太陽光発電事業者のための法律Q&A

改正FITへの移行時に出力を間違って記入してしまいました…

<第62回>みなし申請の際の記載ミスが判明した場合の法的責任

2020/04/30 10:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生

「記載ミス」で売電単価が下がる?

 固定価格買取制度(FIT)の裏付けとなる、いわゆるFIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)は、平成28年(2016年)6月に改正されました。これを改正FIT法と呼び、それまでの「設備認定」は、これ以降、新制度では「事業認定」に衣替えし、系統接続契約の締結が認定の前提になりました。

 その際、稼働済みの案件に関しては、事業計画書の提出をもって「事業認定」に移行する形にしました。その手続きの過程で、設備の出力を間違って記載してしまい、たいへんに厄介なことになるケースが出てきました。

 例えば、平成25年に出力12kWで運転を開始した太陽光発電設備について、この事業計画書の提出から新たに記載を求められることとなった太陽電池に係る事項の記載欄の合計出力欄に間違えて30kWと記載して事業計画書を提出したとしましょう。

 明らかに誤記をしているわけですが、現在、この誤記を修正する手段が一般社団法人・太陽光発電協会JPEA代行申請センターに対する変更認定手続きしかありません。

 そして、この変更認定手続きにおいて合計出力の大幅な減少を伴う場合には、変更時の価格が適用されることとなり、売電価格が大幅に下がってしまうことになります。

 この誤記というべき事態により発生する経済的損失が大きいことから、見なし申請代行者と太陽光発電事業者との間でトラブルが生じかねない事態となっています(図1)。

図1●事業用太陽光発電所では、系統連系する出力(パワーコンディショナー出力)と太陽光パネル出力の2つの出力があり、混乱しやすい(写真はイメージで本文のケースと関係ありません)
(出所:日経BP)
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みなし認定申請での手続きミス

 平成28年度までに旧制度での認定を受けた者のうち、一定の条件を満たす場合に新制度での認定を受けたものとみなされることとなっています。この場合に、「受けたものとみなされる」認定を、新制度での新規認定と区別するために、「みなし認定」といいます。

 旧制度は設備についての認定でしたが、新制度では事業計画について認定することとなります。そのため、新制度での認定を受けたものとみなされた場合には、新制度の適用を受けるために、新制度での認定を受けたものとみなされた日から6カ月以内に事業計画を提出する必要がありました。

 この事業計画を提出する際に「太陽電池の合計出力」の記載が求められることとなり、認定上の発電設備の出力(連系する出力)と太陽光パネルの合計出力との記載が異なるという記載ミスが発生するケースが出てきています。

 当時は、慣れない手続きであったため、このような誤記が発生したものと推測されます(図2)。

図2●みなし認定申請の手続きを説明したパンフレットの一部
(出所:資源エネルギー庁)
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「変更手続き」に関する違和感

 「変更」は、決められた物事などを変えることを意味し、以前の状態が間違っているわけではないことを意味します。

 他方で、上記のような見なし申請の際に起きた、太陽光パネルの合計出力の誤記は、そもそも最初の合計出力の記載に誤りがあったのであり、この修正を求めたいというのが申請者の意図であり、「変更」を求めたいというものではありません。

改正FIT法が事業計画書の提出を求めた趣旨

 改正法9条3項1号から3号の基準は、以下のとおりです(図3)。

図3●改正法9条3項1号から3号の基準
(出所:筆者の資料を元に日経BP作成)
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 改正法9条3項1号、3号は、以上のように、「事業内容の適切性」「設備の適切性」を求めており、その具体的な内容について、経済産業省令で定めることとしています。また、改正法9条3項2号は、「事業実施の確実性」を求めています(図4)。

図4●認定制度の見直し・太陽光の未稼働案件に対する対応
(出所:再生可能エネルギーの導入促進に係る制度改革について・平成28年6月資源エネルギー庁)
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 要するに、未稼働案件が多く生じていたことから、事業計画書をきちんと提出させ、未稼働案件をなくすというのがそもそもの改正FIT法の趣旨です。

 太陽光パネルの合計出力の誤記は、改正FIT法が抑止しようとした未稼働案件ではなく、申請を行った者のヒューマンエラーですので、罰則的な取扱いをするのも理不尽な気がします。

誤記の法的性質

 例えば、戸籍に誤りがあることがわかり、これを訂正して欲しいと思う場合、役場で誤りを指摘して、もしそれが役場側のミスだった場合、市区町村長は法務局に訂正の許可を求め、その許可をもとに戸籍の内容を正します。誤りがごく軽微なものの場合は市区町村長の職権で訂正できます。

 これに対し、誤りの原因が役場側ではなく届出人または第三者によるものである場合、本人や親族など法律で定めた者が家庭裁判所に戸籍訂正の審判を求めます。戸籍訂正許可が下りたなら、許可が下りてから1カ月以内に審判書と届出書を役場に提出して、戸籍を訂正してもらいます。

 上記の手続きは、「訂正」であり、「変更」ではありません。

 また、民法95条に規定されている錯誤とは、表意者が無意識的に意思表示を誤り、その表示に対応する意思が欠けていることをいいます。

 勘違いをして太陽光パネルの合計出力の誤記をした場合、錯誤に該当するケースもあるでしょう。この場合には、民法95条に基づき、意思表示を取り消すことが可能です。

 私は、現状の「変更」の手続きしか存在しない点は、誤記の救済手段として不十分であると考えており、「訂正」の手続きが設けられるべきではないかと考えています(勿論、未稼働案件のごまかし手段としての訂正は認められません)。

誤記を「変更」せずに放置した場合

 認定事業者が認定計画に従って再生可能エネルギー発電事業を実施していないと認めるときは、経済産業大臣が改善命令を出すことができるようになります(改正法13条)。

 さらに、認定事業者が認定計画に従って再生可能エネルギー発電事業を行っていないとき、認定計画が改正法9条3項1号から4号までのいずれかに適合しなくなったとき、認定事業者が改善命令に違反した場合には、経済産業大臣は認定取消を行うことができます(改正法15条)。

 この認定取消の手続きに入った時に、認定事業者側は、太陽光パネルの合計出力の誤記であり悪気はない旨の主張をすることになろうかと思うのですが、その際に「情状酌量の余地」があるのかどうか、現段階では明白ではありません。

 しかし、発電設備の出力以上の売電をしているわけではないのですから、経済的損失を与えているわけではありません。私は、認定取消の手続きにおいてヒューマンンエラーである誤記をしていたにすぎない案件において、「認定取消」にするのは、ペナルティーとして重すぎると考えています。

ヒューマンエラーには柔軟な対応を

 現状の手続きは、電子申請という画一的な対応をする手続きにおいて効率的であると考えますが、ヒューマンエラーへの対応は、個別事情に即した柔軟な対応があっても良いのではないか、と考えます。

 上記誤記により、手続代行者が、みなし申請時のミスを債務不履行責任として追及され、変更後の売電価格との差額の賠償責任を負うとされるのは、あまりに手続代行者が可哀想だと思っており、手続き面の柔軟さでカバーして頂きたいと思います。

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