特集

太陽光IDの譲渡「解除」を巡り紛争、契約書作成時のリスク想定に甘さ?

<第82回>太陽光発電事業で、権利の「譲渡人」による約定解除権の行使を認めた最新判例

2022/02/22 14:00
匠総合法律事務所 弁護士秋野卓生・弁護士角谷昌彦
印刷用ページ

「譲渡人」の側から契約解除を求める

 現在、わが国では、クリーンエネルギー戦略の下で、太陽光発電を含む再生可能エネルギー事業に関し、国の認定事業として、一定の管理を及ぼしつつ、併せて、事業者に対する補助を行うことで、再生可能エネルギー事業の拡大・普及を目指しています。

 一方で、太陽光発電事業は投資対象事業としての側面も強く、事業収益性に関して、一層シビアな検討が要求されるに至っています。

 具体的には、太陽光発電設備の設置場所となる土地の価格、同土地で太陽光発電事業を営む上で必要となる防災、環境保全措置などに要する費用を考慮した上で、事業の採算を確保できるか否か、という点の検討が不可欠となります。特に、本件のように、太陽光発電事業における認定事業者の前提となる権利の譲渡がなされた場合、当初の事業計画の主体(譲渡人)が想定した収支と譲受人が現実に直面した収支とが一致せず、紛争に発展する可能性があります。

 今回取り上げる裁判例(東京地方裁判所・令和3年9月13日判決)は、太陽光発電設備を用いた発電に関して、国の認定事業における設備IDに係る権利を譲渡する旨の契約を締結し、同設備IDに係る事業者名義が譲渡人から譲受人に変更されましたが、その後、譲渡人が、譲受人に対して、約定の解除条件が成就したと主張して、事業者名義の変更手続に必要な譲受人名義の事業譲渡証明書などの書類の引渡しを求めた、という事案です。

 事案の概要としては、譲渡人から譲受人に対して、認定事業者として太陽光発電事業を営む権利が譲渡された後、元々の権利所有者である「譲渡人」の側から、約定の解除条件成就を理由として、譲渡契約の解除を主張し、認定事業者たる地位を返還するように求めた、という大枠を想定して頂けると良いと思います。

 一般的に権利の譲渡を巡る紛争では、譲り受けた側が、想定外の事情を理由に解除を求めるという構図をイメージしますが、今回の事案では、権利を譲り渡した側が原告となって「解除」を主張したという点がポイントになります。

 本件の事案を時系列に沿って見ていきましょう。

図1●東京地方裁判所の正門
図1●東京地方裁判所の正門
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます
  • 記事ランキング