負担金の借入金を弁済できず
太陽光発電所の建設にあたっては、系統連系に必要な工事費負担金(系統連系負担金)の金額が非常に大きく、他方で、この系統連系負担金を納付できない場合には、太陽光発電所が稼働できないというリスクを抱えることになります。
そのため、太陽光発電所を譲渡する契約を締結した後、譲受人が系統連系負担金の負担すらできない場合には、直ちに、譲渡契約を解除して別事業者に再度、譲渡することを譲渡人としては検討することになります。
今回取り上げる裁判(東京地方裁判所・令和3年3月4日判決)の事案では、太陽光発電所の譲渡契約の際、譲受人は、譲渡人から、電力会社に対し支出すべき系統連系負担金2億509万8720円を借り入れました。
その際に、譲渡人は、返済期限を2017年6月30日と定め、「譲受人が借入金を返済期限までに返済しないときは、太陽光発電所の譲渡契約は直ちに解除され、譲受人は、太陽光発電用地に係る権利及び支払済みの費用を放棄する」という特約(以下「本件特約」)を交わしました。
その後、譲受人は、譲渡人に対し、系統連系負担金の借入れに対する全額の弁済は出来ませんでした。
譲渡人は、譲受人が系統連系負担金の借入れに係る借入金を返済できなかったため、太陽光発電所譲渡契約は、本件特約に基づき当然に解除され、かつ、譲受人は、同特約に基づく担保権の実行として、太陽光発電用地に対する権利及び支払済みの費用を放棄したと主張し、譲渡人は、2019年12月2日、別会社との間で本件各発電所の太陽光発電事業を譲渡する契約を締結しました。
本件裁判では、この「譲受人が借入金を返済期限までに返済しないときは、太陽光発電所譲渡契約は直ちに解除され、譲受人は、太陽光発電用地に係る権利及び支払済みの費用を放棄する」との本件特約が公序良俗に違反する無効な契約条項か、が争われました。