特集

リモートワークで電子署名の導入を検討しています。注意点は?(page 4)

<第70回>太陽光発電コンサル会社で起きた電子契約に関する紛争の判例解説

2021/01/07 23:30
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
印刷用ページ

被告は「錯誤無効」を主張

 被告Y1は、本件コンサルティング契約は、本件準消費貸借契約及び本件連帯保証契約と表裏一体の関係にあるところ、本件コンサルティング契約には、原告が何らの制限なく自由に本件施設の売却の諾否を決定できる旨の条項(1条及び2条)、原告は同契約を解除しても債務不履行責任を負わない旨の条項(11条及び13条)及び同契約の有効期間を定める条項(12条)が設けられていたが、被告Y1は、被告太陽光コンサル会社の代表取締役として本件準消費貸借契約を締結し、個人として本件連帯保証契約を締結するに当たり、本件コンサルティング契約の上記各条項は存在しないものと信じていたとして、錯誤無効の主張をしました。

 この錯誤がなければ、被告太陽光コンサル会社が本件準消費貸借契約を締結することはなく、被告Y1が本件連帯保証契約を締結することはなかったのであるから、上記各契約の締結は、法律行為の要素に関する錯誤があったものとして無効である(民法95条)という主張です。

 これに対し、東京地裁判決は、「原告と被告太陽光コンサル会社との間で本件準消費貸借契約が、原告と被告Y1との間で本件連帯保証契約がそれぞれ締結された事実が認められ」、「また、本件準消費貸借契約と同様に、原告と被告太陽光コンサル会社との間で本件コンサルティング契約が締結された事実が認められるところ」「被告Y1は、本件資料に基づき、被告太陽光コンサル会社は本件施設の一括売却に関するコンサルティング業務を「非独占的・非排他的」に行う権利を得るにすぎず、原告が売却の決定権を有するという説明を受けた上、原告に対して被告Y2を本件準消費貸借契約についての連帯保証人に追加するよう求めており、その際、本件コンサルティング契約の内容について確認又は抗議をしたことを認めるに足りる証拠がないことに鑑みれば、被告Y1は、本件コンサルティング契約の内容を正しく理解した上で本件捺印申請書の決裁印欄に押印し、被告太陽光コンサル会社の実印を本件準消費貸借契約書に用いることを求めたものと認めるのが相当である。

 したがって、被告太陽光コンサル会社及び被告Y1の主張するように、仮に本件コンサルティング契約の内容が本件準消費貸借契約及び本件連帯保証契約を締結するに当たって重要な事項であったとしても、被告Y1が、本件コンサルティング契約の内容について錯誤に陥っていたとは認められないから、本件準消費貸借契約及び本件連帯保証契約が錯誤により無効となるとはいえない」と判示し、錯誤無効の主張は認めませんでした。

親子会社間でも契約締結は代表者の手で

 本判決は、数少ない電子契約に関する判例として有名です。

 電子署名を親会社が勝手に実施したという主張に対して、契約内容と矛盾した行動を取っていないとして、電子署名は、子会社の意思に基づき作成されたものであると認定しています。

 しかし、本件では原告が被告太陽光コンサル会社の実印を所持し、原告が捺印したり、原告が電子署名を被告太陽光コンサル会社として実施している点が、トラブルリスクが大きい点です。

 この電子署名については、手軽に実施できるメリットがあるものの、本判決にあるように、「無断でなされた」というトラブルも起きる可能性がありますので、慎重な取扱いをお願いしたいところです。

電子署名の比喩的なイメージ
(本文の事例とは関係ありません)
クリックすると拡大した画像が開きます
「Q&A」で、取り上げてほしい疑問、回答者の秋野弁護士に聞いてみたいテーマを募集しています。こちらにご記入下さい。
  • 記事ランキング