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「メガソーラー裁判」を読み解く、地裁の判断はなぜ覆ったのか?(前半)(page 2)

<第75回>東京高裁・伊豆高原メガソーラーに関する判決の解説

2021/06/23 19:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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静岡地裁の判断を振り返ると…

 静岡地裁はまず本件処分について、河川敷地の占有の適否は、河川法の目的に沿って判断する必要があるとした上で、災害防止や流水の正常な機能の維持などにより公共の安全を確保する観点には専門技術的判断を、それ以外の公共の福祉を増進する観点には政策的判断を要するとして、それぞれに河川管理者(市)の裁量を認定しています。この際、河川法は、本件のような普通河川について、河川法の適用を受ける河川以上に強力な河川管理の定めを置くことを禁止していると解し、これに反する条例等の制定は認められないとしています。

 同裁量権の行使の適否について、地裁は、いわゆる判断過程審査に該当する基準を設定し、裁量の逸脱濫用の存否を検討し、違法にあたるかどうかを判断する、としています。

 そして地裁の判決は、本件不許可処分に関する裁量的判断の要素として、(1)占有目的、(2)条例との適合性、(3)市議会におけるメガソーラー事業への反対決議等の存在、(4)カルバート等の機能、を挙げています。

 まず、(1)の占有目的については、申請事業者が河川敷地を占有する直接的な目的は、当該箇所に橋を架けることにあったため、メガソーラー事業を運営するという目的も含めて考慮することは、認められないようにも思われます。もっとも、占有によって実施する事業の内容により、河川へ影響を及ぼす可能性があることから、当該事業を含めた占有目的を考慮することを認めています。

 次に、(2)の条例との適合性については、「現に太陽光発電設備事業に着手している者」(附則2条)に該当するかを検討しています。

 また、(3)の市議会における反対決議等については、河川及びその周辺の地域の環境保全だけでなく、申請目的をも考慮した景観及び自然環境保全の観点から、一般社会住民の容認するものであるか否かを考慮して良いかという問題になります。地裁は、これら事項については、敷地占用自体によりもたらされる影響ではなく、河川・周辺の地理的範囲を超えた事項を考慮することにほかならないので、考慮すべきでないとしています。更に、本件カルバート等について悪影響が無いことについては争いがない以上、住民や市議の同意を要件とするような判断は認められるべきでないとしました。

 最後に、(4)のカルバート等の機能については、当該カルバート等が占用許可をされうる施設の例として規定されており、これを設置すること自体が河川管理機能を害するものではないにも関わらず、公共性が高くないと評価した点につき明らかに合理性を欠くとしました。

 上記理由から、静岡地裁は結論として本件不許可処分には、裁量の逸脱濫用があるとして、違法としました。

静岡地裁の外観
静岡地裁の外観
(出所:日経BP)
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