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EPC契約を締結する前段階で、締結義務はあるのか?(page 5)

<第83回>太陽光事業で、EPC契約などの締結義務が否定された最新判例

2022/03/22 05:00
匠総合法律事務所 弁護士・秋野卓生、弁護士・丹羽響
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経験則からみて、不自然か否か

 次に、(イ)締結予定の請負契約の内容に関する協議状況についてですが、裁判所は、次のように判示しています。

 「本件確認書は、原告……と被告Y1(引用者注:被告代表社員)との間で、原告がEPCを担当するという話をしていたことを前提に作成されたものと認められる。しかし、原告代表者及び被告Y1の供述によっても、原告及び被告Y1との間で、EPC契約の具体的な内容等が協議された事実は認められず、被告茂原ソーラーパークが原告とEPC契約を締結してこれを原告に一括発注すること又は原告の提出した見積書によって発電設備設置工事を原告に発注することが、確定していたとまでは認められない」

 このように、裁判所としては、契約を締結する義務を生じさせるような場面では、抽象的に締結が予定されているというだけではなく、締結予定の契約内容について既に協議が実施されており、相当程度特定されているはずであると考えています。この点は、契約締結義務の有無が争点となった他の裁判例においても、同様の判断がなされており(前掲東京地裁・平成25年8月15日判決、東京地裁・平成18年2月13日判決等)、裁判所が特に重視している点と考えられます。

 なお、裁判所は、契約内容の特定に関連し、次のようにも判示して、原告の主張を前提とすると、契約内容が特定されていない状況は不自然であると指摘しています。

 「本件発電事業は、発電出力約50MWで、約1万5000世帯の電力を補う小型の火力発電所並みのものである……。そして、原告が平成29年11月22日に作成した予算見積りによれば、本件発電事業に係る工事代金は94億6598万4000円とされ……、相当大規模な工事になることが想定される。このような規模の工事について、EPC契約の具体的内容が何ら特定されていない段階で、被告茂原ソーラーパークが本件一括発注義務又は本件工事発注義務を負うことは考え難い」

 大規模な太陽光発電事業には大掛かりな工事が必要となるところ、そのような工事を発注するにあたっては、通常、契約内容が事前に特定されているはずであるという経験則から、原告の主張を退けています。ある文言を解釈するにあたっては、このような経験則が判断を左右することも珍しくありません。契約書などを作成する際には、経験則からみて不自然な状況か否かという点も考慮して、事後的にどのように判断され得るか、注意する必要があります。

 最後に、(ウ)本発電事業が実現する蓋然性について、裁判所は、次のように判示しています。

 「また、本件確認書が作成された平成26年2月28日当時は、本件事業予定地の取得が未了で、本件発電設備認定の保有者と事業予定地の権利者が一致しておらず、本件発電設備認定が取り消される可能性もあったこと……に照らしても、被告茂原ソーラーパークが、本件確認書の作成時点で、原告に対し、EPCの一括発注又は発電設備設置工事の発注を確約することは不自然である」

 この点は、契約内容が特定されていたとしても、別途問題になり得る点です。そもそも発電事業が実施されるか否か不透明な状況であれば、仮に、契約内容が特定されていたとしても、契約締結義務について合意することは考え難いという判断もあり得ます。

 太陽光発電事業では、権利の譲渡などに関連して、契約締結義務が定められることもあり得ますが、契約締結義務について合意する場合や同合意を検討する際には、上記のような観点から、明確な条項を規定することや契約内容について十分協議して、事後的な紛争に陥らないように、事前に予防することが望ましいといえます。

契約内容について事前に十分な協議を
契約内容について事前に十分な協議を
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