太陽光発電事業者のための法律Q&A

パネル設置で人手が足りず、ブローカーを通じて職人を集めました。法的に問題がありますか?

<第56回>太陽光発電の工事に介在する「ブローカーリスク」

2019/10/09 05:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生

 太陽光発電の工事にあたっては、多くの職人を集めてこなければならず、下請け業者の中にブローカーが介在することもあります。

 ブローカーの多くは、建設業の許可を有しないことから、ケースによっては、建設業法違反が生じるケースも出てきます。今回は、「ブローカー」を通じて労働者を集めた場合の法的なリスクについて解説します。

「軽微な建設工事」以外、建設業の許可は必須

 建設業法上、建設業を営もうとする者は、建設業法施行令第1 条の2で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者以外は、建設業の許可を受けなければならないと規定されています(建設業法第3条第1項)。

 ここでいう、「軽微な建設工事」とは、(1)建築一式工事では、1500万円未満の工事または延べ床面積150m2未満の木造住宅工事、(2) 建築一式工事以外の工事では、500万円未満の工事とされています(建設業法施行令第1条の2)。

 そのため、建設工事を受注した業者が上記の「軽微な建設工事」のみを請け負うことを営業とする者ではない場合は、当該業者は建設業法3条1項が定める許可を受ける必要があり、その許可を受けていない場合には同項に違反することとなります。

 建設工事を受注した無許可業者から、当該工事を下請契約として受注する場合には、建設業法3条1項に違反して建設業を営む者と下請契約を締結したときに該当し、建設業法28条1項6号に違反するおそれがあります。

図1●メガソーラーの建設には、多くの労働力が必要になる
(出所:日経BP)(写真はイメージで本文の内容と直接関係しません)
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「CM方式」なら大丈夫か?

 ところで、事業主から建設工事を受注した無許可業者との間の契約が、工事請負契約ではなく、当該無許可業者がCMR(コンストラクション・マネージャー)として設計の検討や工事発注方式の検討、工程管理、コスト管理などの各種マネジメント業務を行うとするいわゆるCM(コンストラクション・マネジメント)方式による契約形態であると考えることで、当該業者は建設業法3条1項にいう「建設業を営もうとする者」に当たらないとすることができないでしょうか。

 しかし、一般に、このようないわゆるCM方式であっても、「施工については、発注者がCMRのアドバイスを踏まえ工事種別ごとに分離発注など…を行い、発注者が施工者…と別途「工事請負契約」を締結する」と理解されており(平成14年2月6日国土交通省CM方式活用ガイドラインⅡ1参照)、原則として、CMRが直接に工事を発注することは想定されていません。

 また、CM方式のうちには、発注者がCMRに対し、マネジメント業務に加えて施工に関するリスクを負わせる場合があり、このようなCM方式を「アットリスクCM」と呼びますが、この場合でも、「CMRが専門工事業者と直接に工事請負契約を締結する場合などは、マネジメント業務の担い手というCMRの本質的な性格を越えて、工事請負人的な性格を帯びるものと考えられ」、「CMRが一連の建設工事の完成を請け負う営業を行うのであれば、建設業の許可を有していることが必要である(建設業法第3条)」とされています(前掲国土交通省CM方式ガイドラインⅡ2参照)。

 以上によれば、無許可業者が工事を発注している以上は、当該業者をCMRとする一般的なCM方式による契約形態と考えることは難しいと考えられます。仮に「アットリスクCM」方式であると考えた場合だと、当該業者は建設業法3条1項の規制の対象となります。

 したがって、(アットリスク)CM方式による契約形態であると考えるか否かを問わず無許可業者は「建設業法3条1項の規定に違反して同項の許可を受けないで建設業を営む者」に該当するため、当該業者から建設工事を受注することは建設業法28条1項6号に違反することになり、同条3項以下に規定する指示処分や営業停止処分を受ける可能性があります。

図2●パネルの設置には、電設工事に慣れた多くの職人が必要になる
(出所:日経BP)(写真はイメージで本文の内容と直接関係しません)
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無許可業者に工事を発注したら…

 それでは、無許可業者に500万円以上の専門工事を発注した場合、どんな法廷に責任が生じるのでしょうか。

 まず建設業法第28条が責任について規定しています。

 建設業法第28条1項6号は、「建設業者が、第3条第1項の規定に違反して同項の許可を受けないで建設業を営む者と下請契約を締結したとき」に当該建設業者に対し、必要な指示をすることができる旨を定め、さらに、同条第3項により、1年以内の営業停止処分を課することができる旨も併せて定められています。

 それに加えて、その情状が特に重い場合には、建設業許可の取り消しも可能となっています(建設業法第29条第2項)。

図3●工期達成は、労働力の確保にもかかっているが・・・
(出所:日経BP)(写真はイメージで本文の内容と直接関係しません)
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国交省の「基準」でも、営業停止処分に

 国土交通省による「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」によれば、「建設業法第28条第1項各号の一に該当する不正行為等があった場合」には、「当該不正行為等が故意又は重過失によるときは原則として営業停止処分を、その他の事由によるときは原則として指示処分を行うこととする。なお、個々の監督処分を行うに当たっては、情状により、必要な加重又は減軽を行うことを妨げない」とされ、さらに、「建設業者が、情を知って、建設業法第3条第1項の規定に違反して同項の許可を受けないで建設業を営む者、営業停止処分を受けた者等と下請契約を締結したとき は、7日以上の営業停止処分を行うこととする」とされています。

 かかる基準によれば、故意又は重過失により、無許可業者に500万円以上の専門工事を発注した場合には、営業停止処分がなされるリスクが生じます。

 以上述べたとおり、無許可業者であるブローカーを介在させることは、ブローカーから見て元請業者も下請業者も建設業法違反を問われるリスクがありますので、注意が必要です。

 建設業許可取得の有無については、国土交通省による検索ページなどによる確認も容易であるため、上記リスクを避けるためには、下請業者の許可業種を確認し、コンプライアンスチェックをすることを習慣づけるべきでしょう。

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