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太陽光発電所の譲渡に際し、特約が「公序良俗」違反に(page 4)

<第78回>負担金の借り入れに関する特約が無効とされた判例の解説

2021/10/20 18:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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暴利行為に関する判例の傾向

 暴利行為の該当性判断に関しては、かつては「他人の窮迫・軽率・無経験に乗じて、いちじるしく過当な利益の獲得を目的とする法律行為は、無効とする」という準則が定式化されていました(有斐閣「民法講義Ⅰ総則(第3版)」山本敬三著275頁)。要するに、相手の知識不足や経験不足、困窮している状況につけ込んで、不当に過大な利益を得ようとする行為のこと指しているものとされ、暴利行為は経済的強者が弱者を一方的に搾取するものであるため、法律上はこのような行為を防止すべく無効(民法90条)という理解がなされてきました。暴利行為のリーディングケースとされる大審院・昭和9年5月1日でも、前半(「他人の窮迫・軽率・無経験に乗じて」)部分を主観的要件、後半(「いちじるしく過当な利益の獲得を目的とする法律行為」)部分を客観的要件として判断されています。

 もっとも、当時と現代では、暴利行為論の適用領域や機能に変化が見られるため、同判決の定式では十分ではなくなってきています。

 1980年代半ば頃から、下級審裁判例を中心に、消費者取引や投資取引における不当勧誘、既存の関係を利用して過大な利益を得る契約などが暴利行為論の新たな適用領域として浮上するなど、上記準則をより積極的かつ柔軟に活用しようとする動きがみられるようになりました(武田直大・民法百選Ⅱ第7版15「暴利行為」(有斐閣))。

 このような経緯を踏まえ、主観的要件については窮迫・軽率・無経験には直接該当しないような場合についても、畏怖・困惑、判断能力の低下、無知及び従属状態といった事情にまで拡張して法律行為が無効とされる判断が見られるようになってきています。また客観的要件についても、どの程度の利得があれば著しく過当な利益にあたるのか、明確な基準が存在するわけではありません。そこで主観的・客観的観点は、要件という位置づけから、両者を相関的に判断して行為の有効無効を判断するための考慮要素という理解になってきているのです(有斐閣「民法講義Ⅰ総則(第3版)」山本敬三著275頁参照)。例えば、客観的要素が強い場合には、主観的要素が弱くても暴利行為となりえ、その逆もあるということになります。このような理解から、定式的な判断ではなく、様々な事情を考慮要素として、暴利行為の該当性を判断できるようになってきています。

 本判決の判断では、譲渡人の行為が譲受人側の窮迫した状況や無経験・軽率に乗じたものとはいえないため少なからず伝統的理解における定式から離れたものであり、また拡張した主観的要素として挙げられる上記の事情も特段認められないことからすれば、客観的要素を中心に該当性が判断されたものといえ、あくまで両要素は相互補完の関係にあることを考えると、今般の理解を前提に暴利行為の該当性を判断したものといえます。

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