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太陽光設備の施工ミスで発電ロス、賠償額の算出方法は?(page 2)

<第85回>近時の裁判例解説を踏まえた具体的な相談事案への対応について

2022/05/24 05:00
匠総合法律事務所 弁護士・秋野卓生、弁護士・角谷昌彦
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施工ミスによって賠償すべき損害とは?

 工事の施工者は、注文者に対して、契約不適合責任(民法改正前の瑕疵担保責任に相当します)に基づいて、契約不適合(民法改正前の瑕疵に相当します)によって生じた損害を賠償する責任を負います。ここで、契約不適合によって生じた損害は、大別して、(1)契約不適合を是正するために必要となる費用と、(2)契約不適合が存在しなかった場合に得られたはずの利益(逸失利益)とに分けて整理することができます。

 本件では、未発電の原因となった配線施工について、既に是正工事が完了しているとのことですので、(1)の問題は解決済みとなります。ご相談を頂きました、未発電部分が存在したことによる実損分をどのように算出すべきであるかという点は、(2)の逸失利益の問題と整理されます。

裁判所は「逸失利益」を厳格に判断

 一般的に建築訴訟で逸失利益が問題となることが多い場合として、賃貸用の建物又は店舗用の建物に契約不適合が存在し、一定期間当該建物を賃貸できず、あるいは当該建物で営業できない場合を挙げることができます。

 このような場合、建物を使用できない期間の営業利益、賃貸用建物の賃料について損害賠償を認めるためには、契約不適合が存在しなければ、営業利益又は賃料を確実に取得できていたであろうことの立証が必要と考えられており、裁判例も同様の考え方を示すものが多いところです。

 例えば、賃貸用建物の場合に関して、東京地裁・平成25年12月24日判決は、次のような判断を示しています。

 この事案で、原告は、賃貸用の建物に契約不適合が存在したことを理由に、賃借人から契約更新を断られたとして、賃借人が賃貸借契約を更新することを前提とした賃貸借契約期間に相当する賃料の損害賠償を求めました。しかし、裁判所は、原告の主張に対して、「原告は、本件賃貸借契約が更新されることを前提に、平成26年6月までの逸失賃料を損害とすべきであると主張する。しかしながら、本件賃貸借契約の契約書(甲3)によれば、本件賃貸借契約は、これまで法定更新されてきたものではなく、満了になる都度、合意更新をしていることが認められ、そうすると、更新日までは賃貸借契約が継続される可能性は高いといえても、期間満了後も、これまでと同様に更新されるとは限らないので、本件賃貸借契約の満了日以降の逸失賃料を認めるのは相当でない」と判示して、更新を前提とした賃貸借期間に相当する賃料の損害賠償を否定しました。

 裁判所は、従前は賃貸借期間が満了になる都度、合意更新をしていること自体は認めつつ、「期間満了後も、これまでと同様に更新されるとは限らない」と指摘しており、賃料を確実に取得できたとまでは言えない点を考慮したものと推察されます。

 このように、逸失賃料の損害賠償に関して、裁判所は厳格に判断をする傾向を見ることができ、この考え方は、本件のように営業利益の損失が主張された場合にも妥当するものと考えられます。

東京地方裁判所の正門
東京地方裁判所の正門
(出所:日経BP)
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