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「メガソーラー裁判」の論考、景観条例を巡り攻防も(page 4)

<第64回>静岡地裁・伊豆高原メガソーラーに関する判決の解説

2020/06/26 05:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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「設置事業に着手」に該当するか?

 伊東市は、訴訟において「原告が平成30年6月1日までに事業に着手した事実はない」と主張しました。

 本件規制条例における「事業の着手」は、事業区域において、必要な法的手続などを行った上で太陽光パネルの設置や太陽光発電設備を設置するために行う樹木の伐採、土地の造成等による区画形質の変更を行う事業を指すものであり、現地調査、測量、資材などの搬入、太陽光パネルの制作などの準備行為は含まない。このことは、平成30年2月末から被告のホームページ上に掲載・公表している」と主張しています。

 「必要な法的手続等を行った上で」という点が、伊東市の主張したい大きなポイントであったと思います。伊東市は、「工事実施に当たり防災工事を先行し、防災工事完成後に被告市長の確認を受けること、その他の造成工事等は防災工事完了後とし、被告市長の確認を受けた後でなければならないとする当該許可時に付された条件に違反しているのであって、必要な法的手続等を行った上で実施された事業ではない」と主張しています。

 これに対する裁判所の判断は、次の通りです。

 「本件経過措置は、同条例の施行前の時点で太陽光発電設備設置事業に着手した事業者に本件規制条例11条が適用されることで、当該太陽光発電設備を利用した発電事業の遂行が困難となり、それによって当該事業者が不測の損害を被ることを防ぐ趣旨と解される」

 「太陽光発電設備設置事業とは太陽光発電設備を設置する事業又は太陽光発電設備を設置するために行う樹木の伐採、土地の造成等による区画形質の変更を行う事業を指す(同条例3条)ところ、上記趣旨を踏まえると、当該樹木の伐採や区画形質変更に係る伐採届や宅地造成等規制法に基づく工事許可処分を受けた上で工事の一部を実施すれば、所要の許認可を経た上での工事である以上、当該事業者において太陽光発電事業を遂行できるとの期待が生ずるのが通常であるというべきである」

 「そして、原告が、本件規制条例の施行前である平成30年5月31日までに、提出した伐採届に基づいて伐採を行い、本件事業について宅地造成等規制法に基づく工事許可を受け、それに基づく形質変更工事として土地の掘削を行ったこと、当該形質変更工事は、原告代理人弁護士らが被告市長らと面会し、本件経過措置の適用に関して議論した上、本件規制条例の施行前に着工すると明確に予告した上で行われていることなどの本件の具体的事情等を踏まえると、原告について、本件経過措置が定める『現に太陽光発電設備設置事業に着手している者』に該当すると認めるのが相当である」

「伊豆高原メガソーラーパーク発電所」建設工事の事務所
(出所:日経BP)
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