太陽光発電事業者のための法律Q&A

太陽光パネルの取付業者が「偽装請負」と見なされる恐れはありますか?

<第55回>メガソーラー建設現場における「労働者派遣法」違反のリスク

2019/09/11 05:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生

「偽装請負」は法律違反

 メガソーラー(大規模太陽光発電所)事業においては、広大な敷地に太陽光パネルを設置する多数の労働者を確保するため、下請業者として、単に職人を集めてきてメガソーラー施工業者に提供する役目を担う業者が介在する場合があります。

 この際、このような下請業者とメガソーラー施工業者との間に締結される契約が、「請負契約」であれば問題がないのか、または契約書の形式が「請負契約」であっても、下請業者の請負う業務が、実質的には単に労働者を集め、施工業者に提供することであり、労働者派遣法の規制を受ける労働者派遣事業にあたる場合があるのではないか、が問題となるケースがあります。いわゆる「偽装請負」になるのかという問題です。

 「偽装請負」ということになると、労働者派遣法違反となり、処罰のリスクもあります。

 本稿では、メガソーラー施工現場の下請けや孫請けに単に労働者を集め、施工業者に提供するいわゆるブローカー的存在の業者が介在した場合のリスクについて検討します。

メガソーラー建設現場の様子(画像イメージで本文の内容は直接関係しません)
(出所:日経BP)
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労働者派遣法違反とは?

 まず、「偽装請負」について解説します。

 労働者派遣事業を行う事業者は、厚生労働大臣の許可を受ける必要があり、許可を受けずに労働者派遣事業を行った者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(派遣法59条、5条1項)。

 現在、各都道府県労働局において、労働者派遣と請負(業務委託)の区別は、派遣法施行当時の労働省告示(昭和61年労働省告示第37号)に基づき行われています。

 上記告示では、請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主は、以下の2つの要件を満たす場合を除き、労働者派遣事業の事業主に該当し、労働者派遣法の適用を受けるものとされています。

これらの要件を満たす場合、労働者派遣法の適用を受けない
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 ですから、単に労働力を提供して、元請業者の指導に従わせるいわゆるブローカーは、労働者派遣法違反のリスクがあるのです。

 労働者派遣法の適用を受けるブローカーに該当するか否かの判断は、契約の形式面ではなく、業務遂行の実態に基づいて行われます。

 従って、元請業者と「請負契約」をブローカーが締結していたとしても、実質が労働者派遣であれば、いわゆる「偽装請負」として労働者派遣法の適用を受けることとなるのです。

 いわゆる「偽装請負」に該当する例としてよく挙げられるのは、以下などがあります。

「偽装請負」に該当する例としてよく挙げられるケース
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元請業者の指示に基づき動く労働力の提供はアウト

 ソーラーパネルの設置工事に関し、単に職人を集めてくることだけを請け負っているブローカーは、工事に関する技術的な指導、出来高査定を自ら行うことが通常困難です(そもそも現場に来ないケースもあります)。

 厚生労働省・都道府県労働局発行「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」によれば、労働者派遣か請負かいずれに該当するか、の具体的判断基準は、当該労働者の業務の遂行に関する技術的な指導、勤惰点検、出来高査定などにつき、当該事業主である下請業者が自ら行うものであるか否かとされています。

 請負の実質があると言えるためには(偽装請負にあたらないと言えるためには)、以下3点のいずれにも該当することが必要です。

これら全部に該当すれば「偽装請負」にあたらない
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 下請業者自身が労働者に対して指導を行えず、元請業者が代わって技術的指導を行っているような場合には、偽装請負と判断される可能性が高いといえます。

管理責任者を置くことで偽装請負を回避

 「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する質疑応答集(以下「質疑応答集」といいます。)の質問4によれば、下請業者は管理責任者を置いて、自己に代わり作業の遂行に関する指示等を行わせることができ、労働者に管理責任者を兼任させることも認められています。

 したがって、下請業者が、管理責任者を設置し、他の労働者に対する技術的指導を行わせている場合、偽装請負とは判断されません。

 もっとも、管理責任者が自らの作業の都合から、事実上他の労働者の管理等ができないのであれば、管理責任者とは言えません。また、管理責任者の不在時は、下請業者側で技術指導等を行うことが担保されている必要があり、例えば、施工業者と管理責任者との確実な連絡体制を予め確立しておくことや、代理の管理責任者が確実に選任されるようにしておくことが必要です。

 なお、質疑応答集の質問10によれば、施工業者が下請業者に代わり指導した場合でも、その指導の内容が、例えば、新製品の製造着手時などに請負契約の内容である資料等では理解が困難な仕様等について補足的に説明する場合や、安全衛生上、緊急に対処する必要のある事項について指示するにとどまり、それ以外の事項は労働者を連れてきた下請業者が指導監督を行っているといえるときには、偽装請負とは判断されません。

メガソーラー建設現場の様子(画像イメージで本文の内容は直接関係しません)
(出所:日経BP)
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工具を準備すればよいのか

 ドライバー、レンチ、スパナ等の設置工事に直接必要な工具等を準備し、施工者に持参させれば「単に肉体的な労働力を提供するものでない」と言えるか、という論点もあります。

 請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理すること(独立性)の要件として、告示は、以下のいずれにも該当することとしています。

労働者派遣法の適用を受けない「独立性」の要件
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 上記 c の「単に肉体的な労働力を提供するものでない」という要件では、以下のいずれかに当たることを要するとしています。

「単に肉体的な労働力を提供するものでない」とされる要件
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 そして、前記「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」によれば、上記 1 の具体的判断基準は、機械、設備、器材等の提供の度合について、名目的に軽微な部分を提供するのみでは足らず、事業における社会通念に照らし、通常提供すべきものが業務処理の進捗状況に応じて随時提供使用されている必要があるとしています。また、機械等を注文主である施工業者から借入れ又は購入する場合、別個の双務契約を締結する必要があります。

 ドライバー、レンチ、スパナ等の設置工事に直接必要な工具等は、通常は労働者が携帯すると想定されるものですから、業務上必要な簡易な工具にとどまり、下請業者が準備すべきとされる「器材」に当たりません。

 したがって、下請業者がこれらを準備したとしても、上記 c の要件を満たしません。

 また、質疑応答集の質問8によれば、いかに発注量が変動し請負料金が一定しない内容の工事であっても、業務処理のために費やす労働力(労働者の人数)で受発注を行い、投入した労働力の単価を基に請負料金を精算している場合は、発注者に対して単に肉体的な労働力の提供が行われているにすぎないと判断されます。

 これに対し、自己の雇用する労働者を下請業者が直接利用しており、完成した製品の個数等に基づき出来高で精算するような態様であれば、偽装請負と判断されるものではありません。

 以上の通り、37号告示によって偽装請負と評価されないためには、下請業者自身が労働者の業務遂行等を指導監督する必要があります。下請業者が施工業者との間で締結する請負契約は、下請業者が設置工事に必要な工具等を準備・負担していた場合であっても、労働者派遣事業に該当し、違法な労働者派遣となるおそれがあります。

 メガソーラー設置工事に関しては、工事施工台帳を慎重にリーガルチェックし、違法がないか確認しながら進めることが重要です。

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