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合意の当事者でない者にも「仲裁合意」の効力は及ぶ? (page 3)

<第86回>太陽光発電設備に係る設計施工契約中の仲裁合意に関する最新判例

2022/06/21 05:00
匠総合法律事務所 弁護士・秋野卓生、弁護士・丹羽響
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仲裁合意の効力

 以上の経緯で原告と被告らとの間の訴訟が係属することとなりましたが、本件請負契約中には、次のような条項が含まれていました。

第●●条 この契約の条項で甲乙(注:「甲」は原告、「乙」は被告Cを指します。)協議を要するものにつき協議がととのわない場合、その他この契約に関して甲乙間に紛争が生じた場合は、建設業法による建設工事紛争審査会のあっせん又は調停によって、その解決を図る。

2 前項の審査会があっせん若しくは調停しないとき、又はこれを打ち切った場合においては、その旨を当事者が受けたときは、紛争を同審査会の仲裁に付し、その判断に服する。

 仲裁合意は、仲裁法において定義されており、「既に生じた民事上の紛争又は将来において生ずる一定の法律関係(契約に基づくものであるかどうかを問わない)に関する民事上の紛争の全部又は一部の解決を一人又は二人以上の仲裁人にゆだね、かつ、その判断……に服する旨の合意」を意味するとされています(仲裁法2条)。

 また、当事者がいったん仲裁合意をすれば、当該合意に基づく仲裁判断は、一定の場合に不承認とされる例外を除き、確定判決と同一の効力を有し(同法45条1項、2項)、当事者は仲裁判断に拘束され、これに対し、不服申立てをすることも許されません(同法46条)。

 そのため、仲裁合意が存する場合には、訴訟を提起したとしても、訴訟要件を欠くとして、訴えが却下されてしまいます。

 本件では、上記条項が仲裁合意に当たるところ(以下「本件仲裁規定」)、本件請負契約は、原告と被告Cとの間で締結された契約であるため、本件仲裁規定の効力が被告A及び被告Bにも及ぶのかという点が争点の1つとなりました(原告は、効力が及ばないため訴訟要件は満たしていると主張し、被告らは、効力が及ぶため訴訟要件を欠くと主張しています)。

 この点、契約は合意によって成立するものであり、合意(約束)したからこそ拘束されるというのが契約法の原則です。本件においても、原告は、同原則を主張し、本件仲裁規定の効力は、原告及び被告Cの間でのみ効力を有すると主張していました。

 他方で、仲裁合意の効力は誰に及ぶのかという問題(仲裁合意の効力の人的範囲の問題)については、法人が仲裁合意を締結した場合に同法人の代表取締役等にもその効力が及ぶのかという命題を中心に議論されてきました(中村達也『仲裁合意の効力の人的範囲について』国士舘法學第49号222頁)。

 本件で、裁判所は、仲裁合意の効力は例外的に合意の当事者以外にも及ぶことを前提に、本件の個別具体的な事情から本件仲裁規定の意味を解釈し、かつ、合意当事者以外の者の裁判を受ける権利についても配慮した上で、本件仲裁規定は、被告A及び被告Bとの関係でも効力を有すると判断しました。

札幌高等・地方裁判所の外観
札幌高等・地方裁判所の外観
(出所:photpAC)
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