも、積極的にサービスを提供していく。

 予防保全型のO&Mサービスを特徴とし、設備の故障となって顕在化する前に、売電ロスの要因を解消することを目指す。発電事業者にとっては、売電額の増加分(なりゆき運用時と比較した売電収入改善効果)によってサービス費用が相殺され、長期的に事業性が向上することになる(関連コラム:予防保全を徹底、理想は「変動要因は気象のみ」)。

 こうした予防保全型のO&Mサービスを支える手法の1つが、遠隔監視とその分析を融合したシステムである。OREMでは、「モニタリング・AIデータ解析サービス」と称している。

 国内の太陽光発電所で一般的に使われている遠隔監視システムは、発電量や日射量、気温などのデータをリアルタイムで把握するものである。パワーコンディショナー(PCS)の故障や安全機能の作動などによる発電停止なども通知される。

 OREMが使っているシステムではそれに加え、遠隔監視システムで収集したデータをソフトウェアが自動で分析し、発電所のさまざまな状態を定量化する。

 例えば、発電設備の性能の低下、何らかの異常が原因とみられる状況を検知し、その性能の低下や異常を修復した場合のコストまで表示する。故障にまでは至っていないが、その兆候を把握して警報し、表示できる。

 このシステムを使って、予防保全型のO&Mサービスを効率的に実現しているという。

 ソフトウェアは、シンガポールのEnvision Digital International社の製品を採用している(関連ニュース)。

 ただし、そのまま採用しているのではなく、異常やその予兆を示している場所の原因別の分類や、その異常による売電ロス、その異常を修復した場合のコストと回収に要する期間などを分析して表示する機能などを追加している。

 ソフトウェアがいかに優れていても、担当者が使いこなせなければ、効果は薄れてしまう。そこでも工夫がある。必要な情報だけに絞って簡単に表示できるうえ、グラフィカルで見やすい(図1)。

クリックすると拡大した画像が開きます
クリックすると拡大した画像が開きます
図1●立場や知識が異なる関係者の間でも認識を共有しやすい
図1●立場や知識が異なる関係者の間でも認識を共有しやすい
下の図の右は、PCSの稼働率。接続されている太陽光パネルの枚数差の要因を除外した、PCSごとの稼働率の違いも表示する(出所:オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント)
クリックすると拡大した画像が開きます

 O&Mの「担当者」とひと言で言っても、本社にいるのか、発電所近くの拠点に駐在しているのかで役割が異なる。前者の担当者は、全体で共通して必要な業務や作業を管理する役割が大きいのに対し、後者では、現地での日々の作業が中心になる。

 さらに、発電設備のメーカーや、EPC(設計・調達・施工)サービス企業、損害保険会社なども「担当者」に含まれることもある。

 こうした立場や状況、知識の水準などが異なる関係者同士で協議する場合ほど、定量化してひと目でわかりやすく表示できるシステムが威力を発揮するという。

 例えば、発電所ごとの基本的な状況を把握するための表示画面では、リアルタイムの日射量や気温、発電量、天候状況から予想される発電量との差、PCSの稼働率、その日の合計発電量、売電額、稼働率のほか、「接続されている太陽光パネルの枚数差の要因を除外した、PCSごとの稼働率の違い」まで示される。

 発電所内のより詳しい状況は、太陽光パネルのレイアウト画面から把握できる(図2)。異常のある場所については、あらかじめ警報が送信されている上に、この画面で目立つ色で表示されるので、すぐにわかる。検討の場でも、現地での作業でも、探す手間が要らないという。

クリックすると拡大した画像が開きます
クリックすると拡大した画像が開きます
クリックすると拡大した画像が開きます
図2●発電所内の異常の位置と状況がひと目でわかる
図2●発電所内の異常の位置と状況がひと目でわかる
上から2枚目は、ストリングごとの電流の状況。3枚目は、特定のPCSの出力の状況と、原因別に色分けされたロスの状況。4枚目も、特定のPCSの入出力の電流と電圧の状況(出所:オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント)
クリックすると拡大した画像が開きます

 発電量の増減に関連する要因に関しては、その影響度を、要因別に示せるので、例えば、太陽光パネルを洗浄した後の効果を、似たような気象状況の日のデータと比べて、改善効果を把握しやすくするといった使い方もできる。

 こうした分析は、人海戦術的な手法で算出できるが、自動化していることで、手間と時間、コストに大きな違いが生じている。

 その先の「異常や故障、その予兆への対応と、その費用対効果の表示については、他社で実現できている例はないのではないか」としている。

 売電ロスの要因を15種類に分けて、損失額への影響を把握する。そして、一定のしきい値を設定した上で、その要因を解消する対策が、そのしきい値に対して経済的に見合うか、見合わないかを選別する(図3)。これも自動で分析・表示される。

図3●自動分析によって異常とそれによる売電ロス、修復に要する費用などが表示
図3●自動分析によって異常とそれによる売電ロス、修復に要する費用などが表示
中央が金額の表示。左上が「現在の売電額」。その右下が「一定のしきい値に対して、経済的に見合う対策によって回復する売電ロス額」で、その右上が「その対策を講じた後に想定される売電額」。その左下は、修復できないことはないが「一定のしきい値に対して、経済的に見合わない対策」によって回復できる売電ロス額。その右上が、この措置を講じた後に想定される売電額。下の横棒のグラフは、この売電ロスの要因を15種類に分類し、必要な対策の経済性とともに表示したもの(出所:オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント)
クリックすると拡大した画像が開きます

 そして、「現在の売電額」と、「一定のしきい値に対して、経済的に見合う対策によって回復する売電ロス額」や「その対策を講じた後に想定される売電額」を表示する。

 修復できないことはないが、「一定のしきい値に対して、経済的に見合わない対策」になる場合がある。これについても、その対策によって回復する売電ロス額、その対策を講じた後に想定される売電額を表示できる。

 当然ながら、「しきい値」を変えると評価が変わる。洗浄の効果などは、このようにしきい値を変えながら検討することがある。洗浄に要する費用の回収期間の設定や、売電収入を年間100万円ロスしている要因となっているならば、80万円以内で可能な洗浄作業に絞るといった検討となる。

 樹木による影が売電ロスを招いているならば、この売電ロスが年間40万円で、木を切るコストが100万円だった場合、約2.4年で回収できるといった具合である。

 この機能によって、対策ごとの費用対効果を把握できるだけでなく、現地のO&M担当者にとっては、優先的に取り組む内容を効率的に絞り込める効果も大きい。

 異常の自動分析機能で、大きな効果を上げた例がある。力率制御への対応に伴う売電ロスだった(図4)。千葉県にある2カ所の太陽光発電所で生じていた。

クリックすると拡大した画像が開きます
クリックすると拡大した画像が開きます
図4●力率制御に関するPCSの設定ミスによる年間200万円の売電ロスを発見
図4●力率制御に関するPCSの設定ミスによる年間200万円の売電ロスを発見
上の図が、該当する発電所の対策を講じる前の状況。同じような条件の中の図の発電所に比べて、無効電力関連(VAR support)の売電ロスが過剰に多かった。PCSの設定を適切に改善することで、無効電力に関連する過剰な売電ロスが大幅に減った。下の図が無効電力関連のロスのみを抽出したもので、改善前の2019年(左)、2020年(中)と、改善後の2021年(右)の差が大きい(出所:オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント、一部、日経BPが加工)
クリックすると拡大した画像が開きます

 この2カ所の太陽光発電所では、電力会社から力率90%の条件が課されている。系統の電圧上昇を抑制するのが目的で、無効電力を系統側に送り込む制御を指す。

 例えば、PCSから500kWを系統に送電できる太陽光発電所で力率90%が指定されている場合、PCSの出力の制限が450kWになる。出力が450kWに達するまでは実質的に制限はかからず、450kW以上を出力できる日時に、450kW以上分の売電収入の機会を損失する。

 この2カ所の太陽光発電所では、自動分析の結果、力率の指定による無効電力に伴う売電ロスが、過剰に多いという指摘が警報で送られた。似たような条件の他の発電所と比べると、明らかに無効電力が原因の売電ロスが多かった。

 そこで、原因を調べると、PCSの設定に誤りがあることがわかった。力率に合わせつつも効率的に運転し、力率制御に伴う売電ロスを相対的に少なくするための機能の設定が、力率90%ではなく80%というより厳しい条件を想定した設定となっていた。

 春と秋の日射の特に良い日の数時間のみに生じていたロスで、この自動分析機能がなければ発見できなかったという。

 2020年12月に設定を変えた結果、2つの太陽光発電所で年間合計約200万円の売電ロスの解消につながった。