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「メガソーラー裁判」を読み解く、「行政裁量」の逸脱・濫用とは?(page 3)

<第65回>静岡地裁・伊豆高原メガソーラーに関する判決の解説(その3)

2020/08/06 05:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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合理的な裁量の範囲の逸脱

 伊東市長には、河川管理者として普通河川条例4条に基づく河川敷地の占用許可について裁量権が存在します。

 しかし、前回解説したとおり、「本件各不許可処分は、原告が本件規制条例11条に違反したという点において重要な事実の誤認があることにより、重要な事実の基礎を欠き、また、判断の過程において本件事業から生ずる影響といった考慮すべきでない事情を考慮し、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠くなど、社会通念上著しく妥当性を欠くというべきであるから、いずれも被告市長に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法」と判断されたのです。

不許可処分の手続的違法

 行政手続法8条1項本文は、「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない」と規定しています。

 これは、申請を拒否する理由の有無についての行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、拒否の理由を申請者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与え、これにより行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資する(同法1条参照)趣旨によるものです。

 行政手続法8条1項本文の趣旨に鑑みれば、申請により求められた許認可等を拒否する処分を書面でする場合にその書面に付記すべき理由としては、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該申請が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知し得るものとしなければなりません。

 しかし、本件各不許可処分においては、この理由が不明瞭でした。

 静岡地裁判決は、以下のように判示しています。

 「本件各不許可処分は、本件事業を遂行する上で必要な工事を行うことを事実上困難にさせる重大な処分であるところ、本件各不許可決定通知書は、その処分の理由として事実関係が何ら示されず、本件要領で引用する通達に規定された「社会経済上必要やむを得ない」に該当しないと判断したことを記載するのみある。「社会経済上必要やむを得ない」との文言は、非常に概括的・抽象的であり、評価の結果を指すに等しく、「社会経済上必要やむを得ない」に該当しないと判断するに至った具体的な勘案事項は全く示されていないから、原告において、いかなる理由により、いかなる勘案事項をいかなる事情を考慮した結果「社会経済上必要やむを得ない」に該当しないと判断するに至ったのかを知ることは困難である。以上の事情を踏まえると、行政手続法8条の要求する理由提示としては不十分であり、本件各不許可処分は、理由付記の点からも違法であって、取り消されるべきである」

判決を言い渡した静岡地裁
判決を言い渡した静岡地裁
(出所:日経BP)
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