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太陽光発電の設置目的を隠して土地取得、売主が訴えて裁判に(page 2)

<第80回>虚偽の説明で締結された土地売買契約は「錯誤無効」に

2021/12/27 17:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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判決が認定した売買契約までの経緯

 売主らは、1946年以降、本件土地に居住し、分筆前には、牛の放牧地として使われていました。分筆前の土地は、JR小海線のf駅の徒歩圏内にあって、富士山を眺望でき、周辺には、別荘、移住者の自宅、市営住宅などが散在していました。

 b社は、2014年2月7日に設立されて、太陽光などによる発電およびその電力の販売を主な事業として行っていました。b社においては、買主と買主の息子Aが、代表社員及び業務執行社員を務めていて、他の従業員はおらず、息子Aが、太陽光発電事業に関する意思決定全般を行い、買主は、資金調達の意思決定に関与していました。

 b社は、2014年3月10日、山梨県北杜市a町○○に太陽光発電設備を設置することを前提として、太陽光発電の設備認定(ID)9件を取得したところ、その時点で、発電設備を設置する具体的な地番は未確定でした。

 Aは、分筆前の仲介業者Bを通じて、分筆前の土地の購入を売主に持ちかけていた2016年5月の時点で、北杜市に対し、分筆前土地の本件土地を含む部分に太陽光発電設備を設置する計画があるとの届出を行っています。

 Aは、2016年5月25日、本件土地の周辺土地を売買により取得し、既に取得済みの設備認定を使用して、東側の土地に太陽光発電設備を設置することを計画した上で、これらの土地の樹木を伐採しました。

 売主は、同年6月頃、東側の発電所向け土地を伐採していた業者から、b社が設備認定を取得しており、東側の土地について太陽光発電事業のために使用するという話を聞き、その後、北杜市役所の職員からも、b社が、本件土地において太陽光発電事業を行うことを前提として、設備認定を取得している旨の話を聞きました。

 売主は、2016年8月8日頃、仲介業者Bを介して、買主に対し、太陽光発電事業の目的で分筆前の土地を売ることはできないことを理由に、Aによる分筆前土地の買い付けの申し出を断りました。

 売主は、2017年7月頃、仲介業者Bから、分筆前の土地を住宅用として販売する上では分筆した方がよい旨の助言を受け、分筆前土地を居住用の土地として8筆に分筆することを前提とした販売を開始しました。

甲府地裁の判決は?

 第一審の甲府地方裁判所は、「買主はb社による太陽光発電事業の用地として使用する目的で本件土地を購入した」と認定しました。その理由は、以下の通りです。

 「買主及びAは、北杜市において太陽光発電事業に適した土地を探していたところ、Aは、d社がインターネット上に掲載されていた本件土地の販売に関する情報を見て、既に太陽光発電事業を計画していた東側発電所土地に隣接していて管理がしやすいことを理由に、b社が既に取得済みの設備認定を用いて太陽光発電事業を行うことを前提として、財務管理又は税務上の観点から、買主名義で本件土地を購入することを決めて、買主とその旨協議し、買主は、Aとの協議に基づいて、買主側の仲介業者Cに対し、本件土地の購入を持ち掛け、原告からの本件土地に至った。

 その上で、買主は、本件契約の代金決済直後の2019年6月、Cに対し、本件土地の東側の隣接土地の伐採を依頼しており、b社は、同年8月20日頃、本件土地に太陽光発電設備を設置する計画がある旨を本件土地周辺の不動産の所有者に対して告知している。

 このような経過に照らせば、買主は、b社による太陽光発電事業の用地として使用する目的で本件土地を購入したと認められる」

 一方、裁判で買主は、本件土地を購入した際には、b社による太陽光発電事業に用いる目的と併せて、別荘として使用する目的を有しており、後者の方が優越していた旨を供述しています。

 売買契約締結時においては、別荘による利用も検討していたのであって、嘘は言っていないというわけです。

 この点についての第一審の甲府地方裁判所の判断は以下の通りです。

 「Aは、本件土地購入の目的が、b社による太陽光発電事業の用地として使用する目的であったことを認めた上で、財務管理又は税務上の観点から、買主名義で本件土地を購入することとした旨の供述又は証言を行っている。

 これに加え、買主は、2018年4月19日、北杜市において不動産の仲介業を営むe社に対し、別荘利用目的の土地を購入したいとして土地の仲介を依頼し、周辺に別荘が立ち並ぶ土地の売買契約を締結したが、その後、b社は、同土地上に太陽光発電設備を設置したこと、さらには、本件契約の代金決済後、2カ月余りで、b社が北杜市に対する太陽光発電事業の開発許可を申請し、本件土地周辺の住民に太陽光発電事業の開始を告知していることを踏まえれば、買主は、b社による太陽光発電事業の用地として使用する目的で本件土地を購入したと認めるのが相当であって、買主の上記供述は、採用できない」

甲府地裁の外観
甲府地裁の外観
(出所:甲府地裁ホームページ)
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