「再エネビジネス」最前線

「FIT終了」に現実味、その時、太陽光ビジネスに求められるもの

<第18回>「市場ベース」「買取義務の消失」で事業形態が激変

2019/06/28 05:00
大串卓矢=スマートエナジー社長

 経済産業省が、固定価格買取制度(FIT)の抜本的な見直しに向け、議論を本格化させている。同制度を規定する法律には「2021年3月31日までに見直しのあり方を示す」と明記されており、経産省では、法的な措置を伴う場合、2020年度には成立させる方針だ。

 こうしたなか、一部の報道機関が、「抜本見直し」によって、FITを終了させ、新たな仕組みで再生可能エネルギーを推進する案を検討中と報じた。

 今回は、FITが終了した後のメガソーラー(大規模太陽光発電所)ビジネスの運営について予測する。

「FIT終了」のスケジュール

 すでにFITの買取期間が終了した後の諸問題(「卒FIT」問題)については、いかに再投資を促して持続的な発電事業を実現するか、という問題が意識され始めたが、とうとう「FIT制度自体の終了」、という流れが現実味を帯びてきた。

 今後、見込まれるスケジュールとして、2020年度には、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(FIT法・再エネ特措法)の改正、または代替となる法律を成立させる可能性もある。翌2021年度には新制度の運用、新制度への移行期間の取り扱いについて決定しなければならないからだ。

 「第5次エネルギー基本計画」で掲げた普及目標の達成が見込まれる太陽光発電と風力発電については、2021年度にはFITから外れ、他の方式で普及を後押しすることになりそうだ。つまり、多くのメガソーラーデベロッパーにとって、来年度の仕込みがFITを想定した最後の案件になりそうだ(図1)。

図1●FITの終了のスケジュール予想
(出所:筆者作成)
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売電価格は「市場ベース」に

 FITの下では、太陽光の場合、毎年、買取価格が低下してきたものの、適用される価格は事前に確定しており、20年の買取期間中は固定だった。従って、発電事業者は、かなり高い精度で売り上げを予測できる、という大きなメリットがあった。

 しかし、今後、FITが終了すれば、再エネの売買単価は固定ではなくなりそうだ。というのは、これまでの有識者会議での議論から、新たな仕組みは、市場をベースにしたものになるからだ。そうなると、原則的には市場価格に連動して買取価格が決定されるようになる。市場価格は電力卸売市場(JPEX)で公表される値段である。

 こうした仕組みは、すでに海外で前例がある。市場価格をベースにしつつ、最低価格を決めておき、市場がそれより下がった場合、補てんする方法や、市場価格に一定のプレミアムを付加する方法(フィードインプレミアム=FIPと呼ばれる)などがある。

 例えば、事前に決めた指定価格から実際の取引金額を差し引き、それがマイナスの場合、プレミアムで補てんされる一方、プラスの場合には、その分が収益となるような仕組みも有力な案となっている。こうした制度だと、単に最低価格を決めるより、発電事業者にとって自由度が高い。例えば、市場の価格を見ながら、高いときに売り、安いときには蓄電するなどの工夫で、より高い利益を狙うことが可能になる。

 つまり、現在のFITのように「ただ発電して売ればよい」という単純な売電ビジネスから、事業リスクが高まりつつも、工夫次第で収益が伸ばせるビジネスへと変貌することを意味する。

 図2で説明すると、市場取引金額が指定価格より低い部分(A)と市場取引金額が指定価格より高い部分(B)に、それぞれの取引ボリュームを乗じた結果を比較し、指定価格より安く取引されている場合(A>B)には、プレミアムで補てんする制度である。

 プレミアムの金額は、国全体で決まるので、個々の発電事業者に操作はできない。しかし、個々の発電事業者は、Aの時間帯に売るか、Bの時間帯に売るかの裁量を持つことになる。もちろん、再エネ発電事業者にとっては、Bの時間帯に多く売却できれば、多くの収益を計上できるようになる(図2)。

図2●「プレミアム」のイメージ
(出所:筆者作成)
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求められる「営業努力」

 FIT法では、電力会社に再エネ電気の買い取りを義務付けたため、発電事業者は電気を作っても、「誰に売るか」について考える必要がなかった。しかし、FITが終了し、電力会社に買取義務が課されなくなった世界では、「誰にいくらで売るか」、つまり「売電契約をどこと、どんな内容で結ぶか」が、非常に重要になる。

 電力会社の立場からみると、買取義務がなくなることで、「太陽光発電の電気はもう不要だ」と判断すれば、これ以上の購入を拒めるようになる。ただ、この点に関しては、新制度への移行の中で、発電事業者を保護するため、激変緩和措置として電力会社による購入義務を残す可能性もあるが、基本的には、電気の売りサイド、買いサイドは契約自由の原則に従うことになる。

 電力系統の宿命であるが、平時において、供給力は常に過剰である。停電を防ぐため、最大需要に合わせて発電容量を用意する必要があるからだ。そうした需給構造のなかでは、新たな電源は、既存の電源より安いことが求められる。そうなると、新参者である再エネは何らかの保護がないと増えにくい。従って、いきなり契約自由の原則の世界に、再エネ電源を放り出すと、一気に死に絶えてしまう恐れがあった。

 しかし、FITによって拡大し、力をつけた大規模な太陽光については、市場をベースにした契約自由の世界で成長していくことを求められる段階になってきた。何らかの形でプレミアムによる補助を残しつつも、自由化された電力市場のなかに取り込まれていくことは確実だろう。そうなると、自由市場では当たり前である「より良い条件の売り先を確保するための営業努力」が、再エネ発電事業者にも必要になる。

電力販売「代行会社」が台頭

 電力市場で電気を販売することが原則となったドイツでは、取引市場への売却を代行する会社が重要な役割を担うようになった。市場取引に参加するには、市場の会員になる必要があるし、入札手続きの手間を考えれば、小規模な発電事業者は代行会社に売電を頼むのが現実的な対応となる。

 ここで優良な代行会社は、電気に付加価値を付けることができる。例えば、出力変動する太陽光・風力発電を使っても、安定して電気を供給するために様々な工夫を行う。風力と太陽光、バイオマス発電の組み合わせを最適化したり、蓄電池やデマンドレスポンス(需要応答)を活用したりすることで、需要ピークへの調整力を保有する。

 電気を供給する側の工夫だけではない。電気供給カーブにあった電力需要ポートフォリオを作ることで、デマンドサイド(需要側)を積極的にマネジメントするという発想もある。そのほか、カーボンフリープレミアムを認識し、再エネの大量導入を目指す「RE100」関連企業へ販売したりすることも考えられるだろう。

 それらを実現するのは、個別の電源と電力需要のリアルタイム情報の収集、直前や2日前予測を正確にするためのノウハウが重要になる。これらの蓄積や実績があるから、再エネ電源が集まり、再エネ電源があるから供給先の開拓が容易になる、という理想的な循環を生み出せれば、次の電力業界で素晴らしい代行会社となるに違いない。

 このように、「FIT後の再エネの世界」は、単に買取価格の決め方が変わるだけではない。買取義務がなくなる一方、時間帯や電力品質、再エネ種別の違いなどによる価格の変動など、取引の態様が大きく変わることが予想される(図3)。

図3●FIT終了後の再エネビジネスのイメージ
(出所:筆者作成)
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