特集

太陽光設備の施工ミスで発電ロス、賠償額の算出方法は?(page 3)

<第85回>近時の裁判例解説を踏まえた具体的な相談事案への対応について

2022/05/24 05:00
匠総合法律事務所 弁護士・秋野卓生、弁護士・角谷昌彦
印刷用ページ

台風で飛散したケースの判例は?

 これまでに述べましたとおり、逸失利益の損害賠償においては、契約不適合が存在しなかったのであれば、その利益を確実に取得できたであろうといえるか否かという点に判断のポイントが置かれています。

 太陽光発電設備工事に関しても、施工者の施工不備によって台風時に太陽光パネルが飛散するなどしたため、注文者が施工者に対して、補修工事費用に加え、太陽光パネルの飛散などの発生から補修工事の完了までの期間に電力を販売できなかったことによる逸失利益の賠償を請求した事案に関して、東京地裁・令和3年3月18日判決は、「カ 逸失利益 0円 原告は、本件事故により逸失利益が生じた旨主張するが、その額を認めるに足りる的確な証拠はない」と判示して、逸失利益の賠償を否定しています。

 このような裁判例の考え方を前提とすると、実損分の金額を、太陽光メーカーが作成したシミュレーションを基に算出した主張は、シミュレーションどおりの発電量が得られるとは限らないことを理由として、認められない可能性が高いと考えられます。

 そもそも、太陽光発電設備の発電量は、その性質上、天候等の外的要因への依存を避けられないため、未発電であった1系統の太陽光発電設備の確実な発電量を特定することは不可能であることを前提に、施工者は、契約不適合を是正するために必要となる費用を賠償することで足り、逸失利益の賠償までは不要であるとの解釈も考えられます。

 それでは、上記のような解釈に基づいて、本件で逸失利益の損害賠償は不要であると主張できるでしょうか。答えは、「本件に関しては」、できないと考えます。

 東京地裁・平成25年12月24日判決は、期間満了後に賃貸借契約が更新されるか否か、つまり、賃料債権が発生するか否かが不確実である点を問題視しました。また、東京地裁・令和3年3月18日判決も、現実に発電は行われていなかった、太陽光パネルの飛散などの発生から補修工事の完了までの期間における発電量及びその売電額の特定がないことを問題視した事案です。いずれの事案においても、賃料又は発電量の発生自体を確実に注文者が得られたであろうとはいえない、と裁判所が判断したと推察されます。

東京地方裁判所の外観
東京地方裁判所の外観
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます
  • 記事ランキング