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工事遅延により太陽光発電事業を断念、施工会社の法的責任は?(page 4)

<第71回>事業の断念後、損害賠償請求を巡る訴訟判決の解説

2021/02/04 17:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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地位買戻し契約でも損害

 結局、原告は、本件の太陽光発電事業を断念することとし、被告との間で経済産業省の設備認定を受けた発電事業者の地位及びa社から納入済みであった本件パネル4000枚を代金1億9000万円で購入する旨の契約を締結しました。

 東京地裁判決によれば、原告が「本件契約1」に基づく業務委託費として3000万円を、「本件契約2」に基づく本件地位の譲渡代金として3780万円を、「本件契約3」に基づく代金の一部として合計9328万3815円(架台費用2175万9623円、解体工事費等3672万円、着工金3480万4183円)を、それぞれ被告に支払ったこと、本件パネル売買契約に基づく本件パネル5800枚等の購入代金の一部としてa社に合計1億6691万4000円を支払ったことが認められますので、1億9000万円で地位を買い戻してもらったとしても、損害が残ります。

 この損害賠償を求めて原告は裁判を起こしました。

 被告は、地位買戻し契約を締結したのだから、黙示にトラブル解決の和解契約も締結したのだと主張していますが、東京地裁判決は、「原告は、本件契約1ないし3に基づき、被告及びa社に対して、合計3億円以上の金銭を支払っており、そこから本件地位買戻契約及び本件各土地売買契約において原告及びb社が被告から受け取る金額を控除しても、原告は本件契約1ないし3によって1億円以上の損失を発生させたものであるところ、このような多額の金額について、口頭で清算することは社会通念上考え難い。そして、被告代表者の供述は、上記両契約書の内容に照らし、信用することができない」として、黙示の和解契約の成立は否定しました。

工事遅延のトラブル防止の重要性

 今回の判例解説における教訓は、工事遅延のトラブルは、太陽光発電事業の断念という大きな損失に結びついてしまうリスクがある点です。

 工事業者が近隣住民対応をする中で工事遅延が発生するケース、台風などの災害に伴い、工事遅延が発生するケースなど、工事遅延のトラブルが多く発生する太陽光発電施設工事において、工事遅延が生じないように慎重な計画及び着実な材料調達、工事遂行、そして工事監理など、しっかりと体制を整えて臨みたいところです。

メガソーラー建設を巡る地域からの反対が目立っている
(出所:日経BP、画像はイメージで本文内容とは直接、関係しません)
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