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太陽光設備が思わぬ故障で停止! 損害を請求できる?

<第87回>修理費・売電損失の請求に関するトラブル事例の解説

2022/07/27 00:00
匠総合法律事務所 弁護士・秋野卓生、弁護士・土屋秀晃
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 最近、当事務所に、太陽光発電機器等の故障に起因するトラブル事例について、次のようなご質問を頂きました。

<質問1>

 発電状況を計測する遠隔監視システムが故障し、パワーコンディショナー(PCS)がダウンして、売電できない期間がありました。故障した機器の交換はしてくれましたが、売電損失分については、規約で免責されるとして、応じてもらえません。売電損失分の損害賠償を請求できないのでしょうか。

<質問2>

 近隣住民が飼っているペットが、太陽光パネルの上にあがったり、フンをしたりするので、発電効率が下がり、機器が故障する場合があります。ペットの飼い主に修理費や売電損失分の賠償を請求できないでしょうか。

<質問3>

 隣家の屋根材が折からの強風で飛散し、自宅屋根上の太陽光パネルが破損してしまいました。修理費や破損による売電損失を請求したいのですが、隣家所有者からは、自然災害に起因する破損は不可抗力として、応じてもらえません。自然災害による故障の場合、一切請求できないのでしょうか。

遠隔監視システムが故障、PCSの保守管理に関する責任は?

 PCSの故障は、EPC(設計・調達・施工)サービス事業者やO&M(運営・保守)サービス事業者等に原因がある場合だけでなく、発電事業者の維持管理の不備や、自然現象に起因する場合も考えられ、誰に、どのような責任を追及できるか、あるいは請求困難かの判断が難しいことがあります。そして、故障の原因を特定できなかった場合、メーカー保証や損害保険を利用できるときを除き、修理費や売電損失の補填を受けることは、難しくなります。

 近時、発電状況をモニタリングし、PCSの保守管理・早期の故障の発見のための機能を備えた遠隔監視システムの導入が進んでいます。もっとも、質問事例のように、遠隔監視システム自体が故障してしまうと、このような保守機能が果たせないため、遠隔監視システムの管理会社や販売会社の責任が問題となります。

 質問事例では、売電損失の補填の請求先や、PCSがダウンした直接の原因について触れられていませんが、例えば、遠隔監視システムの管理会社等から、「遠隔監視システムの故障が、直接PCSの故障原因になったわけではない。PCS自体の故障について、責任は負わない」として、対応を拒絶されてしまったケースが考えられます。

 このようなケースであれば、そもそも(1)遠隔監視システムの故障が原因となって、PCSがダウンした、と主張するだけでなく、(2)遠隔監視システムが故障したことで、本来であればPCSの故障・異常を発見できたはずの時期に、保守機能が働かず、故障の発見・復旧が遅れたとして、本来故障を発見できた時期以降の売電損失を主張していくことが、考えられます。故障の原因が特定できていない場合、発電事業者が(1)を立証することが難しい可能性があり、当該システムの機能や、管理会社等との契約・説明の内容等を踏まえ、(2)の主張を検討することになります。

 ここで、参考になる裁判例として、太陽光発電に関する事案ではありませんが、大阪高裁・平成20年7月9日判決(判時2025号27頁)があります。

 この裁判例は、高齢者向け住宅の生活異常監視サービスを行っていた業者が、緊急時の対応の遅れを理由として、慰謝料の請求を受けた事案です。具体的には、センサーの反応に異常があり、業者が安否確認のために高齢者宅に急行した際、事前に合鍵を保管していなかったために、直ちに建物内に立ち入ることはできず、高齢者の親族から鍵を借りて立ち入ったものの、既に対象高齢者が死亡していたというものでした(ただし、業者の対応の遅れと、高齢者の死亡との因果関係は否定されました)。

 裁判所は、「緊急対応サービス契約上、被控訴人は、各緊急時の具体的状況のもとで、少なくとも、契約上予定された範囲では、最も安全かつ迅速な方法でその義務を履行する責任を負っている」とし、サービスの利用者には、業者が「緊急事態を察知し…契約の範囲内での方法を駆使して、可能な限り、最善の対応を受けること」が保証されていたとして、業者の債務不履行を認定しました。その上で、慰謝料10万円を認定しました。一方で、契約関係がない高齢者の親族に対する不法行為責任は否定されています。

 この裁判例のように、遠隔監視システムの管理会社等が、PCSの保守管理に関し、故障などの早期発見・最善の対応を約束していたといえる事情がある場合、(2)の主張が認められる可能性があると言えます。

 もっとも、質問事例でも「規約」への言及があるように、管理会社等において、PCSの保守管理について責任を負わない旨や、賠償の範囲を限定する(例えば、売電損失を除外する等)条項を、契約書に盛り込んでいる場合があります。そのため、具体的な請求を検討するに当たり、業者との契約内容をよく確認しておく必要があります。また、今後、こういったシステムの導入を検討する際にも、事業者がどの範囲で責任を負うことになっているのかについて、契約書を慎重に確認する必要があります。

大阪高等裁判所の外観
大阪高等裁判所の外観
(出所:photoAC)
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