メガソーラーの番人、先進的O&Mの現場

「竹を粉砕し、地面に固める」新たな防草対策、ミドルソーラーでも検証

鉄塔の周辺や道路、公園などで実績

2022/05/12 10:22
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 千葉県千葉市若葉区に連系出力499.5kW、太陽光パネルの出力約748kWのいわゆるミドルソーラーがある(図1)。

図1●千葉市若葉区にあるミドルソーラー
図1●千葉市若葉区にあるミドルソーラー
(出所:エンバイオ・ホールディングス)
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 開発・運営しているのは、土壌汚染対策を手がけるエンバイオ・ホールディングス(エンバイオHD)である。元々、自社で所有していた土地を活用し、2021年4月に売電を開始した。

 このミドルソーラーでは、一般的な太陽光発電所で採用されてきた雑草対策とは異なる、さまざまな新たな手法の雑草対策が試みられている。

 それはこのミドルソーラーの立地による。敷地の北から西にかけて、竹が多く繁茂している。以前、この竹はなかった。急速に侵食してきて、気づいた時には竹林の隣になっていた。

 クローバーを植えたり、除草剤も数種、活用している。これらは従来の太陽光発電所でも採用されている。

 特徴的なのは、隣の竹林を生かした手法である。竹林は、里山が荒れると繁茂することが多く、伐採して燃やすと灰分が多くて焼却炉を傷めるなど、全国各地で対応が課題となっている。

 そこで、伐採した竹を燃やさず、粉砕して製造したチップを地面に敷き詰めて、雑草を防ぐという手法に取り組んでいる。

 竹の粉末には防草効果があるとされる。竹による侵食を防ぎつつ、雑草対策にもなれば一石二鳥になる。

 粉砕機を購入し、ミドルソーラーの敷地内に常備している(図2)。これを使って、刈った竹をその場で粉砕し、チップ化してミドルソーラーの敷地内に撒く。

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図2●ミドルソーラー内で竹を粉砕してチップ化
図2●ミドルソーラー内で竹を粉砕してチップ化
(出所:エンバイオ・ホールディングス)
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 並行して防草シートも試す。3種類の防草シートを試験的に敷設し、これと竹チップを併用する。紫外線への耐性がとくに弱く、製品寿命が短いシートの上に竹チップを敷き詰め、防草シートの寿命を延ばして費用対効果を高めることを期待している。

 また、竹の粉末を原料の1つとしている雑草対策もある。この手法に、ミドルソーラー内でチップ化した竹を使えれば、里山管理で処分に困る竹を使った新たな事業に広がる可能性もある。試験的にこの手法も実施している(図3)。

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図3●土と海水起源の固化材に竹の短繊維を混ぜ、水を使って固める「雑草アタック」
図3●土と海水起源の固化材に竹の短繊維を混ぜ、水を使って固める「雑草アタック」
ミドルソーラー内での試験の様子(上は施工直後、中は4カ月後)、下は主な成分 (出所:上はエンバイオ・ホールディングス、下は日本乾溜工業)
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 ミドルソーラーで試した、竹の粉末を原料の1つとしている雑草対策とは、土と海水起源の固化材に竹の短繊維を混ぜ、水を使って固める「雑草アタック」である。日本乾溜工業(福岡市東区)が販売している。

 セメント系などの材料を使わず、天然素材だけを使う。このことから、日本乾溜工業では相対的に環境負荷の少ない防草・簡易舗装の手法としている。

 舗装材としても機能するのは、海水中のにがり成分(酸化マグネシウム)を入れることで固化することによる。

 竹の短繊維は、補強材や結束材としての役割を担っている。土と海水起源の固化材だけでは固くなりすぎてしまい、しなやかさに欠け、割れやすくなる。そこで、竹の短繊維を混ぜることで、引っ張りや曲げといった荷重に強くしている。

 このミドルソーラーでは、材料の1つである竹の短繊維として、敷地内でチップ化したものを混ぜて使うことを想定している。

 作業は比較的、容易で、あらかじめ除草と整地をした場所に敷き均して、その上から水をまいて、転圧する(図4)。これによって固まり、その後は雑草を抑制するため除草の手間が不要になる。

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図4●整地した場所に材料を広げてならし(上)、水を撒いて転圧する(下)
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図4●整地した場所に材料を広げてならし(上)、水を撒いて転圧する(下)
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図4●整地した場所に材料を広げてならし(上)、水を撒いて転圧する(下)
(出所:日本乾溜工業)

 透水性と保水性に優れており、ぬかるみ防止と土砂の流出防止になることも、太陽光発電所で使う利点となる。

 年月が経つとメンテナンスも必要で、補修用の部材も用意している。適切にメンテナンスすれば、15年程度は効果が持続するとしている。

 この手法は、日本乾溜工業が本拠を置く九州から広まり、道路や特別高圧送電線の鉄塔の周辺といった公共施設で多く採用されている(図5)。

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図5●一般道や高速道路(上)、鉄塔や鉄道の周辺(中)など、さまざまな場所で実績
図5●一般道や高速道路(上)、鉄塔や鉄道の周辺(中)など、さまざまな場所で実績
(出所:日本乾溜工業)
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 国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録されていることも、公共施設で広がっている理由の1つという。

 吉野ヶ里歴史公園(佐賀県神埼郡吉野ヶ里町・神埼市)で大規模に採用されたことで、国土交通省が管轄する各地の公園でも採用が広がっている(図6)。

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図6●吉野ヶ里歴史公園(上)、昭和記念公園(下)の施工例
図6●吉野ヶ里歴史公園(上)、昭和記念公園(下)の施工例
(出所:日本乾溜工業)
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 この工法は、平らに整地された場所向けに限定される。太陽光発電所の場合、凹凸を含む場所や法面などもある。

 法面向けには、同じ材料を斜面に吹き付ける手法を用意している。同社ではマグファイバー工法と呼んでいる(図7)。

図7●斜面に吹き付ける工法
図7●斜面に吹き付ける工法
(出所:日本乾溜工業)
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 千葉のミドルソーラーでは、雑草の抑制効果などは評価しつつも、コストが課題としている。採用がより広がることなどによるコスト削減効果が期待される。