メガソーラーの番人、先進的O&Mの現場

工場の屋根上太陽光に多い「油汚れ」、洗浄後に発電量3倍も

脱炭素で設置が急増、洗浄コスト低下で費用対効果が向上

2021/08/04 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 今後の太陽光発電所の開発で有望な場所の1つが、工場の屋根上である。

 国の脱炭素宣言で企業に対する再生可能エネルギー利用の要請が高まっている中、元々ある程度の面積があり、比較的規模の大きな発電設備を設置しやすい。

 また、工場には日中にまとまった需要があり、自家消費や、第三者所有の太陽光発電設備から供給を受けた電力の多くを活用できる面からも、今後、急速に設置が増えてくるだろう。

 ただし、工場には、同じ屋根上でも、物流施設や商業施設にはない条件もある。それは、工場の生産プロセスや自家発電設備からの排気などによって、太陽光パネルが汚れやすい点である。工業地帯の場合、周辺にある他工場の排気などが汚れの原因となることもある。

 一般的な立地の太陽光発電所であれば、太陽光パネルの表面が一時的に土埃などに覆われても、いずれ雨が降って汚れが洗い流されることも多い。

 しかし、工場の排気などにともなう汚れは、雨では汚れが流れ落ちず、長期的に表面を覆って大きな発電ロスにつながっている場合が多い。

 こうした工場の屋根上で特有の汚れへの対策として、洗浄が有効な場合がある。洗浄の手法の進歩などによって作業のコストが下がってきており、汚れが酷いほど費用対効果が高まる可能性がある。

 今回は、食品工場における例を紹介する。高圧配電線に連系するメガソーラー(大規模太陽光発電所)で、屋根上に1500枚以上の太陽光パネルが並んでいる。

 現地では、本来は青く見えるはずの太陽光パネルの表面が、灰色っぽくくすんで汚れていた(図1)。

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図1●灰色にくすんでいた屋根上の太陽光パネル
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図1●灰色にくすんでいた屋根上の太陽光パネル
(出所:エネテク)

 洗浄は、太陽光発電所向けのO&M(運営・保守)サービスを手掛けるエネテク(愛知県小牧市)が担当した。

 エネテクでは、こうした汚れの洗浄には、ドイツのケルヒャー製の機種を使う場合が多い(関連コラム:急増する太陽光パネル洗浄の需要、ケルヒャーの部材が障壁を解消)。パネルの洗浄用に開発された部材を、高圧洗浄機に取り付けて洗う(動画)。

動画●ケルヒャーの機器を使う。他の屋根上太陽光発電所における例
(出所:エネテク)

 水を送り出す方法として高圧洗浄機を使うものの、通常の高圧洗浄のように、水圧を直接、汚れに当てて落とすという原理ではない。円盤状のブラシが回転しながらパネルの表面を洗っていく。

 太陽光パネル表面に触れているのは、この円盤状のブラシである。パネル表面にゆるやかに水を流しながら、ブラシを回転させて汚れを落とす。流しているのは通常の水ではなく、パネル用の洗浄液で、これもケルヒャーが供給している。決められた割合に希釈して使っている。

 人手で水を流しながらスポンジでこする手法を電動化した上、洗浄できる面積を広げて作業効率を高めた。洗浄の作業コストが下がった大きな要因となっている。

食品工場の油汚れで灰色にくすむ

 こうした洗浄の効果が高い太陽光発電所は、まず、近隣に太陽光パネルの表面を汚す物質の排出源があることである。もう1つは、パネルの設置角が小さいこと。

 屋根上に設置された太陽光パネルは、ほとんどの場合、設置角が小さい。このため、周囲から汚れの原因となる物質が排出されていれば、この2つの条件を満たしやすい。汚れによる発電量のロスが大きくなり、洗浄の効果が高まりやすい。

 エネテクによると、こうした環境にある太陽光パネルを洗うと、洗浄コスト以上の売電収入の増加が見込める場合が多い。同社の場合、洗浄の費用は、現地で水を調達できる場合、出力1MWあたり約80万円程度に設定している。

 太陽光パネルの洗浄の依頼は増えており、こうした費用対効果が認識されてきたこともあると見ている。定期的な洗浄の依頼も増えている。

 今回の場合、現地の状況から、食品工場の排煙が何らかの植物性の油を含んでおり、この油を含む汚れが太陽光パネルの表面に付着し、落ちにくい汚れとして残っていることが推察できた。

 まず、汚れている太陽光パネルの一部を洗浄し、洗浄していないパネルと発電量を比べてみた(図2)。比較するために、太陽光パネルを接続した回路(ストリング)ごとに洗い、洗っていない回路と発電量を比べた。

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図2●効果を把握するために、回路ごとに太陽光パネルを洗浄した。外観からも汚れの有無がわかりやすい
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図2●効果を把握するために、回路ごとに太陽光パネルを洗浄した。外観からも汚れの有無がわかりやすい
(出所:エネテク)

 すると、1ストリング当たりの出力が、洗浄していない場合の300W台から、洗浄した場合には1200W弱に増すなど、発電量に3倍近い差が生じた(図3)。この分だけロスしていたと考えられる。

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図3●洗浄の効果をその場で確認
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図3●洗浄の効果をその場で確認
パネルを洗ったストリング、洗っていないストリングを比べた(出所:エネテク)

 全体を洗浄し終えると、太陽光パネルの表面は、青色とガラスの輝きを取り戻し、カバーガラス上に青空と雲が映る状態に戻った(図4)。

図4●全体の洗浄後
図4●全体の洗浄後
(出所:エネテク)
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 このような発電所では、洗浄の費用対効果が高いという。