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太陽光発電の設置目的を隠して土地取得、売主が訴えて裁判に(page 5)

<第80回>虚偽の説明で締結された土地売買契約は「錯誤無効」に

2021/12/27 17:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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「錯誤無効」なら移転登記の抹消に

 売買契約が錯誤無効になると、売買契約は最初に遡って無かったことになりますから、買主は、本件土地上の工作物を撤去して、土地を明け渡すと共に、所有権移転登記を抹消しなければならず、甲府地裁、東京高裁共に、この判決文を維持しています。

 買主にとっては、大ダメージの判決であると言うべきでしょう。

改正民法で増加する可能性も

 改正民法95条1項2号は、動機の錯誤について、「法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤」について、同条2項にて「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていた」場合に、意思表示を取り消すことが出来る旨の規定がなされました。

 無効より取消しのほうが、追認(民法122条)可能性や取消権の行使期間制限(民法126条)の制限を受ける分、取引の相手方保護につながりますが、その結果、錯誤取消を主張できる場合を過度に限定する必要もなくなることから、改正民法施行後は動機の錯誤による意思表示の効力が争われるケースが増加する可能性があると言われています。

 内田貴民法Ⅰ(総則・物権総論)72ページにて「錯誤の要件論で重視すべきなのは、相手方の単なる知・不知(悪意・善意)ではなく、表意者の錯誤を利用することが許されるかどうかの判断ではないかと思われる」と記述されており、正義に即した適正な取引がなされているかどうかという視点から不本意な意思表示をした本人を保護するか、取引の安全を重視するか、判断することとなろうかと思います。

 メガソーラーの場合、売買契約の締結よりも設備認定の取得が先行する事例が多く、景観を理由にメガソーラーに反対する住民がいても、計画を止められないという悩ましい課題がありますが、他方で、使用目的を秘して売買契約を締結すると、その売買契約が無効(改正民法後は取消し)となり、大きなダメージを受けることになるので、注意して頂きたいと思います。

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