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「メガソーラー裁判」を読み解く、地裁の判断はなぜ覆ったのか?(後半)(page 3)

<第76回>東京高裁・伊豆高原メガソーラーに関する判決の解説

2021/07/07 12:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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条例との適合性の観点について

 裁量的判断の要素である(2)の「条例との適合性」に関しては、上記の比較から、地裁と高裁では「現に」「事業に着手している」(条例附則2条)の該当性が異なっています。かかる相違点についてはどのように考えるべきでしょうか。

 地裁は同文言該当性につき、同附則の趣旨は、事業着手後に条例が施行され、事業遂行が不可能になる事業者に不測の不利益が生じることを防止する点にあるとした上で、宅造法の工事許可処分を受け、工事の一部を実施した時点で、事業を遂行できるとの期待が生じることが通常であるから、「事業に着手」したと言えるとしました。その上で、同許可を受けた上で、本件形質変更工事を実施し、及び工事の開始を、市側との面会時に告知していたことから、「事業の着手」があったと認めています。

 一方、高裁は、同文言の意義につき、市が主張する「事業区域において、必要な法的手続き等を行った上で、太陽光パネルの設置や太陽光発電設備を設置するために行う樹木の伐採、土地の造成等による区画形質の変更を行う事業を指すもの」、「現地調査、測量、資材の搬入等、太陽光パネルの製作等の準備行為を含まない」との立場に沿った上で、立木の伐採についてはあくまで事前のボーリング調査のためであったこと、必要な手続きを踏む前に着工すれば停止命令を行う考えを市側から示されていたにも関わらず着工したこと、また工事の施工に必要な県との間での協定の締結がなされていなかったこと、との点から、必要な法的手続きを完了しておらず、「現に」「事業に着手している」とはいえないとしました。

 かかる解釈についてはいずれが妥当でしょうか。この点、附則2条は上記の通り、条例が遡及的に適用されることを防止することで事業者を保護する点にあります。このため、事業者は不利益が生じることから保護されるに値するものでなければなりません。このため、不適法または相当でないような方法でかかる保護の条件を充足するような者については附則2条が適用されるべきでないと考えられ、「現に」「事業に着手している者」とはいえないとすべきです。

 この点、本件事業者は、上記の事実関係などから、強行的に工事に着工したともとれる行動に出ていることが明らかとなっています。このため、上記附則による保護に値する地位になく、同事業者は「現に」「事業者に着手している者」とはいえないでしょう。この点では、高裁の判断は妥当であると考えられます。

伊豆高原の太陽光発電建設計画のある付近
(出所:日経BP)
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