「仲裁合意」とは?
契約当事者間の紛争を解決する法的方法として、訴訟を思い浮かべる方が多いと思いますが、訴訟手続はある程度の時間と費用を要する手続であるため、より簡易迅速に紛争を終結させる手段として仲裁という制度が用意されています。実際に、建設工事に関する請負契約書においては、紛争の解決方法として、仲裁制度による解決を指定していることが少なくありません。
例えば、民間連合協定工事請負契約約款や民間建設工事標準請負契約約款等では、建設業法による建設工事紛争審査会のあっせん又は調停の手続内で協議することで解決を図るものとし、これが整わない場合には、仲裁合意書に基づいて、審査会の仲裁判断に従うという規定(仲裁合意規定)が設けられています。このように一般的な約款にも仲裁合意規定は設けられているため、請負人側としても、特に意識することなく、仲裁合意規定を含んだ契約を締結していることがあるのではないでしょうか。
他方で、仲裁合意は、後述のとおり、訴訟による解決を排除する効力を有するため、当事者の思いもよらぬ結果をもたらす可能性も否定できません。
今回取り上げる裁判例(札幌地裁・令和4年2月8日判決)は、太陽光発電事業者・施工業者間で太陽光発電設備の設計及び施工等に関する請負契約を締結した場合に、契約当事者以外の者にまで、当該請負契約中の仲裁合意の効力が及ぶかという点が争点となった事案であり、仲裁合意が訴訟に及ぼす影響を確認するのに資する裁判例と言えます。
では、本件の事案を見ながら、仲裁合意について確認していきましょう。
先取りになりますが、本件の判決においては、契約締結に至る経緯等の従前の経緯が重視されているため、以下ではまず、事実経緯について確認します。