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メガソーラー開発業務の委託料を巡り紛争、訴訟沙汰に(page 4)

<第77回>「通謀虚偽表示」により契約が無効に、東京地裁判決の解説

2021/09/13 05:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生 
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「架空の合意」は訴訟リスクに

 すでに記述しましたが、「通謀虚偽表示」とは、相手方と意を通じて行った虚偽の意思表示で、「意を通じている」という点と、「虚偽の意思表示である」という要件が整うと成立します。成立した場合、その法律効果は、「無効」となります。

 本件事案では、2016年頃から、原告代表者は、被告代表者に対し、設備用地の紹介者に対する謝礼に充てる費用を捻出するため、1MW当たりの報酬単価を150万円に増額することを求めましたが、これを被告代表者は断っています。

 他方で、被告代表者は、本件業務委託契約に係る報酬を見かけ上1MW当たり200万円とし、その全てをB社間合意における共通経費とすることをB社に認めてもらい、さらに、1MW当たり50万円を原告から被告側に戻してもらえば、被告の利益にもなる上に、原告に対する報酬を1MW当たり150万円に増やすこともできるのではないかと考え、50万円のバックマージンの支払いをすることを前提に1MWあたり200万円の業務委託料とする本件契約書を作成しているのです。

 民法94条で規定する「通報虚偽表示」の成立要件である「相手方と意を通じて」という点は、本件では認められ、1MWあたり200万円の業務委託料とする合意は、虚偽の意思表示ですから、民法94条によりこの合意は無効となります。

 もっとも、原告に対し、1MW当たり150万円とする合意は成立しているのではないか?という疑問もあります。

 被告代表者の申し出は、1MW当たり200万円の報酬合意という見かけ上の架空の合意をし、バックマージンで50万円返金してくれれば、原告に対して1MW当たり150万円の報酬を支払うことになるのだから、それで良いではないか、という提案であり、1MW当たり150万円の報酬とするという点では、真正な合意が成立していると見る余地もあります。

 しかし、原告は、本件訴訟で以下のように主張し、1MW当たり150万円の報酬とする合意に関しても否定しています。「原告は、本件契約書が作成された当時、被告から、報酬は1MW当たり200万円とした上で後日その中から被告代表者個人に1MW当たり50万円を返還して欲しいとの要望を受け、これを明確に否定しなかったことはあるが、被告が主張するような理由により本件契約書を作成することについては、その依頼を受けたことすらない。原告と被告が通謀して内容虚偽の契約書を作成したとの被告の主張を裏付ける客観的な証拠は何もなく、B社に対して内容虚偽の契約書を示して費用の折半を求めるというのはそれ自体が詐欺に該当する行為であって、原告がそのような計画に加担するはずがない」と、全面的に争っており、1MW当たり150万円の報酬とする合意が成立していたという主張をそもそもしていません。

 従って、原告から主張のない事実について裁判所は判断をしていないのです。

 事業規模が大きく、多くの事業者が関わるメガソーラー事業では、長期にわたる事業期間のなかで、「通謀虚偽表示」が起きてしまう恐れをはらんでいます。

 以前、判例解説をした東京地裁が2020年12月25日に公表した判決も「通謀虚偽表示」が論点となったトラブルケースでした(関連記事:メガソーラー建設巡り施主と施工者が紛争、発電事業の譲渡が無効に)。

 トラブルとなり、裁判にまで発展すると、関係当事者のレピテーションリスクも生じるところであり、昨今のコンプライアンスの高まりからみると、各関係当事者にて違法な「架空合意が存在しないか」というビジネスDD(デューデリジェンス)を弁護士も交えて実施する必要性を感じるところです。

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