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太陽光設備の施工ミスで発電ロス、賠償額の算出方法は?(page 5)

<第85回>近時の裁判例解説を踏まえた具体的な相談事案への対応について

2022/05/24 05:00
匠総合法律事務所 弁護士・秋野卓生、弁護士・角谷昌彦
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本件についての検討

 この裁判例の考え方を参考に、ご質問事項を検討していきましょう。

 まず、先ほども述べましたとおり、太陽光メーカーで作成したシミュレーションはあくまでも予測値であり、確実に取得できたであろう発電量の算出基準として利用することは相当とはいえないと考えられます。

 そして、本件では、太陽光発電設備の配線施工ミスにより、太陽光発電設備の3系統のうち、1系統が未発電の状況にあったとのことですから、東京高裁・令和3年9月8日判決を参照し、下記の順序で実損害を把握できます。

(1)1系統が未発電の状態下での総発電量を把握する

 まずは、引渡し時から、配線施工ミスの是正工事が完了するまでの間の発電量、つまり、残り2系統の太陽光発電設備のみが稼働したことによる発電量を把握します。

 以下では、便宜上、この発電量を100(単位略)と考えていきましょう。

(2)配線施工ミスにより未発電となった1系統の太陽光発電設備による発電量が、全体の発電量に占める割合を特定する

 例えば、3系統の太陽光発電設備をそれぞれA系統、B系統、C系統とした上で、Aの発電量:B系統の発電量:C系統の発電量=5:2:3、といった具合です。具体的な算出方法としては、東京高裁・令和3年9月8日判決に従い、太陽光パネルの面積比率を用いる方法が良いでしょう。

 本件では、1系統が未発電の状況にあったということですので、東京高裁・令和3年9月8日判決において問題となり得る、隣地の樹木群の日影による影響を受けた太陽光パネル6枚の発電量について、本当に「実質的にゼロ」であったと言ってよいかという問題は生じず、太陽光パネルの面積比率を用いることが説得的です。

(3)(1)及び(2)を前提として、発電量の減少分を算出する

 以上を踏まえて、発電量の減少分を算出します。

<ケース1>A系統が未発電の場合

 例えば、A系統が配線施工ミスにより未発電であった場合、B系統及びC系統での発電量が100、また、発電量の比率は、A:B+C=5:5ですので、A系統が未発電であったことによる発電量の減少分は100と算出できます。

 この場合には、発電量100に対応する電気価格を実損害として把握できます。

<ケース2>B系統が未発電の場合

 同様に、B系統が配線施工ミスにより未発電であった場合、A系統及びC系統での発電量が100、また、発電量の比率は、B:A+C=1:4ですので、B系統が未発電であったことによる発電量の減少分は25と算出できます。

 この場合には、発電量25に対応する電気価格を実損害として把握できます。

 事前に提示したシミュレーションの数値が実際の発電量を上回っている場合、発注者はシミュレーション記載の発電量を得ることができると期待していることと相まって、シミュレーションを基に算出した金額の損害賠償を請求される事案も見受けられるところですが、上記東京高裁・令和3年9月8日判決の判示内容、具体的な計算根拠を明示した資料を準備の上、誠実にご説明を尽くして、対応していくことが肝要と考えます。

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