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「メガソーラー裁判」を読み解く、「行政裁量」の逸脱・濫用とは?(page 4)

<第65回>静岡地裁・伊豆高原メガソーラーに関する判決の解説(その3)

2020/08/06 05:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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不利益処分の理由をどの程度特定して提示すべきか

 最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決は、不利益処分の理由をどの程度特定して提示すべきかについて、「当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである」と判断しています。

 従って、

(1)根拠規定となる条文の条番号

(2)根拠条文及び審査基準・処分基準の内容

(3)どのような事実関係があると判断したのか、また、なぜ(2)のルールが適用され又は適用されないと判断したのか

 という点の記載を要することになります。

 伊東市は、本件事業の計画について伊東市議会が全会一致で反対の決議をしたことをもって本件事業が一般社会住民の容認するものではないことが明らかになったといえ、原告は、上記反対決議を当然認識しているから、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して本件各不許可処分をされたかを記載自体から了知しうると主張しました。

 要するに、メガソーラー建設について反対の総意であることから、メガソーラー建設にあたって必要となるメガソーラー建設地内の川に橋を架けることは不許可とすると言っているに等しいことになります。

 ところが、静岡県知事が管理する2級河川の占使用の許可等の基準を河川管理施設等構造令に定めるもののほか別に定めるとし、別に定めるものとして、存在する「河川敷地の占用許可について」(昭和40年12月23日建設省発河第199号、昭和58年12月1日建河政発第96号改正 静岡県知事あて建設事務次官通達)」は、「占用許可の基本方針」として、河川敷地は、公共用物として本来一般公衆の自由使用に供されるべきものであるので、原則としてその占用は認めるべきではないが、「社会経済上必要やむを得ず許可する場合」においては占用許可準則に従い処理する旨記載しています。

 伊東市長のなした不許可処分には、いかなる事実関係に基づいて、本件カルバートや本件仮設排水管等の設置について、どの点が裁量基準のどの項目を満たさないために不許可とされたのか記載されていません。

 静岡地裁判決も「一般社会住民の容認するもの」であることから「社会経済上必要やむを得ない」と評価するという適用関係は、その文言や本件要領の規定の仕方に照らしで明確ではなく、被告が付記した理由の記載自体からそのような適用関係を読み取ることは困難といわざるを得ない。と判示しているところです。

裁判所から違法と判断される行政処分

 メガソーラー建設反対を選挙の際に公約とした市長が、その公約を守るため、本件不許可処分をなしたものであり、法的には無理があったとしても、市長の行為は政治的に非難されるべきものではありません。

 しかし、裁判所から違法と判断される行政処分をなした法的責任は残るものであり、私は、裁判による解決を図ることには、一定のリスクがあり、他の解決手段はないものか?と思案をしているところです。

 やはり、民意を受けた一政治家としての信念を全うするという観点からは、民意を反映した条例にての解決が妥当ではないか、と思うのです。

 次回は、条例にての解決として、どのような解決が可能か、について私見を述べたいと思います。

「伊豆高原メガソーラーパーク発電所」建設工事の事務所
「伊豆高原メガソーラーパーク発電所」建設工事の事務所
(出所:日経BP)
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