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隣地にある樹木の影響で発電量が減少、施工業者の責任は?

<第81回>日照遮蔽物による発電ロスの損害を算定した最新判例の解説

2022/01/25 05:00
匠総合法律事務所 弁護士秋野卓生・弁護士土屋秀晃
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予想発電量に達せず、投資家が提訴

 投資家向けにメガソーラー(大規模太陽光発電所)事業を展開する場合、投資家の関心は、年間でどの程度の売電利益を得ることができ、何年で投下資本を回収・利益を上げることができるか、という点にあると思われます。そのため、施工・販売業者において、予想発電量のシミュレーションを行い、売電額の予測を示して説明する場合があり、実際の発電量が予想発電量を下回ってしまうと、トラブルになる可能性があります。

 今回取り上げる裁判例(東京高裁令和3年9月8日判決、第1審・東京地裁令和2年12月17日判決)は、隣地にある樹木の日影の影響で、予想発電量を実現できなかったとして、投資家が、太陽光発電設備の施工業者(兼、販売業者)に対し、損害賠償を求めて訴訟を提起した事案です。

 本件の事案を見ていきましょう。

 本件の原告は、太陽光発電システムの施工・販売などを行う会社である被告から、投資目的で、産業用太陽光発電設備のうちの1区画を購入しました。契約前に被告が開催した投資家向けセミナーでは、発電開始から10年後までの毎年の予想発電量のシミュレーションが示されていました。

 また、被告は、発電開始後の1年間は被告が一定の発電量を保証する内容の契約を結んでおり、被告のセミナー担当者は、「実際の発電量が契約で保証される発電量に達しない事態はほとんど起こらないと思われる」、「達しない場合には太陽光パネルを増設して対応する」などと説明していました。

 ところが、2016年4月の発電開始後、実際の発電量が、予想発電量を25%程度下回っていることが判明しました。原告は、発電量が減少した原因が、隣地にある樹木群などにより太陽光パネルに日影が生じたことにあると主張し、被告に対して、日影の生じない適切な位置に太陽光パネルを設置する義務への違反を理由として、逸失利益などの損害賠償を請求しました。なお、訴訟が提起された後の2018年3月に、被告が隣地所有者の承諾を得て、問題の樹木群の伐採を完了しています。

太陽光パネルに木の影がかかった例(記事中の裁判とは関係ありません)
太陽光パネルに木の影がかかった例(記事中の裁判とは関係ありません)
(出所:日経BP)
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