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新型コロナウイルスの影響による工期遅延は、「不可抗力」と言えますか?(page 3)

<第61回>「不可抗力」による工期遅延への対応と、今後のEPC契約の在り方

2020/03/09 05:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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これからのEPC契約では?

 一方、今後、新しくEPC(設計・調達・施工)契約を締結する案件に関しては、工期の定めをどのようにするか、という法的課題があります。

 今後、発注する太陽光発電関連の資材については、納期が全く読めない状況にありますので、工期の記載も「予定工期」とならざるを得ません。

 この「予定工期」の法的拘束力について、東京地裁による平成25年3月15日判決は、請負契約書上、完成時期について「平成18年11月末日予定」と記載されていた事案において、「本件請負契約書では完成時期が平成18年11月末日『予定』と記載されているだけであること、甲第120号証によれば、本件物件の工期は8カ月程度が妥当であることが認められるところ、仮に本件請負契約において工事の完成期限が平成18年11月30日と合意されたとすれば、原告は契約締結日から5カ月未満で工事を完成させなければならないことになってしまうことに照らせば、原告と被告が本件請負契約において平成18年11月30日という確定期限をもって完成期限を合意したとまでは認めることができない」と判示しました。

 上記新潟地裁長岡支部の平成12年3月30日判決の事案では、納期について「希望納期」という用語を用い、東京地裁平成25年3月15日判決は、「平成18年11月末日予定」と工期の記載がなされていました。

 このような確定工期の記載ではないケースにおいては、「予定工期」(努力義務)の合意と認められ、請負人が遅延損害の責任を負うか否かについては、ケースバイケースにて判断する傾向であることが確認できます。

 そして、「予定工期」が努力義務としての合意であった場合、最大限努力を行なったという事実が認定されれば、請負人は履行遅滞責任を負わない可能性があることが判例上確認できます。

 現在の新型コロナウイルスの影響による太陽光発電関連の資材などの納品時期が読めない状況下においては、EPC契約書の工期の記載を確定工期の記載とはせず、「予定工期」(努力義務)の記載とし、やむを得ない事情がある場合には、遅延損害のペナルティーを負わない工事請負契約書・契約約款への修正をアドバイスしています。

新型肺炎の世界的な感染拡大による世界経済の停滞が懸念される
(出所:ジョンズ・ホプキンズ大学のシステム科学工学センター)
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